ヨガの保険とは?インストラクターが安心して指導するためのお守り。編集部が取得してみた!

ヨガインストラクター向けの「ヨガ保険」をご存知でしょうか?生徒さんにケガを負わせてしまった、生徒さんの私物を踏んづけて壊してしまった。注意を払っていてもリスクは0ではありません。今回はインストラクターが安心して指導に専念するための「ヨガ保険」を編集部が実際に取得してみました!

ヨガの保険が取得できるヨガ安全指導員制度とは?

日本のヨガ市場が拡大を続ける中、ヨガによるケガや障害も増えている実態があります。

レッスンに参加する生徒さんの安全と指導者としての賠償責任リスクを守るべく、ヨガの安全講習会とヨガインストラクター向け賠償責任保険「ヨガの保険™」の加入を組み合わせた「ヨガ安全指導員®」制度が、日本ホリスティックヘルスケア協会によって開始されました。賠償責任保険の引き受けは、三井住友海上が担当しています。

ヨガ安全指導員公式サイト

保険の保証範囲は?

レッスン参加者のケガの診断書にもとづいた治療費や、交通費など。参加者からの訴えにもとづき、会社の担当者が調査・聴取をした後に、保証額や保証範囲が決められます。

ホットヨガや、マタニティヨガ、ママ&ベビーヨガ、パークヨガ、サップヨガ、アクロヨガ、ハンモックヨガに至るまで、新しいスタイルのヨガも保険金支払い対象となります。

https://yoga-anzen.com/

区分は、対人と対物(レッスン中に生徒さんの私物を踏んづけて壊してしまった場合など)に分かれます。限度額は上記の通りです。

背景にはヨガ初心者層の増加

近年、ヨガ市場は拡大を続けています。ヨガにトライしてみようという初心者がどんどん増えることは喜ばしいことですが、ヨガインストラクターにとって生徒さんのケガ等のリスクにこれまで以上に細心の注意を払っていく必要があります。
また、既往症や障害のリスクを持つシニア層にもヨガが浸透しています。妊婦を対象としたマタニティヨガや、高温多湿環境で行うホットヨガなど提供形態も多様化しています。

その他、資格スクールやヨガインストラクターの増加も要因として考えられています。

ヨガ練習中にケガをした人は6割も!

https://yoga-anzen.com/

調査によると、約6割の参加者がヨガの練習中にケガをした経験があることが分かっています。ケガの部位で多いのは、手首が第一位。首やヒザがその後に続きます。
そして、そのケガの原因の2割が「ヨガのインストラクターの不適切な指導」であることが回答として上がっています。
ヨガ練習中のケアに関する調査については、以下からさらに詳しく見ることができます。

ヨガ安全指導員公式サイト

・インストラクターの不適切な指導が原因?

インストラクターの方は、もちろん故意的にそういった指導を行っているつもりは無いと思います。
「ポーズが上手くなりたい」「ポーズをやり切って達成感を得たい」という参加者の想いに応えようとしたレッスン指導が、結果的に関節や組織に過度な負荷をかけてしまい、筋肉や骨などの組織に損傷を与えてしまうケースが多いといいます。

万が一、生徒さんにケガを負わせてしまったら?

レッスンの生徒さんにケガや痛みが発生して、損害賠償請求を生徒さんがした場合、インストラクターさんは賠償責任を負うことになります。ヨガ指導者もスタジオも保険に入っていない場合、費用負担がダイレクトにインストラクター自身にのしかかってきます。経済的にも心理的にも厳しい状態になってしまうのです。

現在、何らかの保険に加入しているヨガインストラクターは10.4%

にもかかわらず、ヨガインストラクターの9割以上がフリーインストラクターとして複数のスタジオで業務を受託しており、ヨガの事故に対応した何らかの保険に加入している人は、たったの10.4%に留まっています。特にフリーランスの方、プライベートレッスンを提供している方には是非取得してほしい保険です。

賠償事故から守り、インストラクターが安心してレッスンに専念できるようにということで「ヨガの保険™/ヨガ安全指導員®」がつくられました。

ヨガ保険を編集部が取ってみた!

ヨガ保険を取得するには、安全講習会(受講時間:3時間)を受講する必要があります。今回は、こちらの安全講習会に参加してきた内容をリポートしたいと思います!

安全講習会はヨガの知識を持つ人向けに(ヨガアライアンスのRYT200程度)、ヨガのレッスンを安全に行うための知識を学ぶことはもちろん、いざという時のための応急手当などを身につける講習会です。

修了者には、IDカード(指導員証)が発行されます。また、最低年1回はアップデートの安全講習会受講が必須です。安全な指導方法を確認する日として毎年受講することが大切だそう。

教えてくれたのは我らがケン・ハラクマ先生!

安全講習会は、最低でも月に一回開催されています。場所や先生は様々で全国各地で開催されています。
今回、編集部は表参道IYCスタジオで開催された回に参加させていただきました。IYCといえば我らがケン・ハラクマ先生!「ヨガ安全指導員®」特別パートナー講師であるケン先生。どうぞよろしくお願いいたします。

ちなみに受講料っていくら?

気になるお値段。ズバリ!受講料は25,000円(税込)です。
受講料には下記が全部含まれ、講習受講後『ヨガの保険™』に追加費用なし、手続きなしで即加入できます

・「一般社団法人 日本ホリスティックヘルスケア協会」への入会金(初年度のみ)
・「一般社団法人 日本ホリスティックヘルスケア協会」の年度会費
・「ヨガ安全指導員ハンドブック2018」
・IDカード発行費用

3時間の安全講習会がスタート!

参加人数は、毎回バラバラです。今回は25人程度でした。編集部は一番後ろに陣地を確保。
塾や予備校でも一番後ろの端っこが好きなタイプでした。。
ちなみに上の写真で手を挙げている方、なんと沖縄からの参加だそう!全国各地で活躍されているインストラクターの方々との出会いもあり、自身も鼓舞されます。後方マットから、めらめらとふつふつとやる気がみなぎっている編集部です。

基本は座学で先生のお話を聞いて学ぶスタイル

講習会の様子

安全講習会で配布されるハンドブックに沿って、授業が進みます。ハンドブックの内容はものすごく充実していて、一冊持っているだけで指導する上での安心感が全く違うと思います。ハンドブックを監修したのは、ヨガ解剖学の日本の第一人者中村尚人先生!ハンドブックはざっくりと以下の内容で構成されています。

・ヨガ指導におけるケガの現状
・ヨガの目的や歴史
・アーサナの目的と意味
・医療と運動指導の違い(医師法・薬事法凡例)
・安全なクラス実施のための責任や役割
・骨格の個性と、注意すべきアーサナ
・代表的な起こりやすいケガ一覧
・安全なヨガ指導のための工夫
・応急手当の基礎知識と技術

A5サイズほどのコンパクトなハンドブックに、安全な指導を行うための大切なエッセンスが詰まっています。

安全講習会で学んだヨガインストラクターが認識すべきポイント

講習会での学んだ内容について、3つのポイントに分けて説明していきます。

ポイント1「いつもヨガの目的に立ち返ること」

ヨガの目的は「考えの動きを静かにおさめること」であることに常に立ち返ること。アーサナはそのための手段でしかないことに改めてヨガインストラクターが認識をする必要があります。
本来の目的を忘れ、盲目的にポーズの完成を競うスポーツのようなものになってしまうことは本末転倒でしかないですよね。幸せになるための手段としてアーサナがあることをいつでも心に留め、生徒さんにも同様に共有しておきたいですね。

ケン先生からも、ヨガ・スートラ(ヨガの経典)は指導者であれば絶対に読んでおくよう講習会の中でもお話がありました。以下の本は、やさしい現代語訳で書かれているので読みやすくおすすめです。

アンダーザライト
やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ (YOGA BOOKS)
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ポイント2「医療と運動指導の違いを認識すること」

 知らない間に、医療行為を行っていないか、を今一度確認する必要があります。
ヨガの専門範囲はあくまでも、「ヨガ哲学」「ポーズ」「呼吸法」「瞑想法」等であり、「治療」「矯正」「医学的処置」などは含まれません。

 ヨガのアライメントと医学は異なることを認識し、専門外のことを発言したり、無責任なことを言わないようにすることが当たり前ですが大切です。
特に、アーサナができるようになることによる効果を期待させる表現は避けなければなりません。
例)腰痛改善ヨガというレッスンを行う、体験談として○○病が治った生徒さんの話をHPに載せるなど

ハンドブックには、NG表現事例やヨガインストラクターが知っておくべき医師法、薬機法について丁寧に解説がしてありますよ。

ポイント3「安全のための知識を身につけること」

大前提に、参加者の半数以上は健康でないことを認識し、できるだけレッスン前に生徒さんに確認しておく必要があります。
そして、健康な人であってもそもそも生まれつき人はそれぞれ骨格が違い、骨格の個性ごとに注意すべきアーサナがあります。
また、人によって関節の可動域はバラバラです。可動域が少ない、逆に大きい人が気を付けなければいけないアーサナについての知識を身につけておく必要があります。
講習会ではハンドブックに沿って、様々な骨格特性のケースや関節の可動域によって注意したほうが良いアーサナについて学びました。

講習会では、ケン先生が参加者の骨格特性や関節可動域を見て、実際にアーサナの注意点や軽減法について分かりやすく説明してくださいました。
上の写真では、股関節外旋可動域についてのチェックを行いました。足のヒザを平行にしてあぐらをかいた状態でヒザが浮いてしまう人は十分な可動域が無い可能性があり、パドマーサナなどの股関節を強く外旋するアーサナは注意が必要。こういった内容を自分やメンバーの体を通して、実体感することができます。

その他にもダウンドッグで肩関節が柔らかすぎる人のケースや、ナバーサナで尾骨がマットに当たって痛い人への指導法など、次から次へと講習会に参加していたインストラクターさんから質問が上がり、一個一個丁寧にケン先生が解説してくださいました。
質問が出るたびに、まわりのメンバーも「分かる分かる」と頷きます。自分が抱えている疑問や不安はみんなも一緒。シェアできる場や仲間って素敵だなあ、としみじみ。

最後にケン先生に「ヨガの保険」について質問インタビュー!

なぜか仁王立ちのケン先生

安全講習会後に「ヨガの保険」に関するインタビューをケン先生にさせていただきました。

  • ケンハラクマ先生が考えるヨガを教える人にとっての大切な心構えとは?

指導者がクラス内の「エネルギー(パワーの方向性)」をきちんとコントロールできる状態であること。
たとえばクラス内が「エネルギッシュ」でめらめらと生徒さんがアドレナリンを放出している状態で、指導者が一緒になって煽ってしまっては、ケガも起こりやすくなってしまう。

  • 実際にケンハラクマ先生がレッスンで生徒さんの安全を守るためにやられていることは?

指導者から積極的に生徒さんに声がけをすることはとても大切。生徒はヨガインストラクターを完全に信頼してレッスンに参加している。自分の体の状態についても言わなくても分かってもらえていると思っているケースもある。生徒さんの健康状態を可能な限り聴取しておくことは大切。

  • 最後に一言お願いします。

 アメリカ等に比べれば、日本では生徒さんから賠償責任を問われるケースはそこまで多くはないと認識しているが、日本もヨガ市場の拡大で年齢層も体の状態も、幅広い方々がレッスンを受けにくる。
万が一のケースを想定し、指導者・生徒双方のために、指導者がヨガ保険に入っておくことは必須だと考えます。

何かあってからでは遅い「お守り」としてヨガ保険に加入しておく大切さ

どんなに気を付けていても事故が起こるように、いつ何があるか分かりません。もしもの事態に備えて、自身の仕事や生活を守るためにも保険に加入しておくことの大切さを認識した講習会でした。

ヨガ安全指導員公式サイト

『安全講習会』開催概要

  • 受講対象: ヨガインストラクター
    ・ヨガアライアンス(RYT200)などヨガ指導資格を取得したがまだ教えていない方
    ・ヨガスタジオ、フィットネスクラブ、ホットヨガスタジオ等に勤務している方
    ・ヨガスタジオ等の経営者または経営する予定の方
    ・ヨガ指導資格発行元の責任者、講師
    ・特にフリーランスの方、プライベートレッスンを提供している方
  • 受講料: 25,000円(税込)
  • 定員: 20-200名
    *開催場所によって異なります。
  • 場所:
    ・代々木 アンダーザライト ヨガスクール (東京都渋谷区代々木1-53-4 奨学会館別館)
    ・表参道 IYC表参道スタジオ 2F(東京都渋谷区神宮前5-47-3)
    ・下北沢 クリパル・ジャパン (東京都世田谷区北沢2-26-15 3F)
    ・荻窪  友永ヨーガ学院 (東京都杉並区上荻1‐18‐13)
    ・外神田 3331 Arts Chiyoda(東京都千代田区外神田6‐11-4)

その他、全国各地で開催しています。

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