もくじ
16時間断食の原理とは?
最近よく耳にする、16時間断食。そもそもどういったものなのでしょうか。
簡単に言えば、「16時間はものを食べず、空腹の時間をつくる」というものです。提唱したのは医学博士の青木厚さん。著書『「空腹」こそ最強のクスリ』で16時間断食について紹介しています。
空腹の時間をつくることがなぜ身体にいいかというと、まず、食べないことによって内臓の消化機能を休めることができるとされているからです。
人間が食べ物を口にしたあと、それらが完全になくなるまでにどのくらいの時間がかかるかご存じでしょうか?一説には、食べ物が胃の中に滞在する時間が約2~3時間、胃から小腸へ送られ、分解して栄養分を吸収し大腸に送られるまでに約5~8時間、さらに大腸で水分などが吸収され体外に便となって排出されるまでに約15~20時間とされています。つまり人間は、食事をすれば1日のほとんどの時間、内蔵を働かせていることになりますね。
そのため、意識的に空腹時間をつくることは内臓を休める手立てとなり得るのです。内臓を休めれば、また再度働き出すときにしっかりと栄養の消化・吸収ができるようになり、身体全体のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
また空腹時間をつくることは、血糖値を下げる効果が期待できるとされています。
近年の食事には多くの糖質が含まれており、当然、糖質が高ければ血糖値は上がりやすくなります。インスリンは血糖値を下げて体内のバランスを調整するといわれますが、あまりにも血糖値が高い状態が続くと、多くのインスリンが必要となり、インスリンを分泌する膵臓が疲弊してしまうのだそうです。
こうして膵臓が疲弊により機能しなくなってしまうと、血糖値を下げることができず、2型糖尿病になるリスクが高まるといわれています。糖尿病は現代病ともされ、他の様々な病気の誘因になる可能性があります。そのため、血糖値を上げすぎないことは大切とされているのです。
これらをふまえて編み出されたのが、16時間断食です。つまり16時間断食は、そもそも健康法として提唱されたのですね。
ではなぜ、16時間断食がダイエットや美容にもよいとされているかというと、16時間の空腹時間を設けることによって「オートファジー」の機能を利用できるからです。
オートファジーとは、細胞の古くなったタンパク質が新しくつくり替えられることとされています。このオートファジーは身体が飢餓状態となったときのみ働くようで、この飢餓状態となる最短の時間が16時間なのだそうです。
人間は基本的に糖を分解してエネルギーにしているとされており、空腹時間が10時間を超えると、肝臓に蓄えられた糖が尽き、次は脂肪を分解してエネルギーにしようと働くとのことです。この脂肪分解によって余分な脂肪が落ちることで、ダイエット効果も期待できるといわれているのです。
またオートファジーによって古い細胞が生まれ変わるとされているため、老化防止にもつながります。肌質改善など、美容への効果も期待できるでしょう。
正しい実践方法とは?
「16時間も空腹なんて、耐えられるの?」と疑問に思いますよね。ここからは、実際に実践する際のポイントをお伝えしていきます。
就寝時間を利用するのが最適
16時間というと1日の2/3もの時間にあたり、とても長く感じるのではないでしょうか。しかし、人間の睡眠時間を平均7時間とすると、これはおよそ1日の1/3にあたるのです。
16時間断食は、睡眠時間を利用するのが一番楽に取り入れられる方法です。睡眠時間を仮に8時間とすれば、前後4時間を食べずに過ごすことで、16時間の断食を達成できてしまいますよ。
このように考えれば、意外とできる気がしてきませんか?後半で実際の時間スケジュール例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
毎日でなくとも効果は得られる
仕事の関係などで、毎日実践することは難しい人もいると思います。そのような人は、休みの日だけでも挑戦してみてください。週に1回の実践でも、内臓機能を休めて体調を整えることにつながります。また続けるうちに空腹に慣れていくので、生活の中にうまく取り入れていくきっかけとなるかもしれません。
即効性を求めたり、無理をして続けたりしても挫折してしまいます。じっくりと時間をかけ、自分の生活に合った方法を探していきましょう。
16時間の断食中、水以外で口にしてもいいものは?
16時間断食における前提として、断食時間中も水分は必ず摂取しなければなりません。水分をとらなければ脱水状態となり、身体にとってかなり危険です。
16時間の間でとる水分は、糖分が入っていなければOKです。水や白湯はデトックス効果もあるとされており最適ですが、お茶やコーヒー、紅茶なども無糖を選べば飲むことができます。
しかしまだ慣れていないうちは、どうしても16時間の空腹に耐えられない人もいるでしょう。そのような場合は、糖質を最小限にしたスムージーや具なしの味噌汁、ナッツ、無糖ヨーグルト、生野菜などを食べましょう。200キロカロリー以内に抑えれば、断食への悪影響はそれほど気にしなくて大丈夫とされています。
断食中以外は好きなものを食べてOK!あくまでもバランスは考えて
16時間の断食時間中以外は、基本的に何を食べてもよいとされています。ラーメン、牛丼、ピザ…。好きなものをしっかり食べましょう。しかし、かといって毎日のようにジャンクフードなどを食べていては元も子もありません。
5大栄養素である、糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルをできるだけバランスよく摂取することが大切です。意識さえすれば、時々はジャンキーなものやケーキなどのお菓子も食べてOKですよ。
断食に加えて食事内容まで厳しく制限しすぎてしてしまうと、ストレスとなり継続が難しくなるばかりでなく、ストレスによる身体への悪影響も出る可能性があります。最低限のルールを守り、適度に力を抜いて続けることが、なによりも効果を実感するためのポイントです。
16時間断食における注意点
16時間断食には注意点もあります。事前にしっかりと把握し、身体への負担を減らしましょう。
断食時間中、体調が悪くなったらすぐに中止する
16時間断食はメリットもたくさんありますが、体質や生活リズムなどによって、相性には個人差が大きく出ます。少量の食事を複数回に分けて食べた方が身体の調子がいい人や、活動内容的にしっかりとエネルギーをとらないといけない人もいます。またそうでなくとも、16時間断食を始めたばかりのころは、空腹に慣れていないことから、気分が悪くなったりイライラしたりすることがあります。過度の低血糖に陥ると、ふるえやめまいといった症状が現れることがあります。
安静にしていても体調に異常を感じたら、すぐに中止して栄養分をとりましょう。無理に続けることは身体にとって危険であり、その後の体調回復を遅らせることにもなります。
16時間の断食で体調悪化を感じた場合は、はじめは16時間にこだわらず、睡眠時間の8時間+前後2時間の合計12時間くらいから慣れていくようにするなどの工夫をしてみましょう。少しずつ身体が空腹に慣れてきたら、1時間ずつ伸ばしてじっくりと16時間に近づけていけばよいのです。
健康のために行ったはずの断食で体調を悪化させてしまったら、本末転倒です。個人差や、日々のちょっとした具合によっても体調は変わります。自分と向き合い、身体と相談しながら無理なく実践しましょう。
血糖値の急上昇に注意
身体に栄養を入れない時間は血糖値が下がっていきます。16時間の断食時間の終盤には、通常かなりしっかりと血糖値は下がっている状態といわれています。
その身体にいきなり糖質や脂質の高いものを入れてしまうと、急激に血糖値が上昇してしまいます。血糖値の急上昇は、異常な食欲を招いたり眠気を引き起こしたりします。また進行すると、血管へダメージを与え、病気になるリスクが高まるとされています。
断食時間以外は基本的に何を食べてもよいとされていますが、はじめに口に入れるものは、身体への負担が少ない野菜類や低糖質・低脂肪の食べ物がよさそうです。特に始めたばかりのうちは、身体が慣れない空腹時間を乗り越えたばかりで飢餓状態の影響が強いので、少し気をつけてみてください。
16時間断食は、継続するうちに血糖値の乱れも少なくなることが期待されます。先述した低血糖症状のふるえやめまい、血糖値上昇の食欲増進や眠気を念頭に置き、自分の身体の変化をみつめてみましょう。
筋肉が落ちやすい
断食において影響を受けてしまうのが筋肉といわれています。筋肉は、適度な運動と外部からの栄養をもとに構築されます。断食は意図的に外部からの栄養分を遮断している状態なので、それだけで筋肉は落ちていきやすくなるのです。
筋肉が落ちると、見た目上の身体の引き締まりがなくなるだけでなく、疲れやすくなったり病気やケガのリスクが上がったりと、健康への悪影響が出やすくなってしまいます。そのため16時間断食をする際には、いかにして筋肉を維持するかが大切になります。
できれば、断食時間中以外で軽い運動や筋トレをしましょう。無理をする必要はありません。自宅で数分、身体を動かす意識をするだけでも、何もしないのとはかなりの違いが出ます。筋肉があった方が代謝がよくなり脂肪が燃えやすく、ダイエット効果も高いといわれています。ぜひ少しでも運動を取り入れてみてくださいね。
16時間開けるための具体的な生活スケジュール例
では実践に向けて、実際のスケジュール例をご紹介します。ご自身の生活スタイルに当てはめて参考にしてみてください。
時間を自由にコントロールできる人
一番おすすめのスケジュールがこちら。
- 断食時間:午後8時~翌日昼12時(16時間)
- 食事可能時間:昼12時~午後8時(8時間)
時間の過ごし方としては、以下のようになります。
- 午前8時に起床、昼12時まで空腹(断食時間:4時間)
- 昼12時に昼食、午後8時までに夕食を済ませる(食事可能時間:8時間)
- 午後8時から深夜12時まで空腹(断食時間:4時間)
- 深夜12時から午前8時まで就寝(断食時間:8時間)
このスケジュールが、一番無理なく実践できるとされています。時間に縛りのない方は、まずこの方法で実践してみることをおすすめします。
仕事が忙しく、帰宅が遅い人
帰宅が遅い人は、以下のようにしてみてはいかがでしょうか。
- 断食時間:午後10時~翌日午後2時(16時間)
- 食事可能時間:午後2時~午後10時(8時間)
スケジュール例は、以下のようになります。
- 午前7時に起床、仕事へ向かい午後2時まで空腹(断食時間:7時間)
- 午後2時に昼食、帰宅後、午後10時までに夕食を済ませる(食事可能時間:8時間)
- 午後10時から午前1時まで空腹(断食時間:3時間)
- 午前1時から午前7時まで就寝(断食時間:6時間)
仕事が忙しいと、昼食も遅めになる傾向があるかと思います。それを断食時間として利用してしまいましょう。午前の仕事のパフォーマンスが落ちるようなら、先述した「断食時間中に口にしてもよいもの」を少し身体に入れてもかまいません。
朝型の生活が合う人
朝型生活をしており、朝はしっかりと食べたいという人には、以下のスケジュールを提案します。
- 断食時間:午後4時~午前8時(16時間)
- 食事可能時間:午前8時~午後4時(8時間)
スケジュール例は、以下のようになります。
- 午前5時に起床し、午前8時まで空腹(断食時間:3時間)
- 午前8時に朝ご飯、午後1時ごろに昼食
- 午後4時までなら少しの間食OK(ここまでで食事可能時間:8時間)
- 午後4時から午後9時まで空腹(断食時間:5時間)
- 午後9時から午前5時まで就寝(断食時間:8時間)
早寝早起きの人はこのスケジュールに当てはめると考えやすいのではないでしょうか。これもまた同様に、断食時間中の夜、空腹に耐えられなくなったら、「断食時間中に口にしてもよいもの」を少し摂取してもOKです。
正しい16時間断食で、身体の生まれ変わりを実感しよう!
健康に加え、美容やダイエット効果も期待できる16時間断食。しかし一歩間違えれば、身体への危険を招くおそれもあります。身体を守るためにも、正しい知識をもち、正しい実践方法で行いましょう。
また何よりも大切なのは、自分の身体と向き合うこと。体質や体調をしっかり見極め、無理せず少しずつ始めていきましょう。
継続すれば、きっと身体の生まれ変わりを実感できるはずです。空腹をコントロールできるようになると、自分への自信にもなります。ぜひ一度、挑戦してみてくださいね。