多くの人が美容や健康効果を求めて始めることの多いヨガですが、実はその歴史はとても古く哲学や教義に基づいて行われきたという伝統があります。
そんなヨガの哲学はどんなものなのでしょう。哲学について知ることができれば、なぜヨガが長い年月心身に良いものとして取り入れられてきたかがより深く理解できるでしょう。
今回はヨガの哲学や、それについて知ることのできるおすすめの書籍をご紹介します。
もくじ
ヨガの哲学とはどんなもの?
ヨガの哲学はインド思想を元にしており、「ヨーガ・スートラ」という経典を聖典としています。ヨガ哲学の開祖・聖人パタンジャリによって編纂されました。
このヨーガ・スートラにはヨガを深めてくための8つの段階・決まりごとが書かれています。この8つの段階のことを「八支則」(8つの部分=アシュタンガ)といいます。
ヨガにおける幸福の定義はどんなものでしょう。ヨガの発祥地・インドでは輪廻転生が信じられており、そのため今世において様々な自我を取り除き本来の自分にかえる必要があると考えられます。
また幸せというのは自分を取り巻く環境など外側にあるというわけではなく、自分の心の内側にあるとされます。瞑想し、自分を内観する必要性はこのことから来ているのですね。
上に述べたヨーガ・スートラの八支則は、このような自我を日常生活において取り除くため、即ちヨガの状態を日常でどのように維持するか、ということについて書かれています。
ヨガの八支則
1・ヤマ(Yama):禁戒
自分の発したものは自分に返ってくるというカルマの法則をもとに、自分から他者や物に対して行ってはならない5つの心得。
①非暴力:暴力や殺生を行わないこと
②正直:他者に対して誠実であること
③不盗:人の物や喜び・時間を盗らないこと
④梵行:性的エネルギーをコントロールすること
⑤非所有:物に執着しないこと・所有欲を克服すること
2・ニヤマ(Niyama):勧戒
日常において積み重ねていきたい5つの善行の心得。心身・霊性を高めるためにより良い生活習慣を実現することが必要となります。
- ①清浄:心身の内外ともの清潔さ。肉体・精神ともの浄化にあたる
- ②知足:自分の環境に感謝し、肯定する姿勢
- ③精進:自分に課した「行・仕事」を積み重ね全うすること
- ④読誦:経典を読み真言を唱え、常に勉強をすること
- ⑤自在神祈念:高次元の自我と繋がり、より高みを目指せるよう常に祈ること
3・アーサナ(Asana):体位法・座法
ヨガとは元々瞑想であったため、瞑想の体勢である座法(サンスクリット語でアース)からこのアーサナという名前になりました。
アーサナはヨガのポーズのことで、瞑想のためのもの・リラックスするためのもの・身体を造るためのもの3つに大別されます。
立位・座位・寝位で成り立っていますが、いずれも一定以上の深い呼吸で行われ、ポーズを取りながら瞑想と祈りの状態を目指すものです。
アーサナを日常の習慣とすることで肉体へも精神へも良い影響をもたらすとさらています。私たちが普段行うヨガはこのアーサナの部分なのですね。
4・プラーナヤーマ(Pranayama):調気法
ヨガの呼吸法。宇宙のエネルギーを取り入れ、呼吸によってコントロールします。
深い呼吸により身体中に酸素を取り入れ、内臓を活性化し酸素を燃焼します。また自律神経のバランスを整え心に深い落ち着きをもたらします。
5・プラーティヤハーラ(Pratyahara):制感
これまでは行いや身体的な面に対してのステップでしたが、この第5段階・プラーティヤハーラは精神に関してのものです。
人は常に自我に囚われ、ともすれば対象が外に向きになり、多くの人が頭の中で常におしゃべりをしているような状態です。
しかしこのプラーティヤハーラでは瞑想にて自己を内観し、散漫になりがちな自我に囚われず冷静に自分を見つめます。
6・ダーラナー(Dharana):凝念
このダーラナーとは「心を1点に集中し、動かさない」というもの。眉間に意識を集中したり、ある形を思い浮かべたりしてそこから意識を逸らさないという方法で行います。
これにより、外の世界のものへと感覚が閉じ、気にならなくなります。
7・ディヤーナ(Dhyana):静慮
ダーラナーで一点集中していた意識からの流れで、ひらめきや洞察が自由に展開された落ち着いた状態の段階です。
8・サマーディ(Samadhi):三昧
自我を超越し、神の意識と一体になった悟りを開いた状態。至福の深い喜びを得ます。
直感や啓示に満ち、宇宙の高次元の意識が動きます。深い洞察を得、これ以上はないほどの至福を感じます。
多くのヨギーやヨギーニが目指している状態がこのサマーディです。
ヨガの起源!約4000年の歴史を持つヨガはいつ、どこで始まった?
ヨガの哲学について知りたい!そんな時におすすめの&書籍
向井田みお著・やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ アンダーザライト
ヨーガスートラを分かりやすくおしゃれに解説してあり初心者でも分かりやすい内容として評価の高い書籍です。
サンスクリット語で書かれたヨーガスートラを和訳したもので、図も入っており、まずヨガ哲学を知りたい人のための入門書としても良いでしょう。
綿本彰著・瞑想ヨーガ入門 実業之日本社
瞑想やヨガについて、著者の言葉で語られる書籍。ヨガの哲学を理解するのはすぐ簡単に、とはいかずとも瞑想やヨガについて意識が深まり、より良く取り入れるためにおすすめです。
伝統的なヨガや瞑想を現代人の私たちに分かりやすく解説されており、呼吸やポーズにどのような意味があるか、なども理解できます。
立川武蔵著・ヨーガの哲学 講談社
10世紀頃までの古典ヨガ、そしてそれ以降のハタヨガそれぞれの世界観、ヨガの思想や展開について書かれている本です。
ヨガの概略・思想について分かりやすく書かれており初心者にもヨガ中級者にもおすすめの書籍です。
ラマナ・マハルシとの対話 第1巻~第3巻 ナチュラルスピリット出版
インドの哲学者、ラマナ・マハルシとの対話本。真我とは何かを追求し、悟りを得たラマナ・マハルシの言葉を読める書籍です。
ダイレクトなヨガについての本ではありませんが、ヨガを深めて真理を追求したい人におすすめ。
ヨガの哲学を知ってもっと深くヨガと関わろう!
ヨガ哲学と聞くと宗教なのではないか?怪しくないか?という疑念を持つ人もいるかもしれませんが、そうではないことが知識を得ることで理解できるでしょう。
自分とは何か?ということに目を向けること、そしてヨガの教義に沿った生活をすることでこれまでに経験のない意識の変化を実感する人もいるでしょう。
ヨガの哲学や思想を知ることで、よりヨガに対しての理解が深まります。ぜひ1度ヨガの哲学について書かれた本に目を通し、自分自身のヨガライフを深めてみましょう!
・ヨガインストラクター17人に聞いた!おすすめのヨガ書籍リスト【哲学・瞑想・その他編】