フェムケアはメンタルにも重要!理由とケア方法を臨床心理士が解説

女性のライフステージの変化によるさまざまな課題を解決するフェムケア・フェムテック。生理など身体のケアだけと思っていませんか?フェムケアは身体だけでなく、メンタルとも密接に関係しており、女性のメンタルヘルスにも注目が集まっています。そこで今回は、改めてフェムテックに関する知識、メンタルとの関係、フェムケアの方法をフェムテックエキスパートの資格も持つ臨床心理士が解説します。

監修者
いけや さき
臨床心理士
心理学系大学院修士課程修了後、精神科病院や心療内科クリニック、療育施設などに従事。 「よりカウンセリングとセルフケアを身近に」という思いから、2020年にフリーの臨床心理士としてオンラインプラットフォームや個人サイトを通してオンラインカウンセリングを開始。主に20~40代女性のカウンセリングを担当。現在は女性が生きやすい世の中を目指し、ライターとしても情報提供を行っている。

資格
臨床心理士、公認心理師、マインドフルネススペシャリスト

フェムケア・フェムテックとは?

近年、耳にするようになった「フェムケア」「フェムテック」。
フェムケアとは、「Feminine(女性、女性らしさ)」と「Care(ケア)」から生まれた造語で、女性の身体と心の悩みに寄り添う商品やサービスの総称を意味します。

一方、フェムテックは「Female(生物学的意味の女性)」と「Technology(科学)」を合わせた造語です。こちらは、女性の健康課題を科学技術を用いた方法で解決する商品やサービスの総称を意味します。

フェムテックもフェムケアも、目的は女性の身体や心の悩みに寄り添うこと。フェムケアやフェムテックの代表的な商品・サービスには、生理用品やデリケートゾーンケア商品、月経管理アプリ、サプリメントなどがあります。

参考:
フェムテック協会認定資格について - 一般社団法人日本フェムテック協会
【フェムテック&フェムケア】テクノロジーとアイテムで女性の健康問題にアプローチ|わたしの保健室 - OZmall

8割の女性がフェムケアをしていない

「女性のデリケートゾーンに関する調査」によれば、デリケートゾーンが気になる女性は7割以上いる一方で、ケアをしていない人は約8割(気になると回答した女性だけでも約6割)いることがわかりました。

フェムケアをしていない理由で最も多いのは「ケア方法がわからない」こと。

そのほかにも「お金がかかる」「どの商品がいいかわからない」という回答もありました。フェムケアはさまざまな企業が参入し、数多くの商品やサービスはあります。しかし、消費者である私たちにとっては「多すぎてわからない」「あっているものがわからない」「選択肢が多すぎる」となってしまうのかもしれません。

また、フェムケアやフェムテックという言葉の認知度もまだ低いのが現状です。ILACYとネットエイジア株式会社の調査からは、フェムケアに関心のある友人やSNS(インフルエンサーの投稿)、専門家からの情報発信が多くの女性の身体と心を救うカギとなることがわかります。この記事はフェムケアを知るきっかけの1つとなるでしょう。

参考
女性1000人を対象にした「デリケートゾーンに関する調査」の調査結果を発表しました | カエタステクノロジー株式会社
フェムゾーンケア(デリケートゾーンケア)に関する調査2023‐ILACY(アイラシイ)働く女性の医療メディア


実際は多くの女性がデリケートゾーンの悩みを持つ

特に夏頃になると、デリケートゾーンに関して悩む女性が多くいらっしゃいます。
悩む女性の約6割が「生理時の不快感」などが気に入なり、かゆみやニオイ、黒ずみ、ムレやすさにも悩んでいるようです。しかし、悩んでいても誰に相談したらいいのかわからず、相談することも恥ずかしく、1人で抱えている女性が多くいます。

まずは、デリケートゾーンの悩みは決して恥ずかしくないことを知っていくことが、フェムケア・フェムテックの一歩なのかもしれません。

参考
女性1000人を対象にした「デリケートゾーンに関する調査」の調査結果を発表しました | カエタステクノロジー株式会社
フェムゾーンケア(デリケートゾーンケア)に関する調査2023‐ILACY(アイラシイ)働く女性の医療メディア

フェムケアとメンタルの関係と気になる疑問

フェムケアは女性の健康問題全体に関わるものです。
身体だけでなく、心(メンタル)とも関係があり、それは生理やPMS・PMDDだけでなく、子宮や卵巣などの女性特有の臓器や妊娠、出産、更年期障害等とも深く関わりがあります。

ここでは、フェムケアとメンタルの関係を詳しく解説します。

日頃の疲労が膣内環境に影響を与える

膣内環境の悪化は、ケアや洗浄方法だけが原因ではありません。

疲労や睡眠不足、対人関係の悪さなど、日々のストレスの蓄積が自律神経や女性ホルモンに影響し、膣内環境を悪くするきっかけの1つにもなるのです。フェムケアは食事や入浴、生理用品等に気を遣うだけでなく、良質な睡眠やストレスを極力ためないことも重要となります。

みなさんは心に余裕がないとき、自分を労わり、食事や睡眠、身体のケアなどに十分気を遣う気力が残っているでしょうか?

日々の生活のなかで、自分を労わる行動をしていれば、自然と膣内環境にもいい影響を与えてくれるでしょう。ストレスをためにくくなったり、ストレス状態になっても対処できる心と体も作れるようになるはずです。 

身体と心は複雑に絡み合い影響している

自律神経系や免疫系のバランスが崩れると、女性の心と身体はSOSを出します。それが「不調」です。不調はホルモンバランスにも影響し、イラ立ちや不安というメンタル面に現れることもあれば、身体面に現れることもあります。

心的な負荷がかかると、私たちの体温や脈拍は上昇しますよね。手汗をかいたり、腹痛や胃痛、頭痛に悩まされる人もいるでしょう。でもストレスに感じる状況から離れるとおさまることが多いのではないでしょうか。

心と身体はつながっています。心と身体の片方だけをどうにかしようとしても、悪化してしまうことがあるのです。どちらも大切にケアしながら、いい状態維持のために生活習慣を見直していきましょう。

~膣内フローラって知ってる?~
フェムケアについて調べていると、「膣内フローラ」という言葉に出会います。「腸内フローラ」は腸活などの影響で有名ですが、女性は「膣内フローラ」にも注目することがおすすめです。

膣内フローラとは、膣のなかにあるさまざまな細菌の集合体である「膣内細菌叢(ちつないさいきんそう)」のこと。本来、膣内は健康的な細菌(デーデルライン桿菌)が大半を占めますが、膣内環境が悪くなると膣内フローラにも腸内環境と同様に悪い菌が増えていきます。

膣内フローラを良い状態で保つためにも、運動や食事、デリケートゾーン専用商品の正しい使用、膣内の洗浄だけでなく、ストレスをため込まずに睡眠や休息をしっかりとりましょう。この記事の後半では、具体的なケア方法を解説しています。

参考
岩佐由美.女性の健康課題に関する研究パラダイムの変化─ 1980 ~ 2014 年 医学中央雑誌収録論文のタイトル分析から─,日本保健科学学会誌 21 (4), 181-191, 2019

【年代別】フェムケアとメンタルの素朴なQA

ここではフェムケアとメンタルに関する、疑問にお答えします。

20代でPMSはひどくなる?

PMSはどの年代でもつらいですよね。しかし、20代のPMSはこれまでよりもひどく感じる女性も多いとされています。それは、10代には少なかった女性ホルモンバランスの変化により、PMSをはじめとしたさまざまな不調が出現しやすくなる時期からです。

<PMS以外に20代でなりやすい症状・病気>
・月経不順
・無月経
・月経困難症
・子宮内膜症
・子宮腺筋症 など

20代の生理周期は安定しやすいといわれますが、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が多くなる年代。無理なダイエットや過労・疲労などが身体に影響を及ぼす可能性が高くなるのです。

また、社会に出ると生活の変化もありますよね。これまでの生活習慣と異なることで、身体の症状が顕著に出はじめ、20代でPMSになると「つらい」「ひどい」と感じやすくなります。

20代のうちにできる限りのセルフケアを行うことで、30代以降の心と身体の過ごしやすさにいい変化が現れるでしょう。

30代はPMSが重くなる?

30代はエストロゲン分泌量がピークを迎える年代。20代までの症状に加えて、ライフイベントの変化が大きくPMSおよびPMDDが重くなる女性は急増しやすいと考えられます。

医学的には病名として扱われていませんが、若年性更年期障害になる女性も一定数いるようです。

更年期障害の特徴的な症状(女性)
・ほてり
・のぼせ
・発汗
・イライラ
・手足の冷え など
※閉経していて、上記の症状がある場合は若年性更年期障害かもしれません。閉経していなければ、PMSやPMDD、ストレスや無理なダイエットによるホルモンバランスの変化の影響、うつ病などの精神疾患による症状の可能性があります。

30代は結婚や妊娠をする女性も多く、独身者も転職や昇進、後輩が増えるなど20代とは生活が変わってくる人も多い年代です。このような原因から、30代はメンタル面に支障をきたす女性も増えやすく、PMSが重くなってPMDDになる可能性が高くなるといわれています。

40代から60代で心と体に変化が起きる?

「プレ更年期」と呼ばれる40代。特に閉経前後5年(計10年)は、エストロゲンの急激な減少がはじまります。

また、もう1つの大事なホルモンであるプロゲステロンも減少するため、女性ホルモンが一気に少なくなり、身体や心が驚いてあらゆる症状が出現しやすくなるのです。

更年期は誰でも訪れますが、更年期障害は誰でもなるものではありません。早めに生活習慣を見直すことで、50代や60代になっても健康な身体とメンタルで過ごすことが可能となるでしょう。

更年期障害以外にも、50代から60代あたりからは、骨粗しょう症や心血管系疾患などのリスクも高くなります。疲れやすさも感じやすいため、運動に対する気力が湧きにくいのも当然かもしれませんが、散歩やストレッチ、人との交流などできることからはじめていきましょう。

参考
フェムケアはメンタルにも良い?‐ILACY(アイラシイ)働く女性の医療メディア
膣ケアを怠ると体調不良になる? 日本人があまりに知らない「ちつケア」と女性の健康の関係【医師監修】 - Woman type[ウーマンタイプ] | 女の転職type

心と体の健康度を高める“フェムケア”の方法

最後にフェムケアの方法をご紹介します。

現在は特に症状を感じていない人も、月経周期が規則正しく来ている人も油断できません。未来の自分の身体とメンタルのために、今から正しいフェムケアの方法で自分を自分で守ってきましょう。

すべて一度に頑張る必要はないですが、生活のなかで取り入れられることからやってみてくださいね。

デリケートゾーン専用商品で洗浄と保湿する

症状がない人は予防のために、症状がある人は緩和のために、デリケートゾーン専用商品の使用をおすすめします。

女性にとって膣は「第二の顔」です。顔を洗顔フォームで洗い、スキンケアを行うのと同様に、デリケートゾーンも専用商品で洗浄とケアを行いましょう。20~30代は乾燥やニオイの心配は少ないようですが、40代になるとかゆみや痛みが表れやすくなります。

デリケートゾーン用の石けんやソープは、肌のなかでも特に敏感な膣のために計算して作られています。膣やデリケートゾーン周りの皮膚は非常に薄く敏感です。無理にこすったり、身体のほかの部位と同じ石けんやボディソープだと刺激が強すぎます。

デリケートゾーン専用商品は黒ずみやにおいの予防にもなります。保湿成分の高い弱酸性のデリケートゾーン専用商品を使用し、顔と同じくらいに丁寧に扱いましょう。

参考
【医師監修】デリケートゾーンの保湿が大切なのはなぜ?正しいケアのやり方で乾燥によるトラブルを防ごう
【医師監修】デリケートゾーンにトラブルがあると鬱になりやすい!? 正しいケア方法は…

アンダーヘアを清潔に保つ

脱毛経験があっても、デリケートゾーン・アンダーヘア部分はセルフケアされている女性は一定数いるかもしれません。専用シェーバーもありますし、VIOのムダ毛処理は自分で行なえます。

アンダーヘアを放置していると、においやムレやすさの原因となり、デリケートゾーンが不衛生になってしまいます。不衛生な状態が続けば感染症のリスクも上がるので、アンダーヘアを清潔に保つことを推奨します。

しかし、基本的には見えない部分だからと処理を面倒に感じる人もいますよね。アンダーヘアやVIOの正しいセルフケア方法がわからなくて放置したり、自己流になっている人は一度サロンでプロからケア方法を学ぶのもいいかもしれません。

食事や漢方で体内から整える

身体を直接的にケアする以外に、体内から調子を整える方法も有効です。

特に食事は、女性ホルモンに必要な栄養素や美容と健康よい食材を積極的に摂りましょう。特にフェムケアの観点からは、鉄分やイソフラボン、カルシウムが多い食品をたくさんとることがおすすめされています。特に生理でお悩みの方は、血流をよくする食材も積極的に食べるようにしましょう。

  • 鉄分の多い食材
    小松菜、ホウレンソウ、あさり、レバー、カツオ、さばなど
  • イソフラボンの多い食材
    豆腐、きな粉、大豆・揚げ大豆、納豆など
  • カルシウムを含む食材
    干しエビ、煮干し、パルメザンチーズ、いりご、乾燥わかめ・ひじきなど
  • 血流をよくする食材
    ナッツ類、生姜、ネギ、シナモンなど

また、漢方もフェムケア商品としておすすめです。台湾発の漢方のライフスタイルブランドである「DAYLILY(デイリリー)」は、女性の悩みの助けとなるお茶や和漢サプリなどを販売しています。

漢方と聞くと、「苦い」「美味しくない」イメージがあると思いますが、DAYLILYは漢方薬剤師監修で飲みやすくておしゃれな商品が豊富です。漢方薬などに抵抗がある人は、取り入れやすいところから試してみるのはいかがでしょうか。

参考:
専門家に聞いた!フェムケアにおすすめの食事って?|宝島社
食品成分データベース|文部科学省

骨盤底筋を鍛える

女性の臓器を支える“骨盤底”。骨盤底が衰えると、便秘や下痢、尿漏れ、頻尿、原因不目の下腹部の痛みなどが起きるリスクが高まります。

骨盤底には、直腸や子宮、膀胱などがあり、その下に”骨盤底筋”という筋肉があります。骨盤底筋は胴体(体幹)を支える役割があるため、鍛えることで女性特有の病気だけでなく、健康的な身体や体型を艇に入れることも可能です。

骨盤底筋を鍛えるトレーニング動画もYouTubeにたくさん上がっているので、参考にしてみてくださいね。


ストレス発散・解消を意識する

この記事で解説したように、フェムケアとメンタルには密接な関係があります。

日々、ストレス発散や解消を意識することもフェムケアとメンタルケアの両方の観点から重要です。

ストレス発散・解消方法は数多くありますが、「静(消極的)」と「動(積極的)」の両方を意識することがおすすめ。「静」はどちらかといえばリラックスできるようなものを指します。一方で「動」はリフレッシュできて、血液循環がよくなるものが当てはまります。それぞれで得られる効果が異なるため、どちらも取り入れていきましょう。

  • 静(消極)的休養の例
    睡眠、読書、音楽鑑賞や芸術鑑賞、1人でゆっくり過ごす など
  • 動(積極)的休養の例 
    運動全般、筋トレ、友人と遊ぶ、サウナ など

入浴は温度や入っている時間によって、消極的休養にも積極的休養にもなります。

不快に感じたら、すぐ専門家に頼る

ニオイやおりもの、かゆみなど身体の異変だけでなく、疲れやイライラ、不安感なども放っておくのは危険です。

身体症状の異変は、婦人科等の専門家に相談するようにしましょう。身体の症状は、膣炎や膿瘍など、私たち一人ひとりでは判断できな病気も潜んでいます。もしメンタル面の症状が強い場合は、心療内科も選択肢の1つです。

また、メンタル面のみでも消極的休養と積極的休養を取り入れながら、カウンセラーなどに相談する機会をつくることがおすすめ。日本でカウンセリングは、精神的な疾患を持つ人が通うものというイメージがありますが、世界に目を向けるともっと気軽で身近なものです。

カウンセリングは病院ではなくても、カウンセリングルームやオンラインのサイトで受けられる時代となりました。友人や家族に話すのとは違い、客観的かつ専門的な視点で話を聴いてもらえますよ。美容院やサロンと同様に、カウンセリングも自分のために活用してみてくださいね。

フェムケア・フェムテックの知識を持ち、心と身体を大切に

フェムケアやフェムテックはこれから先、女性が直面するライフイベントを快適に過ごすために欠かせないものです。女性だけの課題と思われがちですが、2025年のフェムテックによる経済効果は年間で2兆円といわれています。

身体や心に我慢を強いると、一時的には「仕事を休まずに済んだ」「なんとかなった」と感じるかもしれません。しかし、長期的に見ればパフォーマンス低下や女性特有の病気のリスクにつながり、個人だけでなく経済的にも大きな損失が出てきます。

すべての人々には、自分の過ごしやすい働き方や生き方で人生を送る権利がある。自分の心と身体を大切にして、いきませんか?

心理カウンセラー(臨床心理士・公認心理師)
医療・福祉施設勤務を経て、フリーのカウンセラー・ライターとして活動中。

“心と身体はつながっている”という考えのもと、女性たちが穏やかで自分らしいライフスタイルを手に入れるためのカウンセリングや情報提供しています。

わたし自身も外側と内側の両方の健康を意識し、運動を意識するほか、最近では漢方や薬膳、食生活に関する分野を勉強中です♪

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