呼吸法を制する者は自律神経系を制す?呼吸で病気になりにくい体づくりを目指そう!

自律神経系の中で唯一、自分でコントロールすることができるのが「呼吸」です。心身の緊張や弛緩は、呼吸でコントロールすることができるといわれています。ヨガ八支則の一つのプラーナヤーマを紐解きながら、独自の呼吸法メソッドで病気になりにくい体づくりを行なっている事例についても紹介します。

心身の健康を左右する自律神経系とは?

体がだるい、夜の寝付きが悪くて朝は気持ちよく起きられない、気持ちが落ち込む日が続くといった症状に身に覚えはありませんか?痛みなどがあるわけではないけれど慢性的なだるさを感じる場合は、もしかすると自律神経系が乱れているのかもしれません。

自律神経系とは、循環器や消化器、呼吸器などの活動を調整するために24時間働き続けている神経のことを指します。例えば、心臓は意図的に止めることができませんし、同じく胃腸の消化を自分の意思で止めることはできません。

その自律神経系が乱れると、下痢や便秘、不眠、抗うつなどの心身の不調が見られます。自律神経の乱れは、主にストレスが原因と言われており、現代社会では多くの人がなんらかの不調を抱えています。その不調を抱えたままにしておくと、大きな病気にもつながりかねないので、早めの対策が必要です。

呼吸を制する者は自律神経を制す!?

前述した通り、自律神経系は自身ではコントロールができないものですが、唯一できるものがあります。それが「呼吸」です。呼吸は、意識をしなくても吸ったり吐いたりしています。しかし、意図的に息を止めることも吸ったり吐いたりすることもできます。

呼吸を観察していると、緊張すると息が止まったり、焦ると呼吸が速くなったりします。そして、呼吸が浅いと頭痛やめまいといった症状にもつながります。緊張したときには、大きく深呼吸をすると気持ちがリラックスすることがあります。

人はリラックスしているときに自然と呼吸が深くなって、心拍数も落ち着いて体が緩んでいます。逆に緊張しているときは呼吸が浅くなり、心拍数も上がって体が固まっています。ストレスを感じて緊張状態がつづいていると、体の血流は滞り、頭痛などの不調があらわれるのです。つまり、唯一コントロールができる自律神経系である呼吸をうまくコントロールすることができると、体が緩み、リラックスすることができるのです。

ちなみに、いま自分が1分間にどのくらい呼吸をしているか数えてみましょう。息を吸うところから次息を吐いて次の息を吸うまでを1カウントとします。通常、安静時には1分間10から13回程度の呼吸が好ましいといわれています。それ以上の回数だと、いくら椅子に座っていたとしても軽いジョギングをしたあとと変わらない呼吸の速さになります。もし、安静時に呼吸数が多いとなると、常に体が緊張状態にある状態にあるかもしれません。そんな状態か常に続いているとしたら、慢性的な疲労が取れないのも無理はありません。深くゆっくりと安定した呼吸は体を緩め、ストレスをやわらげる効果があります。血圧も下がり心身の健康にもつながります。

ヨガ八支則の一つ「プラーナヤーマ」とは?

ヨーガスートラ 1-34

プラチャルダナ ヴィダーラナービャーン ヴァ プラーナシャ

心の落ち着きは、息を吐く・保持する・吸う、という呼吸の調整によっても可能です。

引用:やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ/向井田みお

ヨガ的な生き方をするために何気ない日常の行ないをヨガにする必要があります。そのための練習方法として挙げられるのがヨガの八支則です。ヨガの練習はポーズをとることとだけではなく、呼吸を整える呼吸法も大事なことです。

8つの方法からなるヨガの教えを途切れることなく、練習して習得することで、私たちを苦しめる悩みや考えから離れることができると、ヨーガスートラでは説いています。その8つの方法が、アシュタンガヨガ、八支則と呼ばれる方法論です。その八支則の一つが、プラーナーヤーマです。

2-49

タスミン サティ シュヴァーサ・プラシュヴァーサヨーホ ガティ・ヴィッチェーダフプラーナヤーマハ

快適に、安定した姿勢が確立した時、息の吸い、吐きの流れが自然に鎮まります。それがプラーナーヤーマ(呼吸を整えること)です。

引用:やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ/向井田みお

プラーナーヤーマとは、呼吸を整えること。ヨーガスートラにもあるように、呼吸を整えることで体が安定し、心が穏やかになります。その逆で、体が安定し、心が穏やかになっているときは、呼吸が整っているともいえます。

ヨガのポーズを取るときも、一つひとつの動作に対して呼吸を止めずに吸う吐くを意識することが重要です。特にバランスをとるポーズは息が止まってしまいがちですが、呼吸に集中すると体が少しずつ安定していくのを実感できるはずです。 

氷水に浸かっても平気?「Iceman(アイスマン)」の呼吸法メソッドとは?

呼吸法で自律神経系を自身でコントロールすることはできるのでしょうか?そのことを科学的に証明した人物がいます。

北極圏内を靴下も履かずにサンダルとショーツのみでマラソンをしたり、氷水に笑顔で90分間浸かったりすることができるのが、Icemanことヴィム・ホフ氏です。

ICEMAN 病気にならない体のつくりかた
ヴィム・ホフ (著), コエン・デ=ヨング (著), 小川彩子 (翻訳)

自律神経系を操るためのメソッド「呼吸エクササイズ」

ヴィム・ホフ氏はなぜ氷水に体を浸かっても笑顔でいられるのでしょうか?彼が体づくりを行なうにあたって実践しているのが「呼吸エクササイズ」です。

①鼻から深く息を吸って、吐く。これを、いちばん心地よいと感じる速さとリズムで30回繰り返す 

②最後の1回で、息を完全に吐き切ってから、もう一度とても深く吸い、ゆっくりと吐いて息を止める 

③もう一度息を吸う必要を感じるまで待つ。うずきやめまい、疲れを感じたら、そこで息を吸う

引用:ICEMAN 病気にならない体のつくりかた

意識的に深い呼吸をすると、血中の酸素と二酸化炭素の量のバランスが変化し、細胞内でより多くのエネルギーを生み出すことができます。また深い呼吸は、平時よりも多くの酸素を取り込むことができるため、身体がより多くのメラトニンを生産するということもいわれています。これは、体がリラックスするだけでなく、睡眠障害や抗うつにも効果的です。

このエクササイズに慣れてくると、息を止める時間が自然と長くなってきます。無理に止めるというよりも、息を止めていたほうが心地よいなと感じるようになります。そして、もう十分というところで元の自然な呼吸に戻すといった具合に、心も体もリラックス状態になります。

気持ちもスッキリとリラックスできる呼吸法を味方にしよう!

普段意識せずに行なっている呼吸は、自身の心身のバロメーターです。呼吸が浅く、速くなっているときは注意が必要です。体がだるい、なんだか眠りにくいと感じる人は、是非ご紹介した呼吸法を実践して、スッキリとリラックスした毎日を過ごしてくださいね。

フリープランナー兼エディター。
2020年3月にインド政府公認校認定ヨガ指導者養成講座ヨガ哲学コース修了。ヨガ哲学に魅せられて、日々カルマヨガに専念しています。
「ヨーガ・スートラ」や「バガヴァッド・ギーター」を参考に、哲学や瞑想の視点から毎日の生活が楽しくなるヒントを伝えていきます。
マイブームはスパイスカレー作りとジャパ瞑想。
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