もくじ
臨床心理士
資格
臨床心理士、公認心理師、マインドフルネススペシャリスト
夫に愛されていないと感じる瞬間は?
私たちが誰かとの関係のなかで、「愛されていない…」「大切にしてもらえない…」と感じやすいのはどんなときでしょうか?
まずは代表的なシーンをいくつかご紹介します。
愛されていない①以前と夫・彼の態度が違うと感じたとき
よくあるのは、「結婚する前と変わった」「妊娠してから変わった」「前はこんな感じじゃなかった」というように、以前と態度が異なると感じたときです。
それは本当に悪い意味で変わった場合もあれば、付き合ったばかりのときと同じ態度を取ってほしいという気持ちによるものの場合もあります。
つき合ってから悪い意味で変わってしまう男性としては、横柄な態度を取る人もいれば、まるで彼女やパートナーを母親のように見てしまう人などがいますが、みなさんのパートナーはどうでしょうか?
該当する男性の心理としては、つき合ったり結婚したりすると安心感を得て、これまでのように頑張れなくなってしまうようです。
また、最初はがんばれていてもそれが続かない男性も多く、本能的に女性よりも仕事や付き合い(仕事やプライベートの仲間との関係性)を優先しがちな人も多くいます。
それは男性心理であって、女性側からしたら大切にされていない感覚になって当然ですよね。でも男性側からしたら、実はそんなつもりはないときもあるため、より一層すれ違いが生じやすくなるといわれています。
愛されていない②話を聞いてくれないとき
態度の変化と近いですが、コミュニケーション不足も女性の方が感じやすいとされています。
女性は男性以上にライフスタイルの変化が生じやすく、そして自身の身に起きていることを誰かと共有したい気持ちになりやすい傾向があります。
個人差もあるので全員ではないですが、彼・夫が話を聞いてくれない状況は、女性にとって「私に興味がない」「私を愛してない」と感じやすくなってしまうのでしょう。
特に聞いてほしいことがあるときほど、私たちは余裕がなかったり、疲れていたりすることが多いですよね。
そんなときに夫や彼が「ああ」「うん」「へえ」という反応で終わってしまったり、そもそも話すことを拒否されてしまっては、悲しさやイライラがたまって「愛されてないんだ」とネガティブに考えるのも無理ないと思います。
愛されていない③セックスレスになったとき
セックスレスも愛情を感じなくなる原因の1つです。
しかし、コミュニケーション不足や態度の変化と比べて誰かに気軽に相談できる内容ではないと感じる人も多くいます。
だからこそ、ため込んで不安になってしまって、「夫と別れた方(離婚した方)がいいかも」「浮気しているのかも」とあらゆる思考を巡らせやすくなる人も多くいるでしょう。
男女ともにセックスを愛情表現の1つと捉えていることは明らかです。
一方で、「セックスレス=愛されていない」かというと、そうとは限りません。
ジャパン・セックス・サーベイ2020の調査によると男性にとってセックスとは、快楽を目的とした行為でもあるからです。そのパーセンテージは女性よりも高く、愛情表現は別の場面で行ない、セックスの優先順位が下がる男性も一定数いることがわかります。
女性にとってセックスとは愛情表現とコミュニケーションの1つと考えている割合が圧倒的に多いため、セックスレスになると不安や焦りにつながり、愛情不足を感じてしまうのでしょうね。
それは女性心理としては当たり前のことなので、自分の価値観を否定せず、夫や彼氏の気持ちも知っていけるといいかもしれません。
※ただし愛情どころではない別問題もある
ここまでは一般的によくある愛されていないと感じる場面を紹介しました。
この項目では、コミュニケーションを増やしたり工夫をして解決していく段階とは違うパターンを紹介します。
嫌味や暴言が増えた
いくら疲れているからと言って、女性をはげ口にしている男性を客観的に見てどう感じますか?
嫌味や暴言、文句が増えてきたとき、一部の女性は「自分がダメだからだ」と捉えてしまいます。でもそういうときこそ、女性側は必要以上にがんばっていることが多いのです。もっと夫・彼に認めてもらえるようにならなきゃ…と思ってしまっていたら、そのときはカウンセラーなど心の専門家に胸の内を話しましょう。
ただし、男性がコミュニケーションの取り方の一環として嫌味や文句を言っている場合もあります。
それもいかがなものかと思いますが、女性側は自分が傷ついていることを伝え、2人なりのコミュニケーションの取り方を見つけていきたいと提案してうまくいく段階もああるでしょう。
浮気や不倫をしている
夫や彼など男性に限らず、女性で浮気・不倫をする人も「相手が満たしてくれない」「愛してくれないから」と、相手に責任転嫁することがあります。でも本当はそれはただの言い訳ですよね。
特に男性側は「遊びだった」「本気じゃなかった」ということもありますが、女性からしたらそんなことを言われても愛情は冷めてしまいます。もし自分が至らなかったからだと捉えてしまった人は、一度本当にそうかを自分に問いかけてみましょう。
関係修復の覚悟ができていない限りは、彼や夫に愛してもらうために自分がもっと愛そうと考えすぎず、離れるのも選択肢の1つですよ。
経済的・精神的DV
DVといえば、身体的暴力だと思っていませんか?
身体的暴力はDVですが、DV=身体的暴力ではありません。DV行為には以下の種類があります。
殴る、蹴る、物を投げる、首を絞める、髪を引っ張るなど
・精神的暴力
大きな声で怒鳴る、ののしる、人前で馬鹿にする、無視するなど
・社会的暴力
友人づきあいを制限する、外出を禁止する、電話履歴やLINEを必要以上にチェックするなど
・経済的暴力
生活費を渡さない、借金させる、デート代を全く支払わない、貯金を勝手に使うなど
・性的暴力
セックスの強要、避妊に非協力的、嫌がっているのにポルノビデオを見せる、中絶させようとするなど
参考:内閣府男女共同参画局
この話を知った女性のなかには驚く人もいます。
それはおそらく驚く女性の大半は「殴られたり、蹴られたりしていないから大丈夫」と捉えていからかもしれません。
DVは夫婦ではなくても、カップルでも成立します。デートDVと調べると詳しく出てくるので、愛されていないと感じているだけでなく、上記の言動が彼に見られる場合は誰かに相談するようにしましょう。
あなたの夫・彼の“独自の愛情表現”は?
女性は男性よりも、感情表現が豊かな人が多いといわれています。
だからこそ、わかりやすい表現や自分の求めているものを与えてくれたとき、愛されていると感じやすいのです。
一方、男性には男性なりの愛情表現があります。
例えば「仕事をがんばる」「聞くのではなくアドバイスをしたり、解決策を提案する」「(相手にあえて言わずに)会う時間を作る」などがその一例です。女性からしたら、わかりにくいことばかりですよね。
でも男性にとって仕事は、自分の価値を表す大事な指標の1つ。
そしてただ話して共感し合うよりも、男性は解決策を求めやすいのです。だから男性も自分が求めていることを相手にするのかもしれませんね。
特に社会的な立場を意識している男性や、女性を守りたい気持ちの強い男性が仕事を優先する傾向があります。
皆さんの彼・夫はどんな人でしょうか?
一般的な考えや自分の価値観、恋愛心理学に引っ張られすぎず、目の前にいる夫・彼がどのような価値観を大切にしているかを見てみましょう。そうすることで、彼らなりの愛情表現が見えてくることがありますよ。
また、家庭環境や過去の出来事の影響で“愛情表現がわからない”という人は男女ともにいます。
愛されていないと感じたときは、自分の価値観で相手を見ていないか、冷静に考えてみましょうね。
愛されていないと思っているときに起きやすいこと
女性が彼や夫に愛されていないと感じるとき、女性側に起きやすい現象もあります。
無意識に求めていませんか?
女性側が悪いということではありませんが、無意識に期待したり、相手に求めてしまっていませんか?
自分の期待通りに夫や彼が動いてくれることを望んでいる場合、その通りにならないと愕然とし「愛されていない」「もう好きではない」「他に女がいるかもしれない」という不安を感じるのは当然なのです。望んでいたことが叶わないって悲しいことですからね。
その無意識が彼や夫にとって負担となっているかもしれません。
でも期待しないようにするって難しいですよね。そういうときは、2人の時間をどうやって作るか、2人で楽しめることは何かという点に注目して考えてみると「自分がしてほしいこと」以外に目が向きやすくなりますよ。
自分から愛情表現はしていますか?
実は相手に求めすぎているとき、自分から与えることを忘れてしまっていることがあります。
感謝の言葉や愛情表現を皆さんはどのくらいしているでしょうか?
もしかしたら「あっちがしてくれないのに、私だけするなんて」と思うかもしれません。
その気持ちは当然です。ただ、相手に愛情を求めているなら、ちょっとつらいかもしれないですが、自らも与えるようにしていきませんか?愛されていない…と感じているなかで、自分だけ愛情表現するのは悲しいかもしれませんが、愛情を一方的に求めたり試し行動をしてしまっては相手の心が冷めていく可能性があります。
まずは顔を見て感謝の気持ちを伝えたり、「好き」「愛してる」「大切だよ」「元気もらってるよ」という言葉を伝えていくのも愛されるための一歩かもしれません。
夫・彼から愛されていないと感じたときの対処法
では、愛されていないと感じたとき、具体的にどんなことをすればいいのか対処法をご紹介します。
対処法①相手を知ろうとする
相手の状況や気持ちなど、相手を理解しようとすることはとても重要です。
理解することや知ることは、すべてを受け入れなさいというわけではありません。人はどうしても、自分が意識していることを基準に物事を考えてしまいやすい。だからこそ、少しでも相手を知ろうとすれば視野が広がり、「ああ、こういう人もいるんだな」という気持ちにもなっていきやすいからです。
相手を知るためには会話が重要。できる限り直接会って、お互いの気持ちや価値観を伝えあいましょう。
対処法②自分の気持ちを冷静に伝える
自分の気持ちを伝えるときは、カーっとなっていたり、涙が今にも溢れそうになっているときを避けましょう。
冷静に落ち着いて話せそうなときに、理由とお願いを伝えてみるのです。
よく自分の気持ちを伝える際に「~してくれないの?」「~してよ!」と言っていませんか?そう言いたくなる気持ちはとてもよくわかります。でも皆さんが言われる立場だったらどうでしょうか?
たとえば「~は悲しいから、~してくれると嬉しい」や「~だから、~してほしい」などが伝え方としておすすめです。
それでもダメなときは、相手にも理由を聞き、ちょうどいいところを見つけていきましょう。また、時には諦めることも心の健康のためには重要ですよ。
対処法③自らも愛情表現を心がける
先ほども解説したように、愛されていないと感じたときは、自分から愛情表現を積極的にやってみましょう。
心理学には返報性の原理という心理的効果があります。返報性の原理とは、相手から受け取ったことを「自分も同じようにお返ししたい」「お返ししないと申し訳ない」という気持ちをつくるものです。
夫婦なら、夫がちょっとでも何かしてくれたことに「ありがとう」「いつも助かってる」とあえて言葉で感謝を表したり、自分のもののついでに夫のこともやってあげて「ついでに○○しといたよ」と伝えるなど
カップルであれば、彼との何気ない会話やLINEなどのなかで「いつもありがとう」「幸せだよ」「楽しいよ」と伝えてみるなど
本当にちょっとしたことをやってみましょう。
はじめは「なんで私ばかり」と思うかもしれませんが、お互いを思いやる気持ちの土台を整えるために大事な行動です。
数か月経っても夫側に何1つ変化がないときは、今後のための見直しをするとき。相手が求めていないことばかりしていないか、夫が気づいていないもしくは返そうという思いがない人かもしれないかなどと、一度落ち着いて考えてみましょう。
ただし、見返りを求めすぎたり、不自然な形でアピールしたり、露骨に変化を期待してしまってはあなた自身がつらくなります。
まずはきちんと相手と信頼関係を築くことを大切にしてみてくださいね。
男女は違う生き物、無理せず自分らしさを大切に
私たちは同じ性別でも一人ひとり違います。男女なら尚更、体のつくりや考え方にも違いが出てくるでしょう。
今回紹介した方法は、女性側ががんばらなくてはならないイメージが強かったかもしれません。しかし、それは無理や我慢をしてでも愛情を手に入れましょう、ということではないのです。
自分の無理のない範囲で、自分らしさを大切にすることを優先してくださいね。
参考
小田切紀子 ほか 2003 夫婦間の愛情関係と夫・ 妻の抑うつ との関連縦断研究の結果から.性格心理学研究,11,2,61-69
伊藤裕子 2015 夫婦関係における親密性の様相,26,4,279-287
澤田玲子 2016 男性のvs女性脳?--感情処理における行動と脳の性差 心理学ワールド,75,2,9-12
暴力の形態 | 内閣府男女共同参画局