もくじ
秋を代表する味覚のひとつである栗。
スイーツのお店では、さまざまな栗のお菓子が売られますし、この時期限定の品を毎年楽しみにしている人は少なくないでしょう。
街中だけでなく、家庭でも年に一度の「栗しごと」が毎年の恒例行事…という人も。
今回はそんな栗しごとの手順や下処理の工程、おすすめのメニューをご紹介します。
そろそろ栗しごとの時…
9月も半ばごろになると、栗しごとをする人は「いつにしようかな」と予定をたてるのではないでしょうか。
この時期ならではのおいしさが楽しみで、手間のかかる作業でありながらも、まくもくと手を動かして保存用・栗ごはん用…などと準備をしますよね。
栗はとてもおいしいですが、表の皮(鬼皮)だけでなく内側にも実にぴったりとくっついている渋皮があり、どちらの皮も処理するのにはそれなりの手間がかかります。
そのうえ年に一度の収穫ということで、さまざまな料理やお菓子を楽しむために数多くこなすとなると、手間だけでなく時間もたっぷりかかります。
しかし丁寧に処理した栗がさまざまな料理やお菓子になり、そのおいしさを味わう喜びはひとしお。
大きく丸々とした艶やかな栗を手に入れたら、落ち着いて栗しごとができる日を選び、下処理を始めていきましょう。
生栗を手に入れたらすべきこととは…?
栗はスーパーや田舎の道の駅、山、お取り寄せなどさまざまな方法で手に入れることができますが、時々虫食いがあるので、栗しごとのはじめにはそのチェックが必要です。
栗の表面をざっと洗い、ボウルに栗を入れて水を栗の表面から5cmほど上くらいまで注ぎ、しばらく漬けておきます。
この時にボウルの底に沈まず、ぷかっと浮いてきた栗は内部に虫がいたり、栗の水分がなくなってしまっているため、取り除きましょう。
鬼皮の表面に黒い点のように穴があいているものも虫食いがあるので取り除きます。
そのまま下処理を行うのであれば、一晩水に漬けたままにしておきましょう。鬼皮を剥きやすくするためです。
下処理の工程は…?時間のある時にやろう
それではいよいよ下処理の工程をご紹介します。
栗しごとは皮の処理も大変であれば、作るメニューによってはさらにそこからとても時間がかかるものもあり、とにかく全体的に「大変」なイメージがあります。
下処理などは簡単な方がよく、人それぞれでさまざまな下処理の方法があります。
また、その後作るメニューによって、茹でてから皮を剥くケースと、茹でる前に皮を剥くケースがあります。
茹でる前の栗の鬼皮と渋皮両方を剥く場合
栗ごはんやメインディッシュなどで他の食材と一緒に調理する場合、茹でる前の栗の鬼皮・渋皮ともに剥いてから使用することが多いです。
生栗は水に一晩漬けておき、鬼皮を剥きやすく柔らかくしておきます。
栗の底のザラザラの部分にナイフを入れ、下の方は切り落とし、そこにナイフをあて、鬼皮を上に引き上げて剥きます。
鬼皮が全部剥けたら、次に渋皮を野菜の皮を剥く要領で剥いていきます。
茹でる前の栗の皮を渋皮を残して剥く場合
料理によっては渋皮は剥かずに調理する場合があります。鬼皮だけ剥く方法は以下の通りです。
まずはボウルに栗と水を入れて一晩漬けておき、鬼皮を柔らかくしておきます。
栗の下側のザラザラしたお尻の部分はツルツルの部分よりも皮が柔らかいため、ザラザラ部とツルツル部の境目あたり、ぷっくり膨らんだ側にナイフで切目を入れ、そのまま鬼皮の上に親指を添え、上にナイフを引き上げていくように剥きます。
底のザラザラの部分だけ硬い鬼皮が残っていますね。
渋皮は一部分めくれてしまうと、その後茹でたりすることで簡単に他の部分もめくれてしまいます。
底の部分も渋皮としっかりくっついていますが、注意深くナイフを入れ、鬼皮だけ剥くように集中してください。
茹でてから皮を剥く場合
茹でてから皮を剥く場合は皮が生栗の状態よりも柔らかくなっているので剥きやすくなっています。
その後に何を作るかで茹で時間が異なるため、あらかじめレシピなどをチェックしておきましょう。
鍋に水・栗・塩(水500ccにつき小1程度)を入れて火にかけ、沸騰したら弱めの中火で30分~50分ほど茹でます。
栗が小粒の場合は30分程度、大粒の場合は50分程度です。
時間が来たら火を止めてお湯ごとそのまま粗熱がとれるまで置いておき、粗熱がとれてまだ温かいうちに(冷めると剥きづらくなる)皮を剥いていきます。
剥き方は底のザラザラ部を切り落とし、鬼皮を上に引き上げて剥き、その後渋皮を野菜の皮を剥く要領で剥きます。
生栗で何を作る?おすすめメニュー
栗の下処理が終わったら、次はいよいよ調理です。
もしたくさんの栗があるなら、さまざまなメニューに分けて色々食べられると何重にも楽しめますね。
1…大人の香りの渋皮煮
栗の鬼皮だけ剥き、渋皮の部分は残したまま煮る渋皮煮。
洋酒の香るシロップごと瓶詰めで開けずに保存しておけば、半年以上置いても食べられる保存食となります。
大粒の立派な栗が手に入ったら、艶々光る丸ごとの渋皮煮を作ってみてください。
宝石のように仕上がった渋皮煮は贅沢なお茶請けにぴったり。
また、アイスクリームに添えたり、甘さを控えた生クリームなどともよく合いますし、そのままブレンダーなどにかければマロンペーストにもなります。
適量をペーストにし、適量をカットして両方使い、マロンサンドを作るのもこの時期ならではの贅沢な楽しみ。
まとめて作っておき、小分けにして保存瓶で保存しておけば、用途に応じて臨機応変に使用できます。
用意するもの
- 鬼皮だけを剥いた生栗 …500g
- 砂糖 …300g
- 重曹 …小1
- バニラビーンズ …4cmほど
- ラムやブランデー
- 保存容器
砂糖はグラニュー糖やてんさい糖、きび砂糖など、好みのもので大丈夫です。
作り方
渋皮煮は見た目も材料もシンプル。渋皮が少しでも剥がれてしまうと、煮崩れてしまうので渋皮が剥けてしまった栗は他のメニューで使いましょう。
また、前述の方法で下処理をしても良いですが、剥きづらければ熱湯に栗を5分程度付けて、まだ熱い時に鬼皮を剥く処理を試してみてください。
栗の下側のザラザラした部分からナイフの刃元で切り込みを入れて、鬼皮と渋皮の隙間からナイフを上に引き上げて剥きますが、剥きやすい上の部分でも鬼皮につられて渋皮が剥がれてしまうことがあるので、丁寧に注意をはらって剥いてください。
茹でこぼし(2~4回行う)
- 鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら鬼皮を剥いた生栗(渋皮が剥がれていないもの)と重曹を入れ、水面上部が少しふつふつと沸くくらいの火加減にし、アクを取りながら10分ほど茹でる。その間に別鍋で再び茹でこぼす用の湯を沸かしておく
- 1の栗をザルにあげ、別鍋に沸かしておいた湯に再び栗を入れて、アクを取りながら10分茹でる
- 最後の茹でこぼしが終わったら半量くらいの茹で汁を捨て、同量の水をたす
重曹は1回目のみ入れます。茹でこぼしの回数は茹でた時の水の色で変えてください。
黒っぽい茹で汁が、薄い透明感のある茶色になるまで茹でこぼします。
また、ザルにあげる時も渋皮に傷がつかないよう丁寧に行いましょう。
汚れを取り除く
数回の茹でこぼしを経て、茹で汁が綺麗な薄茶色になったら次の工程です。
渋皮に入り込んでいる硬いスジや繊維を竹串を使って掃除します。
渋皮に傷を付けないよう、竹串を上下に優しくこするようにして、繊維だけを取り除きます。
スジは竹串の先を使って、スジだけ綺麗に剥がすようにします。
栗を煮る
渋皮のアクを抜き、栗の掃除が終わったら栗を煮ていきます。
- 鍋に栗を入れ、ひたひたになるくらいの水・半量の砂糖・バニラビーンズを入れて火にかける
- 煮汁が沸騰し、砂糖が溶けたら残りの砂糖を加え、アクをしっかり取る
- アクが取れたらキッチンペーパーかクッキングシートの中央だけ穴をあけ、落し蓋をして弱火で20分ほど静かに煮る
- 20分ほどたち、煮汁がとろっとしてきたら火を止め、そのまま冷ます
- 完全に冷めたらラムやブランデーなど好みの洋酒を好みの量入れて完成
保存瓶で保存
たくさん作った場合は保存容器に小分けにすることをおすすめします。
アルコールを入れたもの・入れてないものなどと分けておくと用途に応じて使うことができます。
- 保存容器を煮沸する。瓶だけでなく蓋も一緒に、15分ほど煮沸し、キッチンペーパーの上に並べ、水気が完全になくなるまで置く
- 渋皮煮に火を入れる。沸騰したらまず栗を瓶に入れ、そのあと煮汁をひたひたに入れて軽めに蓋をする(蓋がかむ程度・7~8割くらい)
- 鍋に瓶の高さの8割程度が浸かる高さの湯を沸騰させ、瓶を立てて鍋に入れ、15分ほど中火で煮沸する
- 鍋から瓶を取り出し、蓋をしっかり閉めて瓶を逆さにして立て、そのまま常温までさます
- 蓋の中央がペコッとへこんでいたら密閉が成功。常温で半年以上持ちます
砂糖でとろみがしっかりついたシロップ(煮汁)であれば、半年以上、1年程度でも常温保存が可能。
開封したらそれほど持たないので、早めに使い切りましょう。
また、栗がしっかりシロップに浸っていないとこの方法では常温保存できないので、シロップはしっかり入れましょう。
上のレシピでは、全量を長期保存する場合はシロップが足りなくなると思われるので、その場合はシロップだけ別に作ります。
2…調理工程1週間!冷凍もできる渋皮付きマロングラッセ
マロングラッセは洋酒香る贅沢でリッチなお菓子。
栗のおいしさが洋酒と砂糖のシロップで何度もコーティングされ、なんともいえない幸せの味です。
渋皮煮もとてもおいしいですが、ねっとりしたマロングラッセも最高ですね。
栗を手に入れてから栗しごとを始めて、マロングラッセが完成するまでにはなんと1週間かかります。
1週間の工程でも、一番大変なのははじめの鬼皮を剥くところといえます。
大まかにいうと、鬼皮剥き→アク抜きの茹でこぼし→栗の掃除→砂糖のシロップで煮る(数日繰り返す)という工程です。
用意するもの
- 栗 …1kg
- 砂糖① …650g
- 砂糖② …200g×4日分
- 重曹 …小1
- ラムやブランデー …50~100cc
砂糖は氷砂糖やグラニュー糖など好みのもので良いです。
作り方
栗の掃除までの工程は前述の渋皮煮と同じ作業ですが、こちらにも記述しておきます。
茹でこぼし(3~4回行う)
- 鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら鬼皮を剥いた生栗(渋皮が剥がれていないもの)と重曹を入れ、水面上部が少しふつふつと沸くくらいの火加減にし、アクを取りながら10分ほど茹でる。その間に別鍋で再び茹でこぼす用の湯を沸かしておく
- 1の栗をザルにあげ、別鍋に沸かしておいた湯に再び栗を入れて、アクを取りながら10分茹でる
茹でこぼしは茹で汁の色が綺麗に透き通った薄茶色になるまで行うこと、重曹は1回目のみ入れることも渋皮煮同様です。
栗の掃除
こちらも渋皮煮の工程同様、竹串を使って渋皮の表面の細かい繊維を竹串をこすりながら取り、栗の実にくいこんでいる太いスジは竹串の先端を使って取り除きます。
水を流しながら手と竹串で繊維とスジを取り除くと、濃い茶色っぽく見える表面がつるんとし、薄い茶色になります。
つるんとして仕上がりの見た目も味わいのなめらかさもレベルアップするので、適当にせず綺麗に余計な繊維は掃除しておきましょう。
渋皮は傷つけないように気をつけてください。
コーティングシロップに漬ける
アク抜きと掃除が終わったら、コーティングの開始です。1日目の作業はもうすぐ終わりです。
- 鍋に掃除の終わった栗入れ、栗がかぶるくらいの水・砂糖①の650gを入れて火にかけ、砂糖が溶けたら火を止める
- 砂糖の溶けた水に栗を漬けたまま、1日放っておく
2日目の作業
- 鍋の中の栗を全部取り出し、シロップだけを火にかけ、半分くらいの量になるまで煮詰める
- 半量ほどになったら火を止め、熱いシロップの中に取り出した栗を戻し、そのまま1日放っておく
3日目~5日目の作業
3日目~5日目の作業は毎日同じです。
- 鍋の中の栗を取り出し、砂糖②の200gを鍋の中のシロップに加え、火にかけて砂糖を溶かす
- 砂糖が溶けたら火を止め、熱いシロップに取り出した栗を戻してそのまま1日放っておく
毎日栗を取り出して、シロップに砂糖を200gずつ足し、より甘いシロップを作ったらそこに栗を漬けておくだけです。
栗は煮る必要がないので、火にかけないよう気をつけましょう。
6日目の作業
- 6日目は栗を取り出さず、栗入り鍋に砂糖200gを加え、火にかける
- シロップのとろみが強くなったら火を止め、常温まで冷めたらラムやブランデーなど好きな洋酒を入れ、そのまま1日放っておく
7日目の作業
いよいよ最終日。
- 最後の日は砂糖を足さず、栗入り鍋を火にかけ、温める
- 熱いうちに栗を一粒ずつ網にのせ、シロップが乾くまで置いておく。乾いたらマロングラッセ完成
1日目は大変ですが、その後は時間がかかるものの作業工程は簡単です。
冷凍の方法
マロングラッセは冷凍保存が可能。一粒ずつラップにくるみ、ジップロックなどに入れて冷凍しましょう。
3…栗ごはん
大きな栗がゴロゴロとたくさん入った優しい味わいの栗ごはんは、栗のメニューの大定番。
秋が来たら一度は食べたいものです。
同じく秋の味覚である焼いた秋刀魚、松茸などと一緒に食べたりしたいですね。
用意するもの
- 鬼皮・渋皮ともに剥いてある生栗…好きなだけ
- 白米 …3合
- だし汁 …3合分
- 昆布(5cm四方程度) …1枚
- 塩 …少々
- 酒 …少々
もしもち米があれば、白米の2割程度をもち米に変えるのもおすすめです。
もっちりしておいしいですよ。
作り方
- 栗の下処理の段階で鬼皮・渋皮ともに剥いたらすぐ水に漬けておく
- お釜に白米(もち米)を入れて研ぎ、1時間ほど浸水させておく
- 水をきり、3合分のだし汁を入れ、昆布と少々の塩を入れ、炊飯する
- 炊き上がったらお酒少々(風味づけ)を振りかけ、栗ごとざっくり混ぜて完成
栗は丸ごと入れても、食べやすいサイズにカットしても良いです。
丸ごとの栗がゴロゴロ入っていると気分的にも満足感が高まるので、食べやすくカットする場合も数粒は丸ごとの栗を残しておくと良いでしょう。
4…チキンときのこ、栗のクリーム煮
寒くなった秋の夜に食べたい感じのメニュー。
クリームのまろやかさ、きのこの香り、栗の甘みが一体となり、食べごたえもあるためメインディッシュとしておすすめです。
用意するもの
- 鶏もも肉 …2枚分
- まいたけ・マッシュルーム …好みの量
- 栗(皮を剥いたもの) …好みの量
- 玉ねぎ(みじん切り) …1/2個
- セロリ(みじん切り) …10cm
- バター …30~50g
- 小麦粉 …大3程度
- 生クリーム …200ml
- 塩こしょう
- ローリエ
作り方
- 鶏肉はスジを取り、唐揚げ程度の大きさにカットする。全体的に塩こしょうをし、30分ほど置いておく
- 鍋にバター・みじん切りした玉ねぎ・セロリを入れて炒め、全体的に油が回ったら鶏肉(あればローズマリー1枝も)を加えて炒める
- 舞茸やマッシュルーム・栗も加えて炒め、小麦粉を入れて全体に馴染ませる
- 生クリームを入れ、アクを取りながら煮る。指でちぎりながら切り込みを入れたローリエも加える。沸騰したら弱火にして30分ほど煮る
- 最後に味をみて、塩で調味して完成
パンやバターライスなどとよく合います。
お皿に盛った後、好きな人はシナモンパウダーを振りかけるのもおすすめです。クリームや栗とよく合いますよ。
手をかけただけ感じるおいしい旬の喜びを堪能しよう!
栗しごとは手間がかかりますが、その分できあがった時のおいしさは格別です。
ぜひこの時期ならではの栗しごとをし、おいしい秋の味覚を堪能してください。