女性はなぜ低気圧に弱いの?~梅雨や台風に備えたセルフケア~

季節の変わり目や梅雨の時期は、気圧や気温、湿度の影響で自律神経やホルモンバランスが乱れやすくなります。特に女性は女性ホルモンの影響も大きく、男性よりも低気圧に弱い人が多い。今回は女性がなぜ低気圧に弱いのか、原因と対策を漢方医学やフェムテックの知識も持つ臨床心理士が解説します。

監修者
いけや さき
臨床心理士
心理学系大学院修士課程修了後、精神科病院や心療内科クリニック、療育施設などに従事。 「よりカウンセリングとセルフケアを身近に」という思いから、2020年にフリーの臨床心理士としてオンラインプラットフォームや個人サイトを通してオンラインカウンセリングを開始。主に20~40代女性のカウンセリングを担当。現在は女性が生きやすい世の中を目指し、ライターとしても情報提供を行っている。

資格
臨床心理士、公認心理師、マインドフルネススペシャリスト

女性はなぜ低気圧に弱いの?

ウェザーニュースの「天気痛調査2020」によれば、女性の天気痛(気象病)もちは約8割といわれています。症状で最も多いのは頭痛。薬を飲む対策をしながら、なるべく生活に支障がでないようにしている女性が多いそうです。まずは、低気圧で起きやすい症状や原因、不調になりやすい女性の特徴、時期を解説します。

低気圧で女性に起きやすい症状

季節の変わり目や大雨、曇りの日、梅雨、ゲリラ豪雨、台風などで以下のような症状がある人は気象病の可能性があります。

・頭痛
・耳鳴り
・喘息
・めまい
・だるさ
・関節痛(腰痛や肩こり)
・むくみ
・冷え

女性は筋肉量が少なく、男性よりも三首を出すことや薄着になることも多いため、男性よりも気象病になりやすいようです。

また、上記の症状のほかに秋または冬頃になるとイライラしたり、憂鬱になったり、ストレスを感じやすくなる人は季節性感情障害(SAD)の可能性も考えられます。SADに心当たりがありそうな人は、心療内科を一度受診してみてくださいね。

低気圧で不調になりやすい原因

不調の多くは、耳にある「内耳(ないじ)」が原因とされています。

内耳は、鼓膜の奥にある部分で、内耳が気圧の変化を感知して神経が過剰に興奮し、自律神経のバランスが乱れます。

しかし、自律神経のバランスの乱れ=内耳だけが原因ではないので、不調になる前の時期の過ごし方やストレスの影響も考えましょう。

また東洋医学の観点では、「湿気」が気象病の原因として考えられています。気象病が起きやすいのは、過剰な湿気の時期。その時期は「湿邪(しつじゃ)」といって全身の水の巡りが悪くなる状態になりやすいのです。水の巡りが悪いと、頭痛やめまい、むくみ、倦怠感などの症状があらわれます。

このことからは低気圧で不調になりやすい原因は、内耳と生活習慣、ストレス、湿気の可能性が高いと考えられるでしょう。

低気圧に弱い女性の特徴

低気圧に弱くなりやすい女性の特徴をまとめました。

・乗り物酔いしやすい
・慢性的な関節痛がある
・無意識に食いしばり、歯ぎしりの癖がある
・軽い運動をする機会が少ない
・ストレスをため込みやすい
・頭痛がよくある
・悪天候の日は、やる気がなくなりやすい
・悪天候の日に、不調になりやすい

すべてに当てはまるわけではないですが、いくつか心当たりのある人は低気圧による不調の対策を取っておきましょうね。

低気圧が原因で不調になりやすい時期

低気圧といっても、特にどんな時に気をつければよいのでしょうか。

低気圧は年間100個現れるそうです。特に気をつけるべきは、「季節の変わり目」「梅雨前線」「ゲリラ豪雨」「秋雨前線」「台風」ですが、自分がどの時期に不調になりやすいか知っておくこともセルフケアのために重要となります。

梅雨や台風に備えた低気圧女性のセルフケア5選

これからの時期に備えた低気圧不調を防ぐセルフケアを5つ紹介します。

  1. 腸活で身体のバランスを整える
  2. 耳のストレッチで血行促進
  3. 天気と体調に合わせたプランづくり
  4. 自責や否定ではなく、労わる心で
  5. 体調に合わせた運動

それでは詳しく解説していきます。

セルフケア①腸活で身体のバランスを整える

特に頭痛よりも、身体の重だるさを感じやすい人や気分の落ち込みがある人は「腸活」がおすすめ。

低気圧不調の原因の1つである自律神経の乱れは、腸をケアすることで改善が期待できます。

腸は「第二の脳」。私たちのストレスは腸の不調と密接につながっているのです。

自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類がありますが、交感神経が優位だと腸の働きが停滞します。

交感神経が優位になると消化・吸収・排泄が上手くいかなくなって、不調になりやすい原因たちが身体のなかにたまってしまうのです。

腸活で対策!おすすめセルフケア
・朝起きたら水(常温か白湯がベスト)で優しく刺激
・朝食をしっかり食べて、夕食は野菜など軽めに
・便意を感じなくても朝はお手洗いへ行こう
・夕方以降に軽いウォーキングやヨガ
・食物繊維と乳酸菌を積極的に食べよう

セルフケア②耳のストレッチで血行促進

先述の通り、低気圧時の不調の多くは「内耳」が原因といわれています。

内耳には気圧のセンサーがあり、そのセンサーが気圧の低下を感じとることで不調になっていると考えられるからです。

センサーから脳に伝わった結果、自律神経が乱れ、めまいや肩こり、重だるさなどの不調が引き起こされます。

気圧で不調を感じる前から、セルフケアの一環として内耳マッサージに取り組んでみましょう!温かいタオルで耳を温めるだけでもリラックス効果は得られますが、そこにマッサージを加えるとより効果的です。

耳のマッサージでセルフケア!
1.両耳を軽くつまんで、上下や横に引っ張ります
2.耳を軽く横に引っ張って、前から後ろにゆっくり回しましょう
3.耳をたたむようにキープします
4.手のひらで両耳を多い、前から後ろにゆっくり回します
参考:日本医師会

1~3は5秒くらいかけて行いましょう。

4は5回くらいゆっくり回すのがおすすめ。

これらの動作は、血行がよくなるので気象病ではなくても、リフレッシュとしても有効ですよ。

セルフケア③天気と体調に合わせたプランづくり

低気圧や湿度の変化の影響で、体調をコントロールできなくなることはあります。

しかし天気を変えることはできないので、天気や体調に合わせた生活スタイルを取り入れてみましょう。

たとえば、曇りや雨の日は仕事のタスクを最低限にして、休憩を小まめに入れながら温かい飲み物を積極的に飲むのはどうでしょうか。

ほかにも電車通勤の人なら早めに出勤して、近くのカフェでモーニングを食べるなど、気分転換を積極的に取り入れるのも有効です。

晴れの日と同じように無理やり頑張るのではなく、自分を休ませたり、落ち着かせたり、穏やかに過ごす日に切り替えるのもセルフケアの1つ。残業せずに早めに帰って、ゆっくりお風呂に浸かるのもいいですね。

「梅雨や台風の時期は毎日ゆっくりするの?」と思うかもしれませんが、梅雨の時期や季節の変わり目など、中期的に不調になりやすい期間は少しセーブする日やリラックス、リフレッシュすることを意識するのがおすすめです。

セルフケア④自責や否定ではなく、労わる心で

低気圧の影響を受けやすい人は、ネガティブ思考であったり、少しマイナスに物事を捉えやすくなります。

雨の日が憂鬱に感じやすい人も多いでしょう。

だからこそ、不調になりやすい時期にいつもと同じを自分に求めすぎず、「気圧の変化がある時期なのにがんばってるな~」と労わってあげてください。

できてないことに目を向けるのではなく、がんばっている部分や少しでもやれたことを認めていきましょう。

考え方がネガティブになりやすい人には、認知行動療法のコラム法がおすすめです。

自信がなくなりやすい人は、ポジティブ心理学から誕生したスリーグッドシングスも有効ですよ。

コラム法やスリーグッドシングスだけでなく、ちょっとご褒美にデザートを買ったり、ゆっくり過ごすのも自分を否定せず労わる方法。自分の心に従って、自分に優しく過ごしてあげることで、また元気になるためのエネルギーを蓄えましょう。

セルフケア⑤体調に合わせた運動

不調にならないためにも、運動不足は解消したいところ。

運動が苦手な人や時間があまり取れない人におすすめなのは、以下の6つです。

①ヨガ、ストレッチ
②朝散歩、ウォーキング
③軽いランニング
④ダンス
⑤サイクリング
⑥ピラティス

夜しか時間がない人やリラックスや身体を緩めたい人は、ヨガやストレッチがおすすめ。寝る前に行うことで、睡眠の質も上がりますよ。

②~⑥はリフレッシュ効果が期待できる運動!ダンスは本格的ではなくても、好きなアイドルのダンスを踊ったり、リズムを取るだけでもすっきりします。

また、朝にラジオ体操もおすすめです。ラジオ体操は、全身の動きやひねり、屈伸などさまざまな個所をリズムに合わせて動かせます。また、ラジオ体操第一だけなら3分で終わるので、忙しい朝にもピッタリの運動ですよ。

女性の低気圧不調対策は月経周期も要チェック

多くの女性に毎月やってくる生理。

排卵日前後から女性の体には変化があり、体温の上昇、いわゆる高温期という時期に入ります。

高温期の女性は交感神経が優位になるため、イライラしたり、気分の波が激しくなったり、いつもは気にならないことが気になったりするのです。

そんな生理前の不調な時期に、低気圧が来たらどうなるでしょうか…。

低気圧の時期も、生理前と同様に交感神経が優位になりやすいといわれています。つまり、交感神経優位がダブルでやってくるのです。

毎月の生理で不調にならない人も、このダブルの時期は不調になることもあります。

たとえば、頭痛や関節痛などの身体不調はダブルの時期に起きやすいです。少々面倒に思うかもしれませんが、自分の生理周期と低気圧の時期を理解しておくことで不調の対策がしやすくなりますよ。

不調のちょっとした変化を知るのも大事

みなさんは生活に少々支障が出るレベルの不調になってから、自分が頑張りすぎていたことや低気圧だったことに気づいていませんか?

それからでも対策はできますが、できればもっと早めに手を打ちたいですよね。

そこでおすすめなのが“記録”です。

PMS対策の記事でも紹介しましたが、私たちが心身のちょっとした変化を知るためには頭の中だけで記憶するのは難しいでしょう。

だからこそ、ノートや手帳、アプリなどを使って日々の自分の記録をとっていくことは低気圧不調の対策に有効。

細かく記録することが面倒に感じたり、なかなか時間をさけないと思う人は“数字” “マーク” “シール”などがおすすめです。

認知行動療法の観点では、自分の状態を数値化して把握することがあります。

絶好調な日を10だとしたら、今日はどのくらいの数値か…みたいな感じです。

数値化が推奨されていますが、結果的に自己理解につながれば問題ないので5つくらいの気分のマーク(例:★♡〇△■)を決めて、今日はどの気分のマークかを記録するのもいいでしょう。マークではなくシールなら記録を読み返したときにカラフルでかわいいかもしれません。

よくカウンセリングで前回から当日までの調子を聞くと「あまりよくなかったです」「特に変わりないです」「普通でした」という方がいますが、よく伺うと同じ「特に変わりない」にもちょっとした変化があります。

記録は不調の把握だけでなく、自分がどんな日なら気分や調子がいいのかもわかるので、前向きな気持ちになりたい人にもおすすめの方法です。

もう少し具体的に記録したい人は、気分の記録と共に以下の内容を記録してみましょう!

・今日の出来事
・天気/気温
・睡眠(時間でも熟眠感でも可)
・よかったこと、嬉しかったこと
・つらかったこと、悲しかったこと

低気圧女性におすすめ本3選

最後に、低気圧で不調になりやすい女性におすすめの本を3冊紹介します。

低気圧女性におすすめ本①頭痛ーるが贈る しんどい低気圧とのつきあいかた

¥1,540税込
気圧予報で体調管理ができるアプリ“頭痛ーる”の書籍。
気圧による体調不良予防のために習慣が詳しく書かれています。頭痛ーるのアプリを使用中のユーザーだけでなく、気圧に関する情報が知りたい方にもおすすめの1冊です。

さまざまな症状別の対処法が書いてありますが、特に睡眠や頭痛に関する対策を深く学べます。

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低気圧女性におすすめ本②気象病ハンドブック: 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア

¥1,540 税込

内科・神経内科クリニックの院長を務める久手堅司さんの書籍。
この本を通して、5000名以上の気象病患者を診た専門医のカウンセリングを体験できることが特徴です。セルフケア情報を写真やイラストを用いてわかりやすく解説しています。気象病の人に限らず、自律神経が乱れやすい人にもおすすめです。

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低気圧女性におすすめ本③天気が悪いとカラダもココロも絶不調 低気圧女子の処方せん

¥1,540 税込
気象予報士と自律神経の名医がタッグを組んだ書籍。
自律神経の名医である小林弘幸さんは、この本以外にもさまざまな観点から自律神経について本を監修・出版されています。上の2冊との違いは、女性向けの本であることと女性であり気象予報士である筆者の小越久美さんが自分の体験も交えて書いているところです。
気象病に限らず、生理で不調になりやすい女性にもおすすめ。

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まとめ:女性の気象病対策は低気圧や自律神経を知ることからはじまる

雨や曇り、梅雨の時期、台風など…気圧の変化によって思うように心も身体も動かない女性のみなさん。

確かに天気を変えることはできませんが、予防・対策によって今よりも緩和したり、過ごしやすく整えることは可能です。

東洋医学の観点では、心と身体はつながっているとされています。
メンタルケアは身体にいい影響を及ぼし、身体のケアや対策は心にいい影響を及ぼすということ。

今回紹介した方法や本を参考にしながら、気象病対策をして充実した日々を過ごしましょう!

参考
小越久美(著),小林弘幸(監)『天気が悪いとカラダもココロも絶不調 低気圧女子の処方せん』セブン&アイ出版(2017)
久手堅司『気象病ハンドブック: 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』誠文堂新光社(2022)
【天気痛調査2020】天気痛持ちは全体の6割?天気痛女子は約8割にも - ウェザーニュース
健康ぷらざ 雨の日に体調が悪くなるー天気痛ー|日本医師会

心理カウンセラー(臨床心理士・公認心理師)
医療・福祉施設勤務を経て、フリーのカウンセラー・ライターとして活動中。

“心と身体はつながっている”という考えのもと、女性たちが穏やかで自分らしいライフスタイルを手に入れるためのカウンセリングや情報提供しています。

わたし自身も外側と内側の両方の健康を意識し、運動を意識するほか、最近では漢方や薬膳、食生活に関する分野を勉強中です♪

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