もくじ
花粉症とは?
「花粉症」は、植物の花粉が原因となる「アレルギー疾患」の総称です。くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・充血・のどや皮膚のかゆみなどの症状が現れ「季節性アレルギー性鼻炎」とも呼ばれています。地域によって、気温や地形などの影響から差はでるものの、例年2月~4月にスギ花粉、3月~5月にヒノキ花粉が日本各地で飛散します。日本人の*約38.8%がスギ花粉症だといわれています。
*松原薫ほか鼻アレルギーの全国免疫調査2019(1998年2008年との比較):速報ー耳鼻咽喉科医およびその家族を対象としてー日本耳鼻咽喉科学会会報 2020;123(6):485-490
また、東京都が平成28年に行った調査によると、都内のスギ花粉の推定有病率は48.8%に及ぶそうです。
そんな花粉症はある日突然、誰にでも発症する可能性があります。
それでは、まず花粉症のメカニズムからみていきましょう。
季節性の「アレルギー反応」花粉症のメカニズム
- 花粉という異物(アレルゲン)が侵入します。
- リンパ球が侵入した異物を受け入れるかどうか考えた結果、排除する(侵入者)と決定します。
- リンパ球が「lgE抗体」を作ります。
- lgE抗体ができると、再び花粉が体内に侵入した際、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面にある抗体と結合します。
- その結果、化学物質のヒスタミンなどが分泌され、花粉を体外にできるだけ放出しようとします。
- 放出反応が、くしゃみで吹き飛ばす、鼻水・涙で洗い流す・鼻づまりで侵入を防御するといった症状となるわけです。
子どものうちから花粉症の人もいれば、大人になってから突然発症する人もいます。その違いは、lgE抗体の許容量が人によって違うからです。
花粉症になりやすい人の特徴とは?
人によって抗体の許容量が違うとはいえ、花粉症を発症しやすい人の特徴というものがあります。
- 遺伝的にアレルギー体質
- 食生活が乱れている
- 睡眠不足
- 不規則な生活
- ストレスを抱えている
- 呼吸器疾患のある人
- 喫煙習慣のある人
花粉症になりやすい人は、悪化させてしまう生活習慣が身についているかもしれません。規則正しい生活、睡眠、食生活、適度な運動を心掛けて、日々の習慣から改善していきましょう。
花粉症の予防行動
*順天堂大学日本医療研究開発機構の臨床研究によると、花粉症の予防行動としては、最も多いのがマスクの使用で、次いで内服薬、点眼薬、点鼻薬、空気清浄機、洗顔剤の使用、メガネ・ゴーグルの着用の順になっています。
*順天堂大学大学院医学研究科 眼科学の猪俣 武範 准教授ほか:花粉症のある人の特徴と花粉症症状の強さと関連する特徴を解明―スマートフォンアプリ「アレルサーチ®」を用いた医療ビッグデータ解析―
花粉症の症状を軽減するためには、まず原因となる花粉を避けることが基本です。
花粉症対策にはそういった予防行動に並行して、ヨガを実践がおすすめです。ヨガには、自律神経を整えたり、肺や気管、免疫力の向上といった効果が期待できます。
ヨガが花粉症に有効な理由
夜更かしの習慣は睡眠不足を招いてしまいます。睡眠不足は、免疫力やホルモンのバランスを崩しやすく、花粉症の症状を悪化させてしまします。その他、ストレスは身体の様々な機能を調整する自律神経を狂わせ、免疫力が落ちてしまいます。運動不足も体力が落ちることにより免疫力を崩す要因です。
ヨガが花粉症に有効な理由は下記のとおりです。
- 呼吸に使われる呼吸筋(横隔膜や肋間筋)が鍛えられる。
- 体の凝りが解消され呼吸がしやすくなる。(肺活量が増える)
- 肺や気管が強化される。
- 自律神経が整えられ免疫力が向上する。
- 体力が上がる。
- 内臓器官を活性化し免疫力向上・ホルモンバランスが整う。
- リラックス効果から安眠につながる。
- 適度な運動でストレス解消ができる。
運動不足だからといって、いきなり強度の高い運動を行えば極度に疲れてしまいます。それではかえって免疫力を落とすことになり本末転倒です。運動習慣にはウォーキングやスイミング、ジムなど軽めの運動がおすすめです。
ヨガは適度な運動量でありながら、上記のような様々な効果が期待できるので、花粉症対策としてぜひ取り入れていただきたい習慣です。
また、ヨガの根本ともいえるアユールヴェーダからみてもおすすめの理由があります。アユールヴェーダでは春は解毒の時期とされており、冬の間に体内にため込んだ老廃物を肝臓が体の外に排出してくれます。肝臓の本来の機能が発揮しづらい時期なので、免疫力も落ちやすく花粉症などのアレルギー症状が出やすい状態です。深い呼吸に合わせて動くヨガは内臓器官を活性化し免疫力を高めてくれます。
花粉症の改善に期待できるヨガポーズ
花粉症の代表的な症状、鼻水・鼻づまり・くしゃみは、その症状だけでなく集中力や判断力を低下させたり、寝つきを悪くさせたりします。さらに口呼吸は呼吸を浅くさせるため、酸欠以外に猫背姿勢になるなど体に様々な影響を及ぼします。
ここからは鼻づまりの解消や免疫力アップに効果的なヨガのポーズをご紹介します。初心者の方にも自宅で手軽に行えるポーズなので、みなさんも是非試してみてください。
魚のポーズ
胸を大きく開くポーズなので、ろっ骨が広がり呼吸が深まります。また、体の前側を伸ばすポーズは交感神経を優位にさせる働きをするので、眠くなる・頭がぼーっとするなどの副交感神経が優位になりがちな花粉症の方におすすめのポーズです。花粉症の二次被害に悩む、肩こりの方や寝つきが悪い方にも効果的なポーズです。
MIMI YOGA OKINAWA 引用
【やり方】
- 両足をそろえた仰向けの状態から、手のひらを下向きに腕全体を体の下に入れます。
- できるだけ肘同士を近づけ、肩甲骨を寄せておきます。
- 肘と前腕で床を押し、胸から持ち上げるように上半身を床から浮かせます。
- 息を吐きながらのどの前面を伸ばしながら、まずは後頭部を床につけ徐々に頭頂部へと移動させます。
- 胸を開いた状態で、3~5呼吸キープします。
- 戻るときは息を吐きながらゆっくりと背中と頭を床に下ろし、元の姿勢に戻ります。
【ポーズのコツ】
- おなかを締め腰から反らせるのではなく、胸の中心を大きく開きながら胸を持ち上げます。ふくらはぎや、太もも、手の平でも床を押してサポートしましょう。胸を持ち上げやすくなります。
- 肩は力まず力を抜いてポーズをキープしましょう。
- 首への負担を減らすために、肘で床を押し体を支えましょう。
三日月のポーズ
三日月のポーズは体側を伸ばしたり締めたりする動きが入ります。体側の筋肉の弛緩があばらの下あたりにある肝臓に刺激を与えるので、全身の血流を向上させ、免疫力アップにつなげてくれます。その他、股関節の可動域を広げて前ももと腸腰筋をストレッチしてくれる骨盤調整としても定番のポーズです。
Yogeek・ヨギーク 引用
【やり方】
- 両手を肩の真下、両膝を股関節真下に置いた、四つん這いの姿勢になります。
- 右足を両手の間に置きつま先を正面に向けます。
- 右膝が直角になるように左膝を少し後ろに引き調整します。左足の甲を寝かせ床を押します。両足の内ももを寄せ合い引き締めます。
- 両手を太ももの上に置き、息を吸いながら上半身を起こします。
- 両手を腰に添えて左右の骨盤の位置を揃えます。
- 肩の力を抜き息を吸いながら両手を天井方向へ伸ばし、背筋を伸ばします。
- 胸を開き3~5呼吸キープします。
- 両手を床に下ろし、右足を後ろに引き四つん這いに戻ったら反対の動きをします。
【ポーズのコツ】
- 尾骨を下に向けて骨盤を床に対して垂直に保ちましょう。そのためには腹筋を使用することが必須です。おなかの力が抜けると、腰が反りすぎて腰に負担がかかり腰痛の原因になってしまいます。
- 床についている膝が痛む場合は、畳んだブランケットやタオルを敷いて行いましょう。
座位のねじりのポーズ
ねじりのポーズは、腹式呼吸とセットにすることで内臓に刺激を与え、老廃物の排泄を促し腸の働きが活性化します。腸と免疫力は密接に関わっており、免疫機能を上げることで花粉症の改善に効果が期待できます。
また背骨をねじることで背骨周りに集まる自律神経を刺激し調整してくれます。副交感神経が優位に偏ることで起こる鼻づまりの症状を改善させてくれます。
【やり方】
- 両脚を前に伸ばして、座骨で床を押し背骨を伸ばします。
- 長座の状態から、左脚を折り曲げ右脚をまたぐようにして膝を立てます。
- 右膝も曲げ、外ふくらはぎを床につけます。左のお尻が床から浮かないように両座骨を床につけます。
- 左手は体の後ろにつき、上半身をひねりながら右肘を左膝の外にかけます。
- 右手を下ろし、息を吸いながら背筋を伸ばします。
- 息をゆっくり吐きながら、右肘で膝を押し背骨全体を下から順番に左側へねじります。
- 3~5呼吸キープします。
- ポーズをほどいたら、逆の動きも同様に行います。
【ポーズのコツ】
・軽減方として、膝にかけた肘を曲げたままおこなっても構いません。
・おなかを引き込み、後ろについた手で体を支えながら、骨盤をたて背骨を伸ばした状態からねじりましょう。
・片方の座骨が床から浮く場合は、軽減方として床に下ろしている曲げている膝を前方にまっすぐ伸ばしてポーズをとります。
頭をスッキリさせる カパラバティ呼吸法
カパラは「頭蓋骨」「前頭葉」、バティは「光」「輝き」のことをいいます。前頭葉を活性化させ頭がすっきりとし、やる気を出す呼吸法です。鼻腔の通りが良くなります。花粉症で頭がぼーっとしたとき、頭をスッキリさせたいときにおすすめの呼吸法です。肝臓、脾臓、膵臓、腹筋を活発にし強化することから、消化機能が増し免疫力向上にも役立ちます。横隔膜を使用するため、全身の血行が良くなります。必ず空腹時に行います。
Wellness To Go引用
【やり方】
- 両鼻から大きく息を吸い込みます。
- 両鼻から短く勢いよく一気に吐き、この時に横隔膜を引き上げおなかをへこませます。
- 1秒1回のペースで30回~50回を目安にリズムよく続けます。吐く息に意識を集中させ、吸う息は自然に入ってくる呼吸に任せます。
【禁忌】
激しい呼吸法なので、病後すぐの方、心臓疾患のある方、腰痛のひどい方、妊娠中、高血圧の方、目や耳に障害のある方は控えましょう。
花粉症はヨガでセルフケア!快適ライフを手に入れよう
ヨガや呼吸法で免疫力を上げることは、花粉症対策だけでなく、乾燥する季節に猛威を振るうウィルスや病原菌にも効果が発揮されます。ヨガや呼吸法は、身体だけでなく心にも良い影響を及ぼします。花粉症のつらい症状で落ち気味な気分はやる気に変えていきましょう。
これからの花粉の季節、ご紹介したヨガを実践して快適ライフを目指してみてはいかがでしょうか。