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臨床心理士
資格
臨床心理士、公認心理師、マインドフルネススペシャリスト
筋トレで手に入るメンタル効果5選
筋トレは、筋肉を鍛えるだけではありません。筋力トレーニングではあるのですが、メンタルにも効果が期待されています。そこでまずは、筋トレによるメンタル効果を解説します。
効果1.集中力の向上
疲れたときや集中力が途切れたとき、ストレッチなど身体を動かすとすっきりしませんか?
筋トレには集中力アップの効果が期待されています。有酸素運動(ウォーキングや水泳など)が効果的という研究は多いですが、無酸素運動に分類される筋トレにも集中力向上の効果があります。
筋トレすると、ドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。このドーパミンが、集中力アップにかかせないホルモンなのです。ドーパミンは記憶や意欲に深く関わるホルモンで、活性化するとやる気が満ちて集中力が上がります。
集中力が途切れやすい人は、筋トレを取り入れてみましょう!
効果2.モチベーションアップ
がんばりたいのに心や身体が追いつかず、やる気がなくなった経験はありますか?
たとえば、長時間同じ姿勢で過ごすと血流が悪くなり、倦怠感につながるといわれています。また、休憩をとらずに過集中状態になると、脳が通常以上にフル回転するため脱力状態もその分長くなります。
このように、実はがんばりすぎることで脳や身体に不調をきたす可能性があるのです。
だからこそ、勉強や仕事の前後、もしくは日頃から定期的に身体を動かしてみましょう。少し動かすだけでもすっきりして血流が促進されます。デスクワークなど、仕事中の筋トレは座りながら行うものがおすすめです。
血流が促進されると「効果1.集中力の向上」同様にドーパミンが適度に分泌され、やる気や集中力の向上、快感や喜びを感じられます。
効果3.イライラや不安の軽減
筋トレには、イライラや不安を減らす効果も期待されています。論文にも不安が改善された報告が多く、筋トレの効果は年齢や性別の影響も受けにくいそうです。
筋トレはドーパミン以外にも、セロトニンやエンドルフィンなどが分泌されます。セロトニンとは幸せホルモンといわれる私たちの不安感やイライラを軽減し、幸福へと導いてくれる神経伝達物質です。
エンドルフィンは、神経を適度に興奮させるだけでなく、癒しの作用もある神経伝達物質。「ランナーズハイ」に関与するホルモンで、爽快感や幸福感が期待できます。
効果4.継続による達成感の獲得
筋トレは「見た目の変化がわかりやすい」「身体の動かしやすさが変わる」「重いものが持ち上げられる」など、達成感を得る機会が多いのではないでしょうか。
また、少し身体を動かすだけでもすっきりして「続けよう」という気持ちにもなりやすいです。
継続するためには、最初から無理な計画を立てるのではなく段階的に時間や量、質などを変化させていくことが重要。この段階的な計画は筋トレだけでなく、ほかのことにも応用できます。筋トレを継続できた達成感が、結果的に「私はできる」「がんばった」という喜びや自信につながるのです。
効果5.睡眠の質の向上
筋肉と睡眠には深い関係があります。有酸素運動と睡眠に関する研究は多くみられ、効果も期待されていますが、無酸素運動である筋トレも睡眠によい影響を与えます。
筋トレはセロトニン分泌が期待できますが、そのセロトニンは睡眠に関わるメラトニンの分泌を助ける役割があるのです。
たとえば、日中の筋トレによる心拍数の増加でセロトニンやドーパミンを分泌、睡眠時にはそれらが落ち着くため、メラトニンが分泌されてリラックスした状態を作り出せます。
また「効果3.イライラや不安の軽減」で解説したように、筋トレは不安を減らす効果が期待できます。睡眠の質が下がる要因の一つは、情緒不安定な状態の影響と考えられているため、不安感を軽減することが結果的に睡眠の質を高めてくれますよ。
なぜ筋トレがメンタルヘルスにいいのか?
ここまでご紹介したように、筋トレはメンタルヘルスに様々な効果をもたらします。
最も大きな理由は、神経伝達物質の分泌です。
筋トレをすることでエンドルフィン、セロトニン、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌されます。
エンドルフィンには鎮痛作用、セロトニンは幸福感の獲得や精神安定に関わる自律神経のバランスを整える作用、ドーパミンは苦痛をやわらげやる気を作り出してくれます。
また、筋トレは男性が好むイメージも強いと思われますが、これにはテストステロンの影響が関わっています。テストステロンとは男性ホルモンと呼ばれるホルモンで、引き締まった筋肉や前向きを作り出す神経伝達物質です。
意外と知られていませんが、女性には男性ホルモン、男性には女性ホルモンがわずかにあります。わずか持っておくことで、それぞれのホルモンのメリットを上手く生かすことができるため、性別問わず「男性ホルモン」「女性ホルモン」は必要。それらをバランスよく増やす方法の1つが筋トレなのです。
それぞれの神経伝達物質がバランスよくあることで、私たちのメンタルは安定し、前向きな気持ちも沸いてきます。
メンタル向上のための注意点
メンタル向上のためには筋トレとうまく付き合う必要があります。ここでは筋トレの際の注意点を解説します。
メンタル向上なら週2~3回
まずは「筋トレは毎日行うもの」「がっつりジムに行った方がいい」などの固定観念はなくしましょう。筋トレは週2~3日程度がおすすめ。これはメンタルだけでなく、筋トレ初心者のためにも必要な知識です。
筋トレは筋肉を鍛えるものなので、少なからず筋肉を傷つけることにもなります。
毎日鍛えて身体を傷つけてしまうと、メンタルに悪影響を及ぼす可能性があるのです。元々前向き思考の人なら、大きな影響は受けないかもしれませんが、できれば筋肉をお休みしてあげるほうが心と身体のためにいいでしょう。
回数も始めから30回・50回・100回などと設定せず、小さなハードルを少しずつクリアする気持ちでやってみましょう。運動嫌いな筆者は5回からスタートしました。もっと少なくたっていいのです。自分の身体と心を大事にして、達成感を得ることがメンタルにも理想の体型にも重要ですよ。
夜の筋トレは睡眠に悪影響を及ぼす
「効果5.睡眠の質の向上」で解説したように、筋トレは一時的に心拍数の増加でセロトニンやドーパミンを分泌します。そのため、寝る直前に筋トレすると興奮して眠れなくなるのです。夜に身体を動かしたい場合は負荷の少ないストレッチやヨガがおすすめ。
では、筋トレは一体いつしたらいいのか?それは日中や夕方です。
少なくとも就寝の2時間前には終わらせるようにしましょう。睡眠前に筋トレしてしまうと、交感神経が優位になり睡眠モードに入らなくなってしまいます。可能であれば「夕方~睡眠2時間位前」を目安にしましょう。
朝は心臓や胃が弱い人、体力に自信のない人は、負荷の少ないものからはじめてください。朝の筋トレもメンタルに効果はありますが、身体の負荷がかかりやすいので気をつけて取り組みましょうね。
女性の筋トレは生理周期を考慮
月1回の月経は女性にとってなかなか面倒くさいものですよね。そこでさらに生理のことを考えて筋トレなんて…と思うかもしれませんが、メンタルのためにも身体のためにも必要不可欠。
生理中は身体を無理させない程度に「生理中向けの運動」をやってみましょう。
生理がかなり重い女性は無理に動かす必要はないですが、適度な運動が生理痛を和らげたり、筋肉を引き締める効果があるという研究もあります。また、生理後1週間は気持ちも前向きになりやすく、痩せやすい時期なので、筋トレで理想の自分に近づくことができます。
筋トレ以外にもおすすめ!メンタルにいい運動法3選
カウンセリングで出会う方の中には、筋トレが苦手…という人もいらっしゃいます。筋トレに苦手意識がある人は、無理に筋トレを行う必要はありません。ここでは、筋トレ以外にメンタルにいいといわれる運動法を解説します。
筋トレをすでにしている人や、これからする予定の人も、筋トレとあわせて取り入れてみてくださいね。
ヨガ
ヨガは呼吸法とじっくりゆっくりした動きが特徴のエクササイズ。特に不安感軽減やリラックス効果が期待できるため、朝もしくは寝る前がおすすめです。
ヨガとメンタルヘルスに関する記事はすでに解説済みなので、詳しくは下記をご覧ください。
ウォーキング
ウォーキングもセロトニン分泌が期待できます。朝、太陽の光を浴びながら歩くことは気持ちを前向きにさせてくれて、メンタル安定につながります。
ダイエット目的ではなく、メンタル向上目的のウォーキングなら朝5~10分くらいで十分。もっと歩けそうであれば30分くらい歩くと、健康な身体づくりもできますよ。
水泳
カウンセリングで出会う女性のなかには「時間があればプールに行く」という声も一定数ありました。
調べてみると、水泳は全身運動であるため、水をかく動作による筋力向上と集中力アップが期待できるようです。また、水の中にいることでリラックス効果も得られるとわかりました。
水泳とメンタルの関連については、また別の機会に詳しく記事にしたいと考えています。
参考
ヘルスプロモーション理学療法研究『大学生競泳選手のポジティブ感情と心理的競技能力,ストレスとの関係性』2021 年 10 巻 4 号 p. 173-181
筋トレで心も身体も幸せになろう!
今回は筋トレとメンタルヘルスの関連について解説しました。メンタルは「心」のイメージが強いですが、私たちの心と身体はつながっています。心と向き合うことだけでなく、身体と向き合うことや大切にすることは、私たちのメンタル向上にきっと繋がっていくでしょう。
ただし、筋トレしても気分が晴れない・不安が続く・眠れないなどの症状がある方は、カウンセリングや医療機関受診を検討してくださいね。