ヨガの発祥はやっぱりインド?日本の「用賀」説は!?

東京の世田谷区に用賀(ようが)という地名がこの語源が「ヨガ」だという説がありますがご存知でしょうか。そしてそもそもヨガというものの発祥はやはりインドなのでしょうか。ここではそのようなヨガの発祥の秘密を解明してきます。

ヨガという言葉の語源は?

ヨガは英語のスペルでは「YOGA」になります。その語源はインドの公用語の1つであるサンスクリット語ですが、発音は日本人には結構難しく、言葉に当てはめると「ヨガ」と「ヨーガ」の中間ぐらいの微妙さです。

ヨガのもともとの言葉の意味は、結ぶ、繋ぐ、統一などです。

それが派生して、「精神と肉体を繋いで統一させる」「散漫になりがちな精神をしっかり繋いで集中させる」といったような意味合いで、瞑想とポーズ(アーサナ)を一体化させた心身鍛錬法を「ヨガ」と称しているのです。

ヨガの発祥は?いつ、どこで誕生した?

ではそのヨガの発祥とはいつ頃、どこでのことなのでしょうか。

ヨガの発祥は4000~5000年前のインド

ヨガの起源は歴史書などには残っていませんので明確ではありませんが、約4000~5000年前にインドのインダス川流域で発展したインダス文明で誕生したと推測されています。

というのも、世界遺産にもなっているインダス文明最大級の都市遺跡「モヘンジョ・ダロ」で、さまざまなポースをとる小さな陶器製の像や坐法を組んで瞑想する神像などが発見されているからです。

その点から、インダス文明が栄えた4000~5000年前にはヨガは誕生していた、と考えられています。

世界におけるヨガの発展の歴史

ではその発生後、現在のように欧米中心にヨガスタジオができて、ヨガが発展するまでにはどのような経緯があったのでしょうか。

まず「ヨガ」という言葉の初出は紀元前1000年頃書かれた「ウパニシャッド聖典」です。

そしてそれから1400年後の西暦400年頃にはヨガが体系化された「ヨーガ・スートラ」という教典が成立し、主に仏教の修行僧の鍛錬法として実践されました。

そこからさらに1000年下って、1300年頃に今のヨガスタジオで主に行われているヨガである「ハタヨガ」が成立し、欧米中心に広がりました。

そして1970年代には瞑想を中心に第1次ヨーガブームが勃興しアメリカのヒッピー文化でブームとなりました。あのビートルズがインドでヨガの修業をし、彼らの作品に色濃くヨガ思想が反映されたのもこのころです。

その後今度は瞑想ではなくエクササイズとして1990年代に第2次ヨガブームが起こり、特にハリウッドのセレブ層を中心に美しいボディラインを作る目的で盛んに行われました。現在のヨガはこの第2次ブームのヨガが軸になっています。

日本におけるヨガの発展の歴史

では日本におけるヨガはどのようにもたらされ、発展してきたのでしょうか。

日本には空海が持ち込んだ

ヨガを日本に「輸入」したのは、弘法大師として有名な密教僧の空海です。彼が806年に唐から帰国した折に、多くの密教の経典や仏像と一緒に「瑜伽」(ユガ)という文言でヨガを持ち込みました。

瑜伽とは、視覚、聴覚などの五感と自分の意識を統一させ、それによって精神の揺らぎをコントールするという僧侶の修行法です。

ヨガとして日本で初めて行われたのは20世紀初頭

しかし空海が日本で興した密教の1つの真言宗ではヨガは重視されず、そのままヨガは有名な実践者が現れないまま時代が流れていきました。

そのヨガが初めて日本人によって本格的に実践されたのは空海が持ち込んでから1100年後のことです。

中村天風という人物が自分の結核を治すために世界中を旅した中で、インドでヨガの聖者カリアッパ師に出会い、その指導の下ヨガを行ったところ、結核が快癒したのです。

そこで天風はヨガに心身を良化する効果があると知り、日本で1919年に「天風会」という団体を立ち上げてヨガの普及に努めたのが、日本におけるヨガの発祥です。

しかしいわゆるヨガブームというものが日本で起こったのはそれから30年後の第2次大戦後のことです。

沖正弘という人物がユネスコの日本代表としてインドを訪問した折に、インドの有名な政治指導者で僧侶のガンディーが悟ったのはヨガの修業をしたから、とのことを知り、ヨガを熱心に研究しました。

そして1958年に日本ヨガ協会とヨガ行政哲学研修会を設立させ、みずから全国各地でヨガの普及のために講演し、ヨガブームが起こったのです。

1970年代に本格的なヨガブーム到来

そのヨガが現在のように日本において盛んになったのはやはりアメリカでヨガブームが起こった1970年代のことです。

日本の戦後の文化は基本的にアメリアで流行ったものを輸入する、というパターンでしたから、その後のアメリカでのエクササイズとしてのヨガブームや、ハリウッドのセレブ層での流行を取り入れて、発展してきました。

その頂点が2004年に開催された日本最大級のヨガイベント「ヨーガフェスタ」です。これ以降さらに日本におけるヨガ人口は増え、現在ヨガを実践している日本人は100万人以上いるということです。

ヨガの内容の起原とは?

このように発展してきたヨガですが、そもそもの内容の起源はどのようなものだったのでしょうか。

ヨガの原典は「ヨーガ・スートラ」

ヨガが心身鍛錬法として初めて体系化されたのは、先ほど書いたように西暦400年ごろに編纂された「ヨーガ・スートラ」です。

これはインド哲学の1派であるヨーガ学派の教典としてヨガの聖人・パタンジャリの説いた言葉を集大成したものです。

「スートラ」とは「糸」という意味で、パタンジャリが説いた短い言葉を糸のように連ねたもの、というのが「ヨーガ・スートラ」のタイトルの由来です。これが現在に至るまで、ヨガの基本的な教典になっています。

その内容は「ヨガとは心の作用の止滅である」つまり「ヨガとは心の働きを抑制することである」という有名なヨガの定義から始まって、心身がその定義に至るための修行法が具体的に記されています。その内容を以下でご紹介します。

ヨーガスートラでいう「8支則」とは

ヨーガ・スートラの内容で最も重要なものは「8支則」という、根本的な規律です。ユダヤ教で言えば「十戒」のようまものです。具体的には以下になります。

  1. ヤマ(禁戒):してはいけない行為のことです。内容は5つあり、アヒンサー(非暴力)、サティヤ(正直)、アスティヤ(不盗)、プラフマチャリヤ(禁欲)、アパリグラハ(不貪)です。
  2. 二ヤマ(勧戒):自分の本質を把握するための自己鍛錬の方法です。内容は5つあり、シャウチャ(清浄)、サントーシャ(知足)、タパス(苦行)、スワディヤーヤ(聖典の学習)、イーシュヴァラ・プラニダーナ(神への献身)です。
  3. アーサナ(坐法):これが現在のヨガで最も中心になっている部分ですが、瞑想に至るまでの準備段階としてのヨガのポーズをとることです。
  4. プラーナーヤーマ(調気):プラーナという生命エネルギーを呼吸によってコントロール(アーヤーマ)することです。
  5. プラティヤハーラ(制感):五感にとらわれずむしろ五感をコントロールして、自分の意識を内面に集中させることです。
  6. ダーラナー(集中):散漫になりやすい精神を集中させて瞑想する訓練をすることです。
  7. ディヤーナ(瞑想):ダーラナーを継続して、集中状態を連続させることです。
  8. サマーディ(三昧):瞑想からさらに1歩進んで、自分という識すらなくなり、世界と一体化することです。

アーサナだけにとらわれると、ヨガの本義を忘れる

上で触れたように一般的にヨギー(ヨガの実践者)が行っていることは、8支則の3番目の「アーサナ」です。ヨガのスタジオなどではわかりやすいように「ポーズ」と言い換えている場合も多いです。

しかし本来の意味に立ち戻ると、アーサナにはいろいろなポーズがありますが、どれもその最終的な目的は瞑想のための「安定して快適な座り方」を習得する練習だということです。

またもっと重要な点は、アーサナは瞑想に至るための準備段階だという点です。従ってアーサナの1つ1つができる、できない、ということに心を奪われてしまうことは、ヨガの本来の目的を忘れてしまうことになりかねません。

もちろん、アーサナを通じてリラックスしたり、ダイエットしたり、肩こりを治したりということは悪いことではありませんが、ヨガをする以上は、そのヨガの本義を忘れないようにしましょう。

まとめに代えて~「用賀の語源はヨガ」説の検証

以上がヨガの発祥ですが、では冒頭に記した「用賀の語源は『ヨガ』」というのは本当のことなのでしょうか。

実は、にわかには信じがたい話ですが、「本当」なのです。世田谷区の公式サイトにもそのことが以下のように書いてあります。

「鎌倉時代の初期に勢田郷にユガ(梵語)の道場が開設されて、後にこの地が真福寺の所有する所となったことから、このユガがヨーガになったのではないかと言われている。」(世田谷区公式サイトより)


世田谷区公式サイト

その道場は後に実相山真福寺になりましたが、その語源を尊重して山号は昭和20年代に瑜伽山になりました。

このように用賀=ヨガという説は本当だったのです。インドで発祥した言葉が日本の地名になっているというのは不思議な話ですね。

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旅、蕎麦と酒(全ジャンル)、落語、そして猫をこよなく愛する大阪在住ライターです。
最近は肩こりがさらにひどくなり、デスクでPCに向かいながら上半身ヨガで何とかしのいでいる日々。
しかしそのおかげで左半身のだるさが取れました!