【花粉症とメンタル】関係性は?免疫力アップ法10選を紹介|臨床心理士解説

ここ数年、毎年のように「今年の花粉は多い」という情報を耳にするでしょう。日本の花粉症ピークは春と秋であり、花粉症になる人は年々急増しています。花粉症の原因は遺伝要因と食生活といわれていますが、実はストレスやメンタルとも関係がしてるのです。今回は、少しでも花粉症のつらさを緩和させたり、これから花粉症になる可能性を防ぐための免疫力アップ法を臨床心理士が紹介します。

監修者
いけや さき
臨床心理士
心理学系大学院修士課程修了後、精神科病院や心療内科クリニック、療育施設などに従事。 「よりカウンセリングとセルフケアを身近に」という思いから、2020年にフリーの臨床心理士としてオンラインプラットフォームや個人サイトを通してオンラインカウンセリングを開始。主に20~40代女性のカウンセリングを担当。現在は女性が生きやすい世の中を目指し、ライターとしても情報提供を行っている。

資格
臨床心理士、公認心理師、マインドフルネススペシャリスト

花粉症とメンタルの関係とは?

花粉症とメンタル、結びつかないと感じる人もいるかもしれませんが、花粉症はストレスによって悪化してしまうこともあるのです。

まずは、花粉症とメンタル不調の関係を理解するために「ストレスと免疫力」「アレルギーとうつ病」の関係性を解説します。

ストレスと免疫力の関係

免疫力は、病気から身を守るために必要なものです。外から体内に侵入しようとするウイルスや殺菌を防ぎ、身体の健康を保つための役割を果たします。

しかし、心理的なストレスがあると自律神経が乱れ、免疫力を維持するための機能が正常に働かなくなってしまうのです。

免疫には、ウイルスなどの侵入を防ぐ役割を果たす「粘膜免疫」と、粘膜免疫が侵入したときに全身にいきわたらせないようにする「全身免疫」があります。ストレスがあると2つの免疫機能が正常に働かなくなり、バランスが崩れて心も身体も不調になりやすくなります。

アレルギーとうつ病の関係

アレルギー症状とメンタルには大きな関連があるといわれています。

アレルギー疾患は、主に「気管支喘息(アレルギー性鼻炎・花粉症含む)」と「アトピー性皮膚炎」がありますが、どちらも心理的ストレスの関与は指摘されてきました。


花粉症の症状がひどくなるとうつ病を引き起こす人も、うつ病で気分が下がる影響によって花粉症を含むアレルギー症状が出現する人もいるようです。

また、アレルギーに関する研究のなかには、「ストレスが気管支喘息(花粉症含む)を増悪させる」という報告もあります。うつ病や不安障害との合併率が高いことも明らかとなりました。花粉症は海外でも増加傾向ですが、日本の有病率は年々増えています。今発症していない人も、花粉症対策だけでなく、メンタル・ストレス対策も行うことで両方の予防になるでしょう。

季節性アレルギーの症状

花粉症はアレルギー性鼻炎に該当すると解説しましたが、「季節性アレルギー」ともいわれています。

季節性アレルギーは、強い症状が出現していない人からすると「体調不良?」「風邪?」「疲れてるのかな?」と感じるようです。気づかないうちに症状が悪化してしまわないよう、自分の症状を確認する必要があります。

以下に、季節性アレルギー(花粉症)の症状をまとめたので、自分に当てはまるかチェックしてみましょう。

・サラサラした透明な鼻水が出る
・症状が悪化すると鼻水が黄色っぽくなる
・鼻がつまる
・いつの間にか副鼻腔炎になっている
・くしゃみがよく出現する
・目がかゆくなる
・鼻や喉の奥がかゆい
・涙目になる

ただし、すべての症状が出現するわけではなく、春と秋など季節で変化することもあります。

花粉症と似ている寒暖差アレルギー

花粉症と似ている症状を持つ病気に「寒暖差アレルギー」があります。

季節の変わり目で寒暖差・温度差の激しい時期に、次のような症状が出現したことはありませんか?

・鼻がむずむずする
・くしゃみが一時的に出る
・身体症状とだるさが伴うことがある
・でも目や肌のかゆみはない
・水っぽいさらさらした鼻水が出る

かゆみがなく、くしゃみや鼻水が一時的である場合は「寒暖差アレルギー」の可能性があります。

寒暖差アレルギーの原因はまだ解明されていませんが、温度差が7度以上の場合に発症しやすい病気ということは知っておきましょう。医学的には「血管運動性鼻炎」といわれています。

花粉症の原因にもなる?免疫力を低下させる習慣

 

花粉症に「なりやすい人」が、やってしまいがちな生活習慣を紹介します。

花粉症は、遺伝要因が主な原因とされていますが、NG習慣をしているとさらに「なりやすい人」になってしまうのです。

食生活も花粉症の原因となりやすいですが、食事についてはこのあと紹介する「免疫力アップ法10選」で詳しく解説します。

ストレスのため込み

メンタルとアレルギーには関連があると解説しました。

ストレスをため込みがちな人や、ストレスに気づきにくい人は免疫力が下がりやすく、アレルギー疾患になる確率も高い傾向にあります。

自律神経の乱れや免疫のバランスが崩れると、花粉にも過剰に反応してしまうことがあるのです。「自分のストレスに気づく」「ストレス発散法を身につける」習慣を意識しましょう。

寝不足

睡眠不足だと、免疫やホルモンバランスに悪影響を及ぼします。

特に秋花粉になりやすい人は、夏場に夜更かししていませんか?夏はイベントごとが多く、子どもであれば夏休みもありますよね。睡眠不足や睡眠の質の低下も、花粉症の原因となることがあるのです。

運動不足

運動は、基礎代謝を高める効果が期待できます。基礎代謝が上がることで、血流が促進し、乾燥を防いだり、余分な水分を外に排出してくれるのです。

花粉症は、乾燥することによって悪化することもあります。また、東洋医学では、体内に余分な水分がたまっていることで、身体の必要なところに水分が行き渡らず花粉症になるといわれているので、少しずつ運動習慣を身につけましょう。

飲酒や喫煙

飲酒や喫煙自体は、もともと身体やメンタルに悪影響を及ぼすといわれています。

たばこの煙が鼻づまりを悪化させ、花粉症を発症するという報告が上がっているのです。また、アルコールは血管拡張につながり、充血や鼻づまりを引き起こす原因となります。

「ストレス発散でお酒やたばこを…」という人のなかで、なかなかやめられない場合は、禁煙や禁酒の専門外来に受診されることをおすすめします。

外出着のまま過ごす

特に花粉の多い時期は、服についた花粉を落としてから室内に入り、すぐに着替えることをおすすめします。

代わりに皮膚を強くする習慣を取り入れましょう。東洋医学では、秋の乾布摩擦や適度な薄着習慣で、皮膚を鍛えることが推奨されています。少し肌寒くなったからといって厚着をしてしまうと、身体が外からの刺激に弱くなりやすくなってしまいます。

メンタル不調と花粉症を防ぐ!免疫力アップ法10選

 免疫力アップ法を「食事」「運動」「マインド」に分けて解説します。

食事編

遺伝要因の次に花粉症の原因となりやすいのが「食生活」です。

■バランスの整った食事を意識する

「忙しくて自炊なんてできない」「バランスを考えるのが難しい」

自炊や細かくバランスを考えるのが難しくても、次のことは少しずつ気をつけてみましょう。

・高カロリー、高タンパク、高脂質を避ける
・ジャンクフードを控える
・アルコールと香辛料を控える
・迷ったら和食を選ぶ
・発酵食品を積極的に食べる
・春は酸味を控えて、甘いお野菜をたっぷり
・秋は酸味のある果物や甘味のある野菜をたっぷり

できることからはじめていきましょう!

■よく噛んでゆっくり食べる

よく噛むことは、免疫力アップや血流促進につながります。

太りにくくなったり、口臭予防にもなるともいわれているので、花粉症ではない人にもおすすめです。

抗体反応の抑制など、アレルギー疾患予防にも効果が期待できるという報告も上がっているので、しっかりよく噛んで食べましょう。

■腸内環境を整える

腸内環境を整えることで、花粉症やメンタル不調の予防効果が期待できます。

腸は免疫機能の半数以上が集まっている場所ので、腸内環境を整えることは免疫機能を改善することにもなるのです。ヨーグルトなどの発酵食品、きのこ類、ゴボウ、わかめや昆布、サンマ、サバなどを積極的に食事に取り入れましょう。

■季節のものを食べる

東洋医学でも栄養学でも、季節のものを食べることはメンタルと身体によいといわれています。

今はスーパーで年中見かける野菜や果物、魚などが増えましたが、季節のものは通年で回っているものよりも栄養がたっぷり含まれているのです。

その季節の旬の食材を食べて、健康体を手に入れましょう。

運動編

運動は、花粉症だけでなくメンタル不調を防ぎやすくなります。

ここでは、特におすすめの運動法を3つ紹介します。

■軽い運動を10~20分やってみる

健康的な心と身体のためであれば「1日20分程度」の運動でも十分。もう少し体力をつけたい人は、健康診断のチェックリストにもよくある「週3日、1日30分以上」を意識してみましょう。

東洋医学の観点では、秋冬は激しい運動は推奨されていません。厚生労働省の「こころと体のセルフケア」情報でも軽い運動を目標にすることが勧められています。

まずは1日10~20分を目安に、散歩やウォーキング、軽いランニング、ダンスなどをやってみましょう。

■ヨガで深呼吸とゆったりとした動きを取り入れる

ヨガは、深呼吸とじっくりゆっくりした動きで自律神経を整える効果が期待されています。

花粉症症状のうち「鼻づまり」は、自律神経の乱れによって生じやすいのですが、ヨガで自律神経を整えることで鼻づまりやメンタル不調の改善・予防が期待できるでしょう。

■生活のなかに動きを取り入れる

外で運動する時間を取れない人や、運動が苦手な人は生活の中に動きを取り入れてみましょう。

たとえば、洗い物をするときに姿勢を意識してお腹に力を入れたり、お掃除ロボットではなく自分で床を拭いたり、窓掃除で全身運動をしたりするのがおすすめです。

また、一つの作業(家事)に集中することは、マインドフルネスの観点からメンタルにいいとされていています。

運動が苦手な人や時間を作れない人は、日々の暮らしのなかに家事という運動を取り入れてみてください。

生活・マインド編

最後にメンタル不調や花粉症悪化を防ぐためのマインド・生活習慣を紹介します。

■自分に合う十分な睡眠を知る

睡眠不足は花粉症やメンタル不調の原因となりやすいと解説しました。

しかし、「全員このくらいの時間寝ればいい」という明確な決まりはありません。まずは自分に合う睡眠時間を知ることが大切です。

米国の調査では7時間睡眠の人の死亡率が最も低いといわれていますが、年齢や体質によって理想の睡眠時間は異なります。また、日照時間と睡眠の関連は深く、秋冬の睡眠時間は長くなりやすいのです。

「朝活がいい」という情報もありますが、生まれつきや遺伝子の影響で朝活が苦手な人もいます。まずはアプリや遺伝子検査などで自分のことを知っていきましょう。

■「笑う」「泣く」を我慢しない

メンタル不調になりやすい人は、泣くことを我慢していたり、笑っている習慣が少ないといわれています。

泣いたり笑ったりしたあとに、スッキリした経験はありませんか?

笑うことも泣くことも、我慢するとストレスを悪化させる原因となります。

おすすめは、創作物の鑑賞です。映画や小説、アニメ、ドラマ、漫画などを定期的に見て「笑う」「泣く」という感情表出を思いっきりしてみましょう。うつ病になると、以前は楽しめていた娯楽が楽しめなくなるという症状が出現する場合もあります。

最近観ていないなと思ったら、まずは見てみる。何を観ても楽しめなかったら、病院へ一度受診してみてください。

■6~8割でOKの精神で生きよう

メンタル不調になりやすい人や、花粉症になりやすい人の共通点に「完璧主義」があります。

この話を聞いて「自分はちゃんとできてないから完璧主義じゃない」「さぼっちゃうから違う」と思った人もおそらく完璧主義でしょう。

完璧主義とは「完璧に行う人」ではなく、「必要以上に高い目標・理想を持っていること」です。100点満点やそれ以上を目指すのをやめて、「80点取れればOK、最初は50~60点くらいで十分」と考えてみませんか?

早期対策&治療で、春秋を過ごしやすい時期にしよう

花粉症とメンタル不調には大きな関連があり、予防や悪化を防ぐ方法には共通点がたくさんあります。

今回紹介した方法を実践することで、どちらの病気に対しても効果が期待できるでしょう。

花粉症もメンタル疾患も、悪化してからでは治るのに時間がかかります。対策と早期発見、早期治療で今より過ごしやすい生活を送りませんか?

参考
大矢幸弘「アレルギー疾患の心身医学」(2018).心身医学.58巻.p376-383
齋藤紀先「心理ストレスが与えるアレルギー疾患への影響ー気管支喘息を中心にー」(2019).心身医学.59巻.p718-722
「花粉症環境保健マニュアル2022」2022年3月改訂版|環境省
アトピー性皮膚炎とうつ|一般社団法人日本うつ病センター
スギ花粉症もアレルギー疾患|舌の下(したのした)で行う鳥居薬品の舌下免疫療法専門サイト
季節性アレルギー|MSDマニュアル家庭版

心理カウンセラー(臨床心理士・公認心理師)
医療・福祉施設勤務を経て、フリーのカウンセラー・ライターとして活動中。

“心と身体はつながっている”という考えのもと、女性たちが穏やかで自分らしいライフスタイルを手に入れるためのカウンセリングや情報提供しています。

わたし自身も外側と内側の両方の健康を意識し、運動を意識するほか、最近では漢方や薬膳、食生活に関する分野を勉強中です♪

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