もくじ
近年では、白湯を生活に取り入れる人が少しずつ増えています。
朝起きてから3食の食事中・就寝前で1日にトータル800ml~1000mlくらいの白湯を飲むことが基本となっています。
白湯に期待できる健康効果を解説する記事はネット上でさまざまにありますが、さらに良い効果が期待できるのが「南部鉄瓶」を使って白湯を沸かすこと。
今回は南部鉄瓶について、また南部鉄瓶で沸かした白湯を飲むことで期待できる効果やメリット・鉄瓶の選び方ついて解説します。
南部鉄瓶とは?
「南部鉄器」という岩手県を代表する伝統的な工芸品があります。
盛岡市・奥州市で17世紀頃から造られている鋳鉄物であり、鍋やフライパン・急須などさまざまな製品がありますが、「南部鉄瓶」はその中のひとつで、「お湯を沸かす」ことに特化しています。
鋳鉄製品は鋳型に溶かした鉄を流して造られるのですが、鉄瓶ひとつを創る工程は60以上もあり、ほとんどが手作業で行なわれ、一人前になるまで最低15年かかるといわれるほど、熟練した技術が必要なものです。
鉄鍋や鉄フライパンなどを使用して料理し、少し置いておくと「鉄臭さ」が気になることがあります。
鉄分がとれると聞いて鉄の調理器具にしたけど、あの匂いが苦手…という声が時々聞かれます。
しかし、「南部鉄器」を使用した場合、その「金気」は鍋やフライパンでも鉄瓶でも全くといっていいほど感じられません。
鋳鉄物に水気を残すとサビの原因となるため、水気を飛ばしたり、初めて使用する時には行う必要のある工程という手間があるのですが、お手入れを適切に行い、大事に使えば「一生物」となります。
現在ではさまざまな南部鉄器の調理器具がある
現在では和食だけでなく洋食や中華など日常的にさまざまな食事文化があり、アウトドアなどの非日常を楽しむ人も多く、個人ごとで必要とする調理器具が異なります。
南部鉄器でもそんなニーズに合わせて、スキレットやホットサンドメーカー、ダッチオーブン機能をもつ鉄鍋など現代ならではの商品が販売されています。
炊飯用・すき焼き用・ワッフルやアップルパイメーカー・たこ焼き器・アヒージョ鍋など本当にさまざまな料理に対応して作られており、おいしく仕上がるのが人気の理由。
焦げつきにくく、鉄分を自然に摂取でき、おいしく仕上がり、大事に育てていけば孫の代まで使える職人技の賜物である南部鉄器は、使うほどに魅力を感じる製品なのです。
南部鉄瓶で沸かした白湯のすすめ・メリットとは?
「白湯」というのは、何も入れず沸かしたお湯のことです。
浄水であれば電気ケトルやレンジで熱を入れ、適温に冷ませばいいですし、水道水であればヤカンや鍋で沸騰させ、沸騰後10分~15分弱火にかけて、水に含まれるカルキを抜きます。
白湯はなぜ身体にいいと言われるの?
白湯はなぜ身体にいいと言われるのでしょうか。白湯に期待できる健康効果には以下のことがあります。
- 内臓や身体を温める
- 便通をよくする
- 新陳代謝を促す
- デトックス効果
- ダイエット効果
身体に負担のない白湯は、適温(40度~70度)で飲むことで、内臓や身体をじんわり温めてくれます。
そうすることで内臓の働きが良くなり、その結果便通の質が良くなったり、新陳代謝を活発になったりし、デトックスに繋がるといわれます。
また、食事中に飲むことで、消化力を高めるともいわれています。
特に起きぬけで飲む白湯は身体に染みわたり、ゆっくりと身体を起こしてくれるので、気持ちの良い朝活のひとつといえるでしょう。
南部鉄器で沸かした白湯は本当にまろやか
ではそんな白湯を南部鉄瓶で沸かすと、何がいいのかというと、まず一番にいえるのが「本当にまろやかになっておいしい」というものです。
さまざまな種類の調理器具がある南部鉄器ですが、もっともシンプルな使い途である湯沸かしのための鉄瓶は、南部鉄器を代表するものといえます。
料理にはさまざまな工程があり、食材や調味料で仕上がりが異なりますが、鉄瓶でお湯を沸かすだけ、という工程でできあがりの味を変化させるには「道具と使い方」しかありません。
南部鉄瓶で沸かしたお湯を飲んだことのある人は、「ただのシンプルなお湯が本当にとろんとしてまろやかになる」 と思ったのではないでしょうか。
お湯の味に関して、どれほどの人が意識しているのかは分かりませんが、たとえばケトルで沸かした白湯の味に慣れている人が南部鉄瓶を使ったら、大きな違いを感じずにいられないのではないかと予測できるほどおいしいのです。
白湯だけでなく、南部鉄瓶で沸かしたお湯で日本茶やハーブティーを作っても、とにかく「とろんとして丸みのある味」に仕上がります。
自然な鉄分摂取が期待できる
南部鉄器や鉄瓶が人気のある理由として、おいしく仕上がるだけでも十分なのですが、人気のある別の理由として「鉄分補給への期待」というものがあります。
鉄には身体に吸収されにくいもの(三価鉄)と吸収されやすいもの(二価鉄)があり、南部鉄器から料理やお湯に溶け出す鉄分は吸収されやすい二価鉄。
貧血に悩む女性は少なくありません。鉄剤で鉄分を補うほどであれば、医者の指示に従う必要がありますが、ちょっと不足気味かな…という場合、日常の中で自然に鉄分がとれれば嬉しいですね。
南部鉄器を数回使うくらいではまるで効果を期待できないと思いますが、日常的に白湯は南部鉄瓶で・料理は南部鉄器で、と生活道具の一環とすれば、一度では微量でも、積み重なって鉄分補給が期待できます。
南部鉄瓶はどう育てていけばいい?
南部鉄瓶は一生かけて育てていけるもの。
日々の中で定期的に鉄瓶でお湯を沸かしていると、およそ1ヶ月前後くらいで内部に「湯あか」といわれる、褐色や白の斑点が浮き出てきます。
これは悪いことでなく、むしろ鉄瓶が育っている証拠で、この湯あかがその後も使い続けることでより育ち、鉄瓶の中でミネラルを作り出すもととなるのです。
南部鉄瓶のマニアなどは、上質な湯あかを育てるために試行錯誤するほど。
長年使った南部鉄瓶の内部は、中が湯あかで真っ白になるのですが、この湯あかでもっと味がおいしく、よりまろやかになるといわれています。
これはNG!やってはいけないこととは?
南部鉄瓶を使うにあたって、やってはいけないことは以下のとおりです。
- 空焚き
- 水気を残す
- サビが出たからといって、ゴシゴシこする
この3点は南部鉄瓶のNG3大項目。鉄の大敵はサビです。沸かした後、そのまま放置したり、水で洗って拭かずに放置するのは避けるべきです。
そして、サビが出たからといって、慌ててサビをゴシゴシ擦るのもNG。南部鉄器のメーカーでは、赤サビが出ても、沸かしたお湯に金気や色がつかなければ大丈夫と謳っています。
空焚きもサビを作りやすくなるためやめましょう。
この他のNGポイントは以下のとおりです。
- 洗い場の下など、湿気のたまりやすい場所での保管
- 油ハネが多い場所に置くこと
- 洗剤で洗う
- タワシなどでゴシゴシ洗う
- 沸かしたお湯は全部出し切る
鉄瓶はお湯を沸かすためのものです。お湯を沸かして残らず別の容器へ注ぎ、水気が残っていれば拭き取り、風通しのいい汚れない場所に置くようにしましょう。
日常のお手入れとサビ対策
日常的なお手入れとしては、前述のとおり水気を残さず(とくに注ぎ口は水気が残りやすい)、風通しの良い場所で保管するだけですが、それでも気づかない場所に赤サビができていることがあります。
赤サビができても金気がなく、色もついていなければ気にする必要はありませんが、気になるほどのサビができてしまったら、緑茶(番茶や煎茶)や紅茶を沸かし、15分ほど火にかけます。
こうすることで緑茶や紅茶のタンニンが赤サビを落とし、サビ防止もしてくれます。
南部鉄瓶初心者…。どの鉄瓶を選べばいい?
南部鉄瓶といえば基本的に黒く、模様もサイズもさまざまで、お気に入りを探すのも楽しいものです。
カラフルな南部鉄器は海外の人にも大人気
黒で統一された南部鉄器・鉄瓶ですが、形やデザインには遊び心があり、海外の人からすると「スタイリッシュな和モダン」にも見えます。
近年、禅や茶道などは特に「おしゃれなアジアンスタイルのひとつ」として憧れる人は一定数いるようで、海外にある「和カフェ」は人気があります。
そのような「日本のお茶文化」をより人気にしたのが、南部鉄器のカラフルな急須。
おしゃれな数種類のモダンカラーが彩られた「南部鉄器の急須」はジャポニズムに惹かれる人の心をグッと掴み、パリなどでとても人気になりました。
急須内部はホーロー加工されているので、鉄分補給は期待できませんが、見た目はとてもかわいくておしゃれです。
ちょっと珍しいかわいいものが好きな人への贈り物や、母の日のプレゼントとして人気のある商品です。
やっぱり鉄を吸収したい人にはホーロー加工のないものがおすすめ
南部鉄器への入りとしては上記のカラフル急須も良いですが、やはり南部鉄瓶の本領を経験してみたい、という人には内部がホーロー加工されていない鉄瓶をおすすめします。
デザインは好みを重視しましょう。
サイズは要検討です。鉄瓶で沸かしたお湯を保温できる何かにうつすのであれば、それなりの容量のものを購入して一気に沸かしてしまうのもいいでしょう。
反対に、都度ごと沸かしたい人や、一人~二人暮らしであれば、大きなサイズは必要ありません。
各メーカーで、オンラインショップが用意されているところであれば気に入ったデザインやサイズを選んで購入するのは手軽ですし、コロナ禍の今では難しいかもしれませんが、工房を訪ねてみてとっておきを探すのも楽しいでしょう。
南部鉄瓶は一生かけて育てていこう
自分のお気に入りの鉄瓶を手に入れ、お湯を沸かすと少々の手間や時間が気にならなくなるほどのおいしさに気づくと思います。
使い続け、育った鉄瓶は湯あかがついて年月を感じるものですが、それもまたより白湯をおいしくし、魅力となります。
ぜひお気に入りの鉄瓶を手に入れ、大事に育ててみてください。