もくじ
シニアヨガとはどんなヨガ?
ヨガは老若男女が心身の健康のために行うものですが、その中で「シニアヨガ」も、近年注目されてきています。心身の健康を保ちながら、老化による筋力低下を防ぐことができる高齢者向けのヨガが「シニアヨガ」。決まったシークエンスがあるのではなく、椅子やストラップ、壁やボールなど道具も使いながら、アサナ(ポーズ)の完成形にとらわれることなく、指のほぐしやストレッチ、そして簡易ポーズを含め、深い呼吸を大切に、無理なく安全に行えるやさしいヨガとして人気を集めています。
シニアヨガの「シニア」とは、何歳からをさすの?
WHOや国連の定義では、”高齢者”とは65歳以上の方々が対象だそうです。前期高齢者が65歳~74歳。後期高齢者が75歳以上なのだそうです。日本での高齢者の割合は20%以上にもなり、世界でも高い水準と言われているそうです。
最近は、60歳を超えているとといわれてもまったくそう感じさせない方も多く見受けられますし、普通のヨガレッスンの生徒さんでも、逆に私が教わっているヨガの先生でも70歳を優に超えても世界中を飛び回っている方もいます。「シニア」と言えど、年齢だけではひとくくりにできない幅の広さがありますが、一般的には主に65歳以上を指すことが多いようです。(日本ではシニア以外にもシルバーという言葉もあり、こちらは67歳から70歳くらいとも言われているようです。)
今回、シニアヨガを高齢者施設で教えられているAsami先生にシニアヨガを伝えるにあたって気をつけていること大切にされていることを伺ってみました。
シニアヨガインストラクターがレッスンで大切にしていることは?
「シニアヨガをお伝えするにあたり意識していることは、”健康寿命を5歳引き上げよう”ということですね。」
ちなみに、「健康寿命」とは、心身ともに自立し、健康的に生活出来る期間のことで、2000年にWHOが提唱してから関心が高まっているのだそう。健康上、日常生活を制限なく普通に生活出来る状態のことです。現在、平均寿命が男性80歳、女性は87歳といわれますが、なかでも健康寿命は男性72歳、女性は74歳といわれているそうです。この「健康寿命」と「平均寿命」の差が、日常生活に制限があったり、なにかしら身体や生活に不都合を感じながら生活を送っている期間。男性も女性も平均すると、10年前後はこの期間があるようですが、いわゆる寿命が伸びると、この不具合の期間も増える可能性があるというわけです。(もちろん健康で身体や心の不具合など何もないに越したことはないのですが!)
Asami先生は、この健康寿命と平均寿命の幅を縮められるように、ヨガを通して「心身のほぐし」と「筋肉や脳のトレーニング」を大切にしているそうです。たしかに、現在は、平均寿命と健康寿命の差は大体男性で8歳、女性は13歳の差がありますが、普段の日常生活の不具合はできる限り少ないほうがいいですし、それをヨガで快適に誘うことができればこんなにいいことはありませんよね。
わかりやすい言葉で、耳の遠い方にもわかるように。
シニアヨガで心がけていることをいくつかお聞きしたところ 「できる限りわかりやすい言葉で、短い単語を選びインストラクションをすることを心がけています。介護施設などで90歳くらいのかたにお伝えするときには、耳の遠い方もいらっしゃるので声の大きさにも気を配っています。」とのこと。
また、他にもまず始めにたくさん時間をかけて身体をほぐしたりストレッチを行うことで、身体の痛みやつまりに気がつけるようにしてから、筋力の衰えをカバーできるように下半身を中心としたポーズを取り入れるなどの工夫をされているとのこと。また、年代によっても様々な違いがあり、70歳前後の生徒さんはまだまだ元気に身体が動く場合が多く、90歳前後の方は車椅子で生活されている方もいらっしゃるため、動ける人からそうでない人までそれぞれの目的に合うような内容のヨガにできるよう心がけているそうです。
なかには半身不随のかたもいらっしゃるそうですが、そんな時は、動かない身体の中でも動かせる筋肉を意識的に動かしていただくことを伝えるなど、創意工夫をされているAsami先生。
「筋肉は120歳まで育つ(鍛えて増やす)ことができると言われているので、どこを動かしているか意識を傾けてあげるように声をかけています。たとえば、動く部分が指一本だったとしても、丁寧に呼吸とともに動かしていただくようにお伝えするようにしています。」
120歳まで筋肉が増えるとは驚きですね。「もう年だから」だとか「身体が動かないから」と諦めるのではなく、少しでも動くところを生かしサポートしつつ意識を傾けていくなどシニアヨガは、実にきめ細やかな優しいヨガでもあるんですね。
また、シニアヨガでは「軽減法」といって通常のポーズよりも身体の負担が少ない簡易的なポーズを取り入れているので、程度によりますが身体の痛みがある場合でも気軽に取り組めます。これは、通常のヨガでも、怪我などで身体を痛めている時には役に立つ方法かと思います。年齢に限ったことではないですが、特に70歳前後の生徒さんはまだまだ元気で身体もたくさん動かすことができるため、むしろ頑張りすぎないことをお伝えしたり、呼吸が気持ちよくできるようアサナを丁寧に行うよう指導されているそうです。
椅子やミニボールなどの道具を使い安全に低下した筋力をサポートすることも
シニアヨガでは時に道具を使うことも。マットを使ったヨガでは時には「ミニボール」や座布団などを使用することもあります。シニアヨガに限りませんが、道具を使うことで結果的に可動域が広がり、血流がよくなる場合もあるので、適宜取り入れているそうです。道具に頼るわけではないですが、補助があることで安心安全にヨガが行えます。椅子を使うチェアヨガは、低下した筋力のサポートに役立つともいわれています。人によっては、下半身を鍛えたい場合には椅子ではなくマットがよいという考えもありますし、高齢者だから椅子を使う、ということではありませんが、立位のポーズを簡単に行ったり、バランスポーズの補助にもなる場合もありますので、先生によってはサポートとして使う場合もあるようです。
シニアヨガで生まれる心の変化
シニアヨガでの目的は、リハビリのように動かない身体が動くようになったということもありますが、なによりもレッスンの前と後では心の変化が感じられること。Asami先生も、「ヨーガのレッスンを始める前と後で、心が前向きになり、楽しかったと思っていただけるクラスを心がけています。うまく動かせない身体と上手に向き合って、できることを一緒に探して行けるようにお声がけをするようにしています。」
高齢者に限らず、身体が痛かったり、思うように動かず憂鬱だと感じた経験は誰しもあるのではないでしょうか?そんなときに、明るい声がけとできることをそばで一緒に行ってくれる先生がいるだけでとても心強いですよね。シニアヨガというのは、単なるヨガではなく、人生の伴走者としてそばにいて励ましてあげることでもあるのかもしれません。
「認知症の方や身体のどこかに動かせない箇所がある方はレッスンの間できないことが多く眠くなってしまう方もいます。できる限り身体を動かし、身体の機能向上につなげていけるように、一緒に声を出してカウントを数えたり、脳トレを挟むようにしたりと飽きないようにクラスを構成するように心がけています。」
ヨガポーズに限らず、脳トレをしたり一緒に声を出してカウントを数えるなどシニアヨガで行うことは臨機応変さも求められます。ホスピタリティも大切ですし、ヨガでいうところの献身=「バクティヨーガ」であるとも言えそうですね。
シニアヨガを教えたい人におすすめの本
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Amazonで見る「健康大国ニッポン」。ますます平均寿命が伸びていく中、「シニアヨガ」は、高齢者が心身ともに健やかで、穏やかな日常生活を過ごすために欠かせない鍵になりそうです。人は誰でも歳をとります。まずは周りの祖父母やご両親など自分が感じる高齢者にむけて「身体を動かす喜び」を感じてもらうこともシニアヨガの第一歩になるかもしれません。この記事が、ヨガを学んでいる人やインストラクターへの「シニアヨガ」への関心が深まるきっかけになり、「高齢者にむけてのヨガ」レッスンをしてみたいと感じるきっかけになれば嬉しいです。