もくじ
身体の柔軟性・筋力は人それぞれ
ヨガに関心があり、定期的にポーズを練習している人なら、一度は『自分の〇〇(←身体の部位)がもう少し柔らかければ、このポーズが上手くできるのに…』と思った事があるでしょう。また、柔軟性が高い人でも、ヨガの練習を深める中で、筋力・体力の足りなさを感じ、それゆえ自分のポーズの安定感に不安を感じることもあるでしょう。
しかしながら、多くのヨガの先生がおっしゃるように、『キレイにポーズをとることがヨガの目的ではない』のです。表現は色々あると思いますが、ポーズをとる本来の目的は、『ポーズの練習を通して自分自身への理解を深める』ことだったり、『瞑想にしっかりと取り組めるような健全な精神と肉体を作ること』だったりします。
体が柔軟な方ほど、ぱっと見のヨガのポーズ(特に座りポーズ)は美しく決まりますが、人の柔軟性は人それぞれ。骨格・筋肉の付き方やその量・ケガ歴・生活スタイルなど、あらゆる要素でその人の柔軟性は決まります。また性別による影響もあります。体力や筋力も同様に人それぞれですね。ヨガの先生、スタジオレッスンで隣にいる人、そしてあなた。みんな違う人間です。最適なポーズの深さが異なるのは当たり前ですね。
じぶん観察を楽しもう♪
例えば、あなたが立って前屈をするとしましょう。目の前のヨガ本には、先生が平らな背中のまま手の平がぴったりと床についているお手本写真が。でもあなたは指先さえも全く届かない。そこで床に指先を届かせようと必死になります。その結果、なんとか指先は届いたけれど、腰も背中も丸まっている。そして胸もお腹も縮こまっているので気持ちよく呼吸ができず、なんだか苦しい…なんてことに。もっと無理をしていたら、背中をケガしていたかもしれません。心地よさを目指してヨガを始めたつもりが、これでは逆方向ですね。
そのポーズへの取り組み方、変えてみましょう!
まずは今ある身体の状態にフィットするポーズの形を見つけましょう♪(その形を見つけるヒントは後ほどお伝えします。)
そして、そのポーズを無理のない範囲で繰り返し行ってみましょう。ポーズに無理な力みが伴っている時、意識はそのポーズを保つことだけに向きがちですが、無理を抑えると、呼吸も気持ちもリラックスして、自分の心と体をじっくり観察できるようになってきます。気持ちがリラックスすると、筋肉の無駄な力みが抜け、安全を保ちながら身体を開いていく(柔軟性を上げる)ことに繋がります。肉体には、繰り返しの練習で筋力が増し、それにより柔軟性が高まるという面もあります。その他、日毎の心身の変化にも敏感になるので、身体の柔軟性だけでなく、その日の呼吸の深さや集中力の度合、気持ちの状態にも気づきを得られるかもしれません。
『お手本に到達するには自分はコレが足りない・硬い』という見た目の比較やマイナスな思いにとらわれるのではなく、じっくりとじぶん観察ができると、ヨガが更に楽しく有意義なものになりますね!
今ここにいる自分のためのポーズを
では、今ここにいる自分にフィットするポーズの形を見つけていきましょう。ヨガの大前提は『心地よく快適である』こと(ヨーガ・スートラ第2章46より)。お家にあるモノも活用して、体が硬くても/力が足りなくても、安全に心地よくポーズをとれるヒントをお伝えします!完成形ポーズをとるためのポイントとなる身体パーツ毎に、関連ポーズを挙げながらご紹介していきます♪
1.股関節が左右に開きづらいあなたへのヒント
①合せきのポーズ(バッダ・コナーサナ)
通常の合せきのポーズ(バッダ・コナーサナ)はこちら↓
個人差はありますが、多くの場合、膝が床から浮くので、お尻の坐骨と足の小指側の縁が土台になります。その結果、ポーズに不安定さを感じることも。また、そけい部を引き込む力が足りないと腰が簡単に丸まってしまうポーズでもあります。
こうしてみよう!合せきのポーズ(バッダ・コナーサナ)↓
膝の高さをそけい部の高さと揃えるか又は低くし、さらに膝下に支えを入れて床を押せるようにすると、土台の安定感がグッとアップします。畳んだ毛布をお尻の下に重ねたり、丸めた毛布を膝下に入れてあげたりしましょう。股関節を開くには内ももの柔軟性や骨盤を起こすための腸腰筋の強さ等が必要であるほか、股関節の骨の形状も柔軟性に大きく関わっています。自分にピッタリの開き具合を見つけていきましょう♪
お尻の下に畳んだ毛布があると、下の写真のように腰を気持ちよく伸ばしながら前屈することもできます!
②三角のポーズ(ウッティタ・トリコナーサナ)
通常の三角のポーズ(ウッティタ・トリコナーサナ)はこちら↓
上体を倒して手を床や足首に付くには、股関節の柔軟性や下半身の筋肉の柔軟性が必要になります。無理して手を下ろすと、背中が丸まったり前脚の膝が曲がってしまったりする原因に。両体側をまっすぐキープするには、胴体のコアの筋肉もしっかり働く必要があります。
こうしてみよう!三角のポーズ(ウッティタ・トリコナーサナ)↓
まずは、写真のようにそけい部に手をあて、股関節を折りたたむ意識を持ちながら無理のない範囲で上体を倒してみましょう。足の開き方もはじめは控えめでOK。伸ばす腕の方向は、写真のように体側の延長線上でも天井でも構いません。肩が楽な方向へ伸ばしましょう。
下の手を椅子の座面に置くのもオススメです。肘の曲げ具合でポーズの深さを調節できます。椅子という土台が加わるので、ポーズの負荷が全体的に軽減され、バランスもとりやすくなっています。
➂英雄のポーズ2番(ヴィラバドラーサナⅡ)
通常の英雄のポーズ2番(ヴィラバドラーサナⅡ)はこちら↓
よく『膝が直角になるまで腰を下ろして』って指示されますが、結構大変じゃありませんか?下半身やコアの筋力に加え、股関節を開く柔軟性が不可欠なポーズです。
こうしてみよう!英雄のポーズ2番(ヴィラバドラーサナⅡ)↓
股関節を真横に開くのが辛い場合は、膝を曲げる側の足を斜め前方に出して、股関節の開きを抑えます。また、足幅は狭くした方がポーズの負荷が軽くなります。
④半月のポーズ(アルダ・チャンドラーサナ)
通常の半月のポーズ(アルダ・チャンドラーサナ)はこちら↓
軸脚でバランスをとり、床につく手はあくまで補助的に身体を支えます。完成形に近づくには『軸脚の股関節のの柔軟性』と『軸脚の力強さ』を両立させ、バランスを保ちながら上半身(胸)を開くことが大切です。
こうしてみよう!半月のポーズ(アルダ・チャンドラーサナ)↓
2.股関節が前後に開きづらいあなたへのヒント
①三日月のポーズ(アンジャネアーサナ)
通常の三日月のポーズ(アンジャネアーサナ)はこちら↓
上半身と下半身をつなぐインナーマッスルである腸腰筋をストレッチ・強化するポーズですが、腸腰筋のこわばりが強いにもかかわらず脚を前後に無理やり開くとポーズが歪んでしまいます。腰痛の原因になることも。
こうしてみよう!三日月のポーズ(アンジャネアーサナ)↓
まずは椅子(あればヨガブロックのような支えでもOK)に手を置き、腰の位置は高めに。骨盤を立たせ、腰を伸ばしながらポーズに取り組みましょう。胸を開けるように、椅子は身体の前ではなく脇に置きましょう。
②英雄のポーズ3番(ヴィラバドラーサナⅢ)
通常の英雄のポーズ3番(ヴィラバドラーサナⅢ)はこちら↓
このポーズは、両脚を前後に開く為に軸脚の太もも裏の柔軟性が求められます。もちろんバランス感覚、そしてバランスを保つためのコアの筋力も必要です。
こうしてみよう!英雄のポーズ3番(ヴィラバドラーサナⅢ)↓
3.もも裏(ハムストリング)が硬いあなたへのヒント
①立位の前屈(ウッタナーサナ)
通常の立位の前屈(ウッタナーサナ)はこちら↓
もも裏のほかお尻の筋肉のこわばりが原因で難しさを感じる方が多いこのポーズ。そけい部を奥に引き込む力(腸腰筋の作用)も必要です。
こうしてみよう!通常の立位の前屈(ウッタナーサナ)↓
膝を伸ばしたまま無理やり上体を倒そうとすると、もも裏が硬い人は背中が丸まり脚の力が抜けてしまいます。そんな時は膝を曲げてお腹と前ももをくっつけるようにし、両体側を気持ちよく伸ばしましょう。更に重心をつま先方向へ移すようにすると、前ももの筋肉が働くと同時に脚の後ろ側やお尻がストレッチされ、ポーズの効果が高まります。
②座位の前屈(パスチモッタナーサナ)
通常の座位の前屈(パスチモッタナーサナ)はこちら↓
上述の①立位の前屈を90度回転させただけなので、ポーズの取り組み方は同じです。しかし、お尻~かかとが床につくため、前屈が苦手な人は立位の前屈よりも難しく感じるでしょう。無理に上体を倒すと腰をケガすることも。
こうしてみよう!座位の前屈(パスチモッタナーサナ)↓
腰が丸まらないように、お尻の下に畳んだ毛布を重ねて敷いたり、あえて膝を曲げたりして、ストレッチの強さを調整しましょう。
➂サギのポーズ(クラウンチャーサナ)
通常のサギのポーズ(クラウンチャーサナ)はこちら↓
こうしてみよう!サギのポーズ(クラウンチャーサナ)↓
②座位の前屈と同じように腰の下に毛布を重ねると、腰をまっすぐ伸ばしながら片脚を上げやすくなります。土踏まずにタオルをかけ広げ、腕に長さを足してあげましょう。肘を左右に張り、胸を開きましょう。
腰の下に毛布で高さを作ってあげると、土台になる脚も作りやすくなります。太ももを内側に回すのが苦手な方や足首が硬い方でも安心して取り組めます。
4.前もも(大腿四頭筋)が硬いあなたへのヒント
①仰向けの英雄座(スプタ・ヴィラーサナ)
通常の仰向けの英雄座(スプタ・ヴィラーサナ)はこちら↓
前ももが気持ち良く伸びるポーズですが、その前ももが硬いと、腰が大きく反れて上半身が不安定に。腰痛の原因にもなりかねせん。
こうしてみよう!仰向けの英雄座(スプタ・ヴィラーサナ)↓
写真のように重ねた毛布に上半身を預けるようにすると、腰の反りを軽減でき、胸も気持ちよく開きます。膝を床に下ろす意識を持ち続けると、程よい強さで前もものストレッチができます。
5.足首が硬いあなたへのヒント
①仰向けの英雄座(スプタ・ヴィラーサナ)・その2
こうしてみよう!仰向けの英雄座(スプタ・ヴィラーサナ)・その2↓
このポーズは前項でもご紹介しましたが、足首もキーポイントとなるポーズです。足首を伸ばし、脚の甲で床を押す意識が大切です。足首の前側が伸びると辛い方は、巻いた毛布またはバスタオルを足首の下に入れてあげましょう。
似たポーズとして、上体を起こした英雄座や正座でも同じように支えを入れるとよいでしょう。
②下向きの犬のポーズ(アド・ムカ・シュバナーサナ)
通常の下向きの犬のポーズ(アド・ムカ・シュバナーサナ)はこちら↓
ダウンドッグって、かかとが床に届かないと結構辛いですよね。しかしながら、上半身を気持ちよく伸ばし、胸を開いて深く呼吸するには、かかとで床を押すことが大切です。
こうしてみよう!下向きの犬のポーズ(アド・ムカ・シュバナーサナ)↓
かかとの下に巻いた毛布やタオルを挟んでみましょう。かかとで床を押す感覚が生まれるのでポーズが楽になります。
なお、ダウンドッグは前屈ポーズの要素も持つので、お尻・もも裏・ふくらはぎなど、下半身の後ろ側の硬さが原因でかかとが床につかない場合もあります。上で述べた、『3.もも裏(ハムストリング)が硬いあなたへのヒント』を参考に、膝を曲げることでポーズの負荷をゆるめることもできます。自分に合う方法を探してみて下さい!
③マーラーサナ(花輪のポーズ)
通常のマーラーサナ(花輪のポーズ)はこちら↓
足首が硬いと重心が後ろに傾き、転がり兼ねないポーズです。股関節の柔軟性も必要です。
こうしてみよう!マーラーサナ(花輪のポーズ)↓
6.肩回りが硬いあなたへのヒント
①背中で合掌(リバース・ナマステ)
通常の背中で合掌(リバース・ナマステ)はこちら↓
体側を強く伸ばすポーズ(パールシュボッタナーサナ)などで作る腕の形ですが、無理やり行うのは肩回りや手首に負担がかかり危険です。
こうしてみよう!背中で合掌(リバース・ナマステ)↓
背中で手を合わせることよりも、腕を後ろに回すことで左右の肩甲骨が中央に寄り、その結果胸が開くというプロセスを重視しましょう。写真のように、反対の腕の手首や肘をつかむ段階から始めてみましょう。
また、ここから上体を前に倒すときは、腰から体側が伸びて胸が開くよう、肩先は空へ引き上げ続けましょう。
②鷲(わし)のポーズの腕(ガルーダーサナ)
通常の鷲のポーズの腕(ガルーダーサナ)はこちら↓
肘を完全に交差させるには、肩甲骨回りの柔軟性が必要になります。
こうしてみよう!鷲のポーズの腕(ガルーダーサナ)↓
反対側の肩をつかみ、背中にある左右の肩甲骨を背骨から引き離すように意識してみましょう。7.背中が硬いあなたへのヒント
①ラクダのポーズ(ウシュトラーサナ)
通常のラクダのポーズ(ウシュトラーサナ)はこちら↓
かなり強く上体を反らすポーズです。『背中がカチコチでうまく反れない』のいう場合に、指先でかかとをタッチするのは腰が過剰に反れて危険ですよ。
こうしてみよう!ラクダのポーズ(ウシュトラーサナ)↓
まずはお尻に両手をつき、肩先・肘先を寄せ合って胸を開き、みぞおちを引き上げるつもりで背中の上部を反らすことに意識を向けましょう。
②上を向いた犬のポーズ(ウルドヴァ・ムカ・シュバナーサナ)
通常の上を向いた犬のポーズ(ウルドヴァ・ムカ・シュバナーサナ)はこちら↓
完成形は背中を引き締めて胸を強く反らすだけでなく、足の甲と手の平だけを土台にして全身の筋肉を使う力強いポーズです。太陽礼拝にも含まれているので、1回のヨガクラスの中で何度も繰り返す場合もあるでしょう。
こうしてみよう!上を向いた犬のポーズ(ウルドヴァ・ムカ・シュバナーサナ)↓
背中が硬いと胸の反りが足らず、腰を圧迫しがちです。まずは恥骨でも床を押すコブラのポーズ(下1枚目の写真)、更に上体を下ろしたベイビーコブラのポーズ(下2枚目の写真)で慣らすことから始めましょう。
自分らしさを楽しんで
いかがでしたか?心地よい自分らしいポーズの形、見つけられそうですか?
実は、ヨガのポーズを自分に合った深さで取り組めることは、柔軟性の高さや高度なポーズをマスターできること以上にヨガ練習生として成熟している証拠とされることもあります♪その瞬間瞬間の自分らしいポーズの積み重ねが、あなたのポーズをより深くしていく近道となるでしょう。
ここでは『身体が硬かったり、筋力が弱かったりしてもヨガを楽しむ』というテーマで話を進めましたが、その瞬間瞬間の体調を尊重してヨガを楽しむことも大切ですね。疲れていたらアップドッグをベイビーコブラにするなど、ここでご紹介したヒントがあらゆる場面でお役に立てたら嬉しいです。