もくじ
コロナソムニアとは?
コロナウィルスとインソムニア(不眠症)の造語「コロナソムニア」。新型コロナウィルスのパンデミックによって、不眠症に悩む人の数が急増しています。SNSでも「can't sleep(眠れない)」のハッシュタがトレンド入りするなど、コロナソムニアに悩む人は世界中にいます。
医療技術会社「フィリップス」が発表した2021年の調査によると、日本の回答者のうち48%(およそ2人に1人)がコロナによって睡眠に影響が出たと答えています。ストレスを受けたと回答した人が44%、精神的健康にネガティブな影響を与えたと回答した人が38%、身体的健康にネガティブな影響を与えたと答えた人は27%でした。
また、男性よりも女性のほうが高い影響を与えていると感じる人が多いことがわかっています。
不眠が招くリスク
睡眠は健康に重要で、よい睡眠は私たちの体が最前の状態で機能するのをサポートします。快眠は生産性の鍵でもあり、翌日にフレッシュな状態で仕事を始められるのと同時に集中力も保ってくれます。
睡眠不足に陥ると、さまざまな問題に直面することが多くの研究では明らかになっています。
集中力が続かない
睡眠不足の状態では、集中力は続きません。睡眠をとらないと作業する時間は増えますが、生産性には欠けてしまいます。
アメリカ睡眠医学会による調査で、睡眠不足の状態で授業を受けていた学生は、しっかりと睡眠をとっていた学生よりも、成績が低いということがわかりました。
睡眠不足になると、頭頂葉と前頭前皮質のグルコースが12〜14%減少します。頭頂葉と前頭前皮質は重要な脳の領域で、正しい判断をしたり、区別するときに1番働く部分。頭頂葉と前頭前皮質のグルコースが睡眠不足によって減少することで、判断力が鈍くなりミスをしてしまうようなことが起きてしまうのです。
良好な人間関係が築けなくなることも
感情を落ち着かせることは、仕事場の人間関係においても、大切な誰かとの関係においても重要です。感情を落ち着かせ冷静に考えることで、動揺しているときよりも良い答えを出すことができる可能性が高まります。
アイオワ大学の研究によると、睡眠不足の人は、しっかりと睡眠をとる人よりも、怒りっぽく攻撃的になることがわかりました。
研究は2日間にわたって行われ、睡眠を制限された被験者と、睡眠をしっかりとった被験者を比較しました。被験者全員に嫌な音を流しながら困難な作業をさせ、どういった反応をするか観察すると、睡眠を制限していた被験者は作業中に怒りをあらわにし、騒音に適応することができなかったそう。
十分な睡眠が取れないと、感情的な動揺を抑える能力が損なわれます。私たちは怒りを制御することが難しくなり、他人を標的として非難する可能性が高くなるのです。
コロナソムニアを予防・改善する習慣!
1. 太陽の光を浴びる
日光を浴びることにより、セロトニンと呼ばれるホルモンが脳から放出される割合が高くなります。セロトニンは、気分を高め、落ち着きや集中力を促すホルモンのこと。夜になり、照明が暗くなると脳はメラトニンと呼ばれる別のホルモンを作るようになります。
日光を十分に浴びないと、セロトニンレベルが低下する可能性があり、ストレスを感じやすくなるなど心の健康に悪影響を及ぼすリスクが高まります。
日光を毎日浴びると、睡眠のリズムを整えることも可能です。睡眠のリズムがバラバラだと感じる人は、1週間同じ時間に起床・就寝し、朝起きてから数分間、日光を浴びることを続けてみてください。
ベランダに出て太陽の光を浴びながら水を飲むのでもよし、太陽の光が差し込んでいる部屋を見つけて、音楽を聴きながら寝そべるのでもよしです。積極的に太陽のエネルギーを取り込んで気分をあげましょう。
2. 瞑想をする
瞑想には、不眠症を改善させる効果があることがわかっています。アメリカの睡眠医学会が発表した研究では、不眠症を抱える人に2ヶ月にわたって瞑想をしてもらったところ、「眠りにつくまでの長さ」「睡眠時間のトータル」「眠りについた後に目が覚める回数」「睡眠の質」「気分の落ち込み」が改善されたことが明らかになりました。
コロナによる不安で眠れない場合には、瞑想をして不安を解放してあげましょう。不安になるのは仕方ないことですが、良質な睡眠を得るためにも不安をベッドまで持ち込むのは避けたいところ。ベッドの中で「心のおしゃべり」が始まってしまい、なかなか寝付けないといった悩みを抱える人は少なくありません。
日々の瞑想を通して、自分の呼吸や身体など「今この瞬間」に意識を向ける訓練をしていきます。瞑想はすればするほど神経細胞のつながりが強化され、穏やかな気持ちが形成されていくため、瞑想を習慣化させることが大事です。瞑想を心得ていると、ベッドに入った途端に始まる心のおしゃべりを自分でコントロールすることができます。
おすすめはベッド瞑想!
ベッドに入った瞬間、頭のなかのおしゃべりによって眠れなくなってしまう方は「ベッド瞑想」がおすすめ。ベッド瞑想とはその名の通り、ベッドで瞑想をすることです。
<ベッド瞑想のやり方>
- 部屋の電気を消す・トイレを済ませるなど環境を整える
- ベッドに横になりまぶたを閉じる
- 足を肩幅に開いて力を抜く
- 呼吸に合わせて腹部を上下させる
ベッド瞑想に慣れていない方は、はじめのうちは瞑想アプリなどの力を借りるのがおすすめですよ。アプリが誘導してくれるほうが、頭のなかで無駄なことを考えずに集中できるという方も多いため、ぜひお試しを!
3. 人とのつながりを持つ
コロナの影響を受けて、改めて人とのつながりの重要性を感じた人は多いのではないでしょうか。筆者は家族や友だちとの時間のなかでも、とくに抱える不安を言葉にすることがどれだけ心を落ち着かせてくれるのかを感じました。
これは、心のなかに溜まっていた、言葉にできないモヤモヤした感情を吐き出し解放することで、不安が収まったり緊張が解けたりする効果「カタルシス効果」によるものだそう。
不安について話すだけではなく、ショッピングや散歩など大切な誰かとの時間は、私たちに充実感とともに幸せをもたらします。
ストレスを感じると、人とのつながりを求める感情が大きくなります。オキシトシンと呼ばれるホルモンが、脳の下垂体から分泌され、社会的な絆を強化させる気持ちが強くなります。このオキシトシンがたくさん分泌されると、人と触れ合ったり、会話をしたり、一緒に時間を過ごしたいなど、人とのつながりを求める気持ちが強くなるのです。この気持ちを無理に抑制してしまうのは、ストレスにつながってしまいます。
遠くに暮らす家族や、支え合う仲間、愛するパートナーの声が聞きたくてたまらないときは、ストレス反応によってオキシトシンが分泌されており、助けを求めている証拠。この反応を受け止めて、心に思い浮かんだ人たちと積極的に連絡を取り合いましょう。
コロナ禍で人とのつながりをつくりにくい状況であっても、心の健康のためには、工夫を凝らして感染予防をしながら人とのつながりを持つことが大事です。オンライン上のコミュニティに参加してみたり、オンラインイベントに参加してみたり、積極的に家族や友だちなどとオンライン上であっても「読書会」や「リモート映画鑑賞」などイベントを計画して、一緒に時間を過ごしてみてくださいね!
4. スクリーンタイムを減らす
眠る前にスマホやパソコン、テレビなどの電子機器を使用しないよう心がけることで、眠りにつきやすくなるのに加え、質のよい睡眠を手に入れることができます。
ニューヨーク州にあるレンセラー工科大学のチームは、スマホの画面から出る光が、夜間に出るメラトニンの量を抑制することを明らかにしています。夜にスマートフォンを使うと、体内時計が変わり、睡眠サイクルも崩れます。これが習慣化してしまうと、生活習慣病の可能性を高めるなど、深刻な病を負うリスクが高まるとのこと。
さらにスマートフォンは、ドーパミンと呼ばれる探究心を向上させる物質を分泌させ、睡眠を妨げてしまいます。注意力や集中力を高めるドーパミンの効果が出てしまうと、私たちはなかなか眠れなくなってしまったり、睡眠時間が短くなったりする恐れがあります。
よい睡眠を手に入れるには、眠る90分前はスマートフォンなどの電子機器から距離をおくようにしましょう。そうすることで、メラトニン(眠気を引き起こす作用を持つホルモン)とコルチゾーンと呼ばれるホルモンのレベルが正常に戻り、眠りにつきやすくなったり、質のよい睡眠を手に入れたりできるでしょう。
5. ソーシャルメディアやニュースサイトなどから離れる
ソーシャルメディアやニュースサイトでは、コロナに関する情報をすばやく手に入れることができ、世界で何が起きているのかをいち早く知ることができます。情報を得ることで自分や大切な誰かを守ることができますが、ひっきりなしに出るコロナのニュースに嫌気がさしている場合や、ニュースをみる習慣が睡眠にまで悪影響を及ぼしていると感じる場合は、長期間SNSやニュースサイトから距離を置くことも手段の一つです。
コロナ関連のニュースが、不安を駆り立てているとわかっているものの「まったく情報に触れないのは難しい!」という方も多いはず。そういった場合には、以下の方法を試してみることをおすすめします。
・ニュースを取り入れる時間を決める
コロナに関する情報を何でもかんでも鵜呑みにするのではなく、注意して内容を選ぶことが大切です。誤った情報を発信しているサイトがあったり、事実が曖昧な内容がSNSなどで広がることが多々あります。コロナに関する情報は、立て続けに更新されており、SNSによって古い記事が拡散されることで、結果的に「誤った情報」が人々に届いてしまうこともあります。
誤った情報に振り回されてしまうのを防ぐために、保健当局サイトなど信用できるサイトから情報を得ることをおすすめします。
コロナに関するニュースを制御することも心の健康には重要です。コロナ関連のニュースをミュートしたり、テレビをみる時間を変えてコロナのニュースから距離を置いてみたり、コロナ関連のハッシュタグはクリックしないなど、自分なりに工夫をしてみましょう。
6. 心配事を紙に書く
コロナ禍で生活様式が変化し、行動にも制限がかけられているなかでストレスを感じることはあたりまえです。その不安やストレスを紙に書くことで、ストレスを発散することができることがわかっています。
テキサス大学の研究によると、感情的に大きな影響を受けた出来事を紙に書いたグループは、何気ない日常に関する内容を紙に書いたグループよりも、心身の健康がアップしたそう。あなたも辛い経験や心配事などについて紙に書くことで、健康な心を保つことができるかもしれません。
睡眠を見直して心の健康を守ろう!
新型コロナウィルスのパンデミックによって、不眠症に悩む人の数が急増しています。男性よりも女性のほうが、コロナによって睡眠にマイナスな影響が与えていると感じる人が多いことがわかっています。
コロナ禍で生活様式が変化し、行動にも制限がかけられているなかでストレスを感じることはあたりまえ。心の健康のために、その不安やストレスとどう向き合っていくかを私たちは考えていかなくてはなりません。
今回ご紹介した「コロナソムニアを予防・改善する習慣6つ」をぜひ参考にして、快適な睡眠ライフを送ってくださいね!