もくじ
アーユルヴェーダとは?
世界三大医学の一つとして、インド・スリランカで生まれた世界最古といわれる伝統医学「アーユルヴェーダ」。我々の体は自然エネルギーから構成されているという考えのもと、そのエネルギーのバランスを整えることで健康的な生活を送ることを目的としています。
我々の体を構成しているエネルギー「ドーシャ」は3つの体質に分かれており、「ヴァータ(風)・ピッタ(火)・カパ(水)」があります。誰もが持っているこの3つのドーシャ(トリドーシャ)のバランスが整っていることが理想ですが、個人によってどれかが優位になっています。この体質診断は、アーユルヴェーダ専門の医師のもとに問診や触診などによって判断されるものですが、大まかな自分のタイプはインターネットや書籍でも知ることができます。
それぞれのドーシャのタイプによって対処法が異なるので、まずは自分の体質を知っておくと生活の目安になるので便利です。身近なアーユルヴェーダの対処法として、よく知られているのが食事法です。私たちの体をつくる食物は、ドーシャごとに合うもの合わないものがあり、自分に合った食物を体に取り入れることで健康的な体を維持することができます。
アーユルヴェーダはヨガと同じくインドで生まれたものなので、ヨガを行なっている人でアーユルヴェーダ的な生活様式を取り入れている人も多いです。ヨガを実践しているうちに、自然と食べ物の好みが変わったり、お酒やたばこなどの嗜好品から離れてしまったりすることはよくあることです。
アーユルヴェーダ式オイルマッサージ「アビヤンガ」とは?
アーユルヴェーダと聞くと、上から額にオイルを流す「シロダーラ」をイメージするのではないでしょうか。シロダーラを家で実践するにはハードルが高いですが、身近にあるものを使って自宅で簡単にできるマッサージ方法があります。シロダーラと同じオイルを使って行なうアーユルヴェーダ式マッサージを「アビヤンガ」といいます。
インドやスリランカにあるアーユルヴェーダのクリニックで、専門の医師による浄化療法「パンチャ・カルマ」を受ける際、最初の前処置として行なわれるのがアビヤンガです。患者一人に対してセラピストに2名が付き、患者の体質に合ったオイルを大量に使い、全身をマッサージしながら浄化を行なっていきます。日本でもアーユルヴェーダの専門医によるパンチャ・カルマを受けられるところもありますが、全国でもまだ数は少なく、その機会はなかなかないのが現状です。
アビヤンガで使用するオイルはセサミオイル(ごま油)で、スーパーマーケットなどで見かける琥珀色のものではなく、ほぼ無色透明の「太白ごま油」と呼ばれるものになります。太白ごま油は、ごまを焙煎せずに生のまま油を抽出するため、ほぼ無色で香りも少ないのが特徴です。このセサミオイルは肌の浸透力が高く、保湿効果があります。また、マッサージに使用することで、血液の循環を良くして老廃物の排出を促します。
リラックスだけじゃない「アビヤンガ」の効果
例えば、お風呂上がりにお気に入りのボディクリームで体を保湿することを習慣にしている人もいると思います。それをアビヤンガでは、タイミングをお風呂に入る前、ボディクリームをセサミオイルに替えるだけでOK。
セサミオイルは老廃物の排出を促すので、ひと通りマッサージが終わったあとはオイルが肌に馴染むように10分ほど置きます。そのあとにシャワーで流しますが、ぬるぬるするのが気にならないようであれば、石鹸を使わずにハンドウォッシュで洗い流すことをおすすめします。老廃物だけが流れて、お風呂上がりの肌はしっとりふっくら。
マッサージの方法もグイグイ押したり、ゴシゴシ擦ったりはしません。人肌に温めたオイルを手に馴染ませたら、オイルで肌をすべらせるようにマッサージします。頭は指先を使って、肩は手のひらをくるくると回して、全身にオイルを馴染ませるようにすることがポイントです。冷えが気になる足先やふくらはぎ、こりやすい肩や腰回りなど自分が気になる部分は優しくゆっくりマッサージします。マッサージ後は体が冷えないようにタオルなどを体に掛けてお休みします。優しいタッチのマッサージで、体がポカポカと温まってくるのを感じられるでしょう。
アビヤンガを行なうと、初めのうちはオイルの加減がわからずベタつきが気になったり、終わったあとにだるさを感じたりすることがあるかもしれません。毎日の習慣になり、徐々に慣れてくると体がしっとりとするだけでなく、終わったあとはすっきりした気分になります。 また、マッサージの効果で血液の循環が良くなり、体が温まって免疫力が高まる効果も期待することができます。
アビヤンガの効果
- 身体が温まることで、血流がよくなり、冷えやむくみを解消できる。
- 血行がよくなることで、免疫力が高まる。
- セサミオイルのマッサージで、肌が潤って保湿効果が高まる。
- セルフマッサージの効果で自分の内面と向き合い、心身がリラックスする。
アビヤンガを毎日の習慣にしてみよう
アビヤンガは朝の時間帯に行なうことを推奨しています。生活スタイルは人それぞれなので朝が難しいようであれば夜の時間帯に行ないます。マッサージ後に10〜15分ほど体を休める時間とオイルを洗い流すシャワーの時間があるので、はじめのうちは時間に余裕のある休日の朝から取り入れてみましょう。
朝の時間帯はアーユルヴェーダ的に、浄化や排出の時間として捉えられています。アビヤンガの前に、起き抜けに白湯を飲んだり、ヨガをするのもおすすめ。前日の毒素や老廃物排出を促す効果があります。なかなか朝に時間を取りにくい人は、全身ではなく手足だけ、頭だけでも大丈夫。マッサージ後のオイルに馴染ませる時間がないときは、すぐに流してもOK。
時間があるときにじっくり自分の体をマッサージしたときの気持ちよさは格別です。夜の時間帯にアビヤンガをすると、いつもより体がポカポカと温まって寝つきがよく、ぐっすり眠ることができるでしょう。
アビヤンガを始める前に準備するもの
アビヤンガで使用するセサミオイルは、すでに熱処理されているものであればそのまま使用して構いません。太白ごま油を使用する場合は「キュアリング」という熱処理をします。まず、オイルの準備をしましょう。
価格:1,100円(税込)
キュアリングの方法
- 太白ごま油を鍋に入れて、中火で温める。
- 温度計で計り、温度が100℃になったら火を止める。
- 鍋のまま熱を冷ます。
- 完全に冷め切ったら容器(蓋付きのもの)に入れて保存する。
まとめて1リットルほどキュアリングをして容器に移しておきます。アビヤンガで使うときは小さな容器に小分けし、湯煎してオイルを人肌程度に温めます。
アビヤンガの手順
部屋を温かくしてから服を脱いで裸になります。大きめのバスタオルを2枚用意し、1枚は床に敷いて座ります。オイルを手のひらで馴染ませて、からだ全体に少しずつ優しくこすりつけていきます。
マッサージの手順
- 髪をかきあげるようにして、おでこから後頭部に向けて、上、横、後ろと円を描くようにします。
- 額を上下に、顎を左右に、頬は円を描くようにします。鼻の横と下、口まわりも忘れずに。
- 喉を下から上に向かって、両手で交互にさすります。首の後ろも同様に。
- 左肩を首に向かって下から上にさすります。コリを感じるときは何度か繰り返します。右肩も同様に。
- 手は甲から順に指の間を上下に。次に手のひらを上下にさすって揉みます。
- デコルテを内側から外側に向けて円を描くように、バストまわりはやさしくさすります。
- 背中と両わき腹は手が届く範囲まででOK。お腹と腰回り、お尻は円を描くようにします。
- 足は左の太腿から上下に、膝は円を描くように。膝下から脛、ふくらはぎは上下にさすります。くるぶしは円を描くように、アキレス腱は上下に、足の甲と裏は両手で挟み込むようにして揉み、指は一本一本ていねいにさすります。右足も同様に。
- 体をもう一枚のバスタオルを掛けて温かくします。座ったままでも、横になってもOK。ゆったりと体を休めます。
- 10〜15分経ったら、シャワーまたは半身浴をしてオイルを洗い流します。
アビヤンガで注意すること
アビヤンガは、生理1日目から3日目の間、風邪をひいている時、熱がある時は避けましょう。妊娠中の方はお腹と背中以外の頭や顔、手、足に留めておきます。
アビヤンガ後はオイルがついているので、足下には十分に注意して滑らないようにしましょう。特にお風呂場は滑りやすいので注意が必要です。
オイルが皮膚に合わない場合は、専門医に相談してから行なうようにします。
マッサージをする際、裸になりますので部屋を温めて風邪をひかないようにしましょう。
自分をいたわるアビヤンガで免疫力を高めよう
食事や睡眠、運動に気をつけながら、規則正しい生活を続けるのはなかなか難しいものです。今回ご紹介したアビヤンガは、ストレスを感じている毎日の中で安らぎの時間となるでしょう。自分の体を丁寧にマッサージすることで、見落としがちな変化にも気付きやすくなります。アビヤンガは保湿効果だけでなく、体が温まることで免疫力が高まる効果も期待できます。季節の変わり目となるこの時期に、自分自身を優しくいたわりながら体を守っていきましょう。