もくじ
アーサナの王様
『逆立ちは美容に良い』なんて聞いたことがあるかもしれません。その通り、美容面だけでなくメリットいっぱいのヘッドスタンド。まさにアーサナの王様、ぜひ挑戦してみたいですね!とはいえ、何の支えもなく頭と足が逆さになるなんて、倒れてしまいそうで怖い方も多いはず。また、通常と180度逆転した状態で姿勢を保つには、それなりの全身の筋力やバランス感覚が必要となります。このポーズに取り組むには精神面・肉体面の両方において準備が必要なのです。
本来、基本的なヨガ練習の積み重ねで心身の準備は整ってくるものですが、ここではヘッドスタンドに必要な要素を強化できる準備ポーズもご紹介します。あこがれのヘッドスタンドに少し近道できるかもしれません♪
【ご注意】ケガを避けるため、初めてこのポーズを練習する時は指導者のもとで行いましょう。ここでご紹介する内容は、自己練習へのヒントとしてお役立てください!
主な効果
意識を全身隅々に向けるヘッドスタンドには次のような効果があるとされています。
- 背骨・腹部・腕・脚の筋力強化
- 消化力を高める
- 血行促進
- ホルモンの分泌腺を刺激
- 下肢静脈瘤の軽減
- 脚のむくみの軽減
- 心を落ち着かせる
- 集中力アップ
禁忌
以下の症状がある方は、練習を控えてください。
- 首腰・肩・腰のケガ
- 高血圧
- 頭痛
- 緑内障
- 網膜剥離
- 生理中
- 妊娠初期(それ以降も、妊娠前から練習を積んでいる方以外は厳禁)
準備ポーズ5選
さあ、『180度上下逆転の世界・ヘッドスタンド』へ無理なく入っていけるように、まずは次の基本ポーズ達で心と身体を準備していきましょう!
※ポーズはゆったりとした鼻呼吸をしながら行いましょう。
※食後2時間程度空けてから練習しましょう。
1.牛の顔のポーズ(上半身のみ)
上半身(肩・腕)の取り組みをこれで確認します。
キープ時間:左右各5呼吸×1セット
【やり方】
- 正座で座ります。
- 右腕を前へ伸ばします。手の平は上向き。
※肩が内に入らないように姿勢を正して行いましょう。 - 左手で右の二の腕をつかみます。
- 吸いながら、二の腕を外側に回しながら、ひじを天井に(ひじは曲げる)。
- 吐きながら左腕を後ろに回し、ひじを曲げます。
- 両手をつなぎます。
※鎖骨を左右に広げ、肩はリラックスして耳との自然な距離を保ちましょう。 - 背すじを伸ばしながら、正面を見てポーズをキープ。
※両ひじとも、肩より外にはみ出ないコンパクトな状態でポーズを保ちましょう。
※両手をつなげない場合は、タオル等を使って腕の長さを足してあげましょう(写真はヨガストラップ)。 - 吐きながら、両手を解放します。
- 左右反対にして、同様に行いましょう。
【ヘッドスタンドにつながるコツ】
上にくる腕の『二の腕を外に回した状態』が、まさにヘッドスタンドの土台となる肩と腕の状態です。
二の腕の骨を外に回すと、腕・肩・胴体のつながりが強まり、上半身が安定します。
※ちなみに、ダウンドッグの腕と肩も同じ取り組み方です♪
2.ドルフィンポーズ
肩と腕の取り組み+逆転の感覚に慣れるためのポーズ。
キープ時間:5呼吸×2セット(基本ポーズ、応用ポーズ左右それぞれ)
【やり方】
- 四つん這いから両ひじを床に付き、手を組みます。つま先は立てましょう。
※牛の顔のポーズで練習した『二の腕の外回し』を行いましょう!
※ひじは肩の真下に置きましょう。 - 吸いながら、お尻を天井高くに持ち上げます。
※そけい部をぐっと引き込み、お尻の先を天井へ突き上げます。 - 吐きながら、カカトをできるだけ床へ下ろしていきます。同時に首筋を伸ばして視線を両足の間へ。
※頭頂~お尻の先を一直線に保てる範囲でカカトを下ろしましょう。 - ポーズをキープします。
※手首~ひじ、足裏で強く床を押し続けましょう。 - ここからは応用ポーズ。
少しずつ両足を前へ歩かせ、腕と足をできるだけ近づけます。 - 吸いながら右脚を天井方向へ伸ばし、ポーズをキープ。
- 吐きながら右脚を下ろします。
- 左脚も同様に6&7を行いましょう。
- 両足を後ろへ歩かせ元の位置に戻ったら、吐きながら両ひざを床に下ろし、チャイルドポーズで数呼吸お休みします。
【ヘッドスタンドにつながるコツ】
腕・肩の状態はヘッドスタンドと同じです。床に接している前腕の手首~ひじで強く床を押していきましょう。
さらに、片脚ずつ天井へ伸ばすことで、ヘッドスタンドと似た『脚が重力から解放されるような感覚(逆転の感覚)』を味わうことができます。視線の届かない場所へ脚を伸ばすヘッドスタンドだからこそ、視覚を補う繊細な感覚が大切です!
3.ドルフィンプランク
揺るがないコアを養って、チャレンジする自信をつける為のポーズ。
キープ時間:5呼吸×2セット
【やり方】
- (マット前方に)四つん這いから両ひじを床に付き、手を組みます。つま先は立てましょう。ひじの真上に肩がきます!
- 肩をひじの上に保ちながら、両足を片脚ずつ伸ばしていきます。
※肩と耳を離し、脇をしめる意識をもって体側の筋肉を働かせましょう。 - 以下のポイントに注意しながらポーズをキープしましょう。視線は前方の床。
①手首~ひじで床を押し続ける
②胴体~お尻の先までが床と平行になるように、背すじを伸ばす
③足裏が床と垂直になるくらい、かかとを押し出してひざを伸ばす - 片ひざずつ曲げてポーズから抜け、四つん這いに戻りましょう。
【へッドスタンドにつながるコツ】
普段、下半身の上に上半身がのっている私たちの身体。その関係性が真逆になる事から生じる不安を解消するには、下半身が安心する上半身を作ってあげることが大切。自分の胴体が満タンの缶ジュースになるのをイメージして、前面・背面・左右の側面のすべてを同じ力加減でまっすぐに伸ばしましょう。空き缶のようにクシャッとなってはいけません!
4.船のポーズ
腸腰筋に働きかけるコア強化ポーズ。
キープ時間:5呼吸×2セット
【やり方】
- 両ひざを立てて座り、お尻の後ろに手をついて上体を支えます。
- 吸いながら、上体をやや後ろに倒しつつ背すじを伸ばし、同時にひざを伸ばして足を持ち上げます。
※ひざを伸ばすことよりも、そけい部をしっかり引き込み腰を伸ばす(丸めない)事を優先しましょう。 - 両手を床から離して前方に伸ばします。
※肩先を後ろに引いて胸を開きましょう。 - つま先を見ながらポーズをキープ。
- 吐きながら両手・両足を床に下ろし、ポーズから抜けます。
【ヘッドスタンドにつながるコツ】
このポーズと先ほどのドルフィンプランクとの大きな違いは、身体をV字に曲げる点です。ここで使われる股関節を曲げる筋肉(腸腰筋)は、脚を真上へ伸ばし続ける為のバランス維持に重要です。お腹部分の筋肉だけに頼らず、そけい部にも意識を向けて行いましょう!もちろん、胴体は満タンの缶ジュースをイメージして取り組みましょう。
5.仰向けの足上げのポーズ
両脚に『軸(じく)』を覚えさせるためのポーズ。
キープ時間:5呼吸×2セット
【やり方】
※写真にあるような、足裏にのせるカゴや空き箱(A4サイズ程度の面で、落としても痛くない軽めのもの)を用意しましょう!
- ひざを立てた仰向けになります。
- 吸いながら、ももを胸に引き寄せ、足裏にカゴをのせます。
- カゴをのせたまま両ひざを伸ばしたら、両うでを体側の床に置き、手の平を下に。手の平~肩先で床を押しましょう。
※お尻の先をできるだけ床に下ろすイメージを持ちながら、両脚を真上へ伸ばしましょう。 - つま先を見ながら、足裏のすべての箇所が均等にカゴを押せているかを観察しながらポーズをキープします。
- 両ひざを軽く曲げ、カゴを下ろしてから両足を床に下ろし、ポーズから抜けましょう。
【ヘッドスタンドにつながるコツ】
たとえ上半身が安定した土台を作っていても、上にのる下半身がグラグラしては重心が土台の外にずれてポーズが崩れてしまいます。足裏のどの箇所も、均等にカゴ(重り)を押せていますか?このポーズで脚部分の軸を強化していきましょう。つま先までキレイに伸びたヘッドスタンドへ近づく為にオススメのポーズです。
いよいよ、ヘッドスタンドに挑戦!
ここまでの準備ポーズ、いかがでしたか?ご紹介したコツ(=身体への意識の向け方)をつかめたら、まずは壁の前でヘッドスタンドの練習を始めましょう!壁に向かって座り、壁から10~20センチ離れたところで手を組みます。
壁を使って練習するメリットは以下の通り。
- 転倒によるケガを防げる
- 壁も支えにしながら、肉体面も精神面も徐々に無理なくポーズに慣れていくことができる
しかしながら、壁のない状態で心身ともに『自立』してポーズと向き合うことも非常に大切です。
急ぐ必要は全くありません。でも自立のタイミング(=身体が逆転した状態でも落ち着いて上下左右の判断ができ、リラックスして呼吸ができ、壁に頼らずポーズを保てるようになった)のを感じとったら、その時は壁から離れてチャレンジしてみましょう。
ヘッドスタンドのやり方
さあ!壁の前、あるいは何もないところで、下記の手順でやってみましょう!!
1.土台を作る
つま先を立てた四つん這いから始めましょう。
【手】・・・ひじを床に下ろし、指を自然に組めばOK。ポーズに慣れると、指を組まずに両指を前後に重ねるだけの方もいるそうです。左右の手のつけ根は離し、ポーズをとる時は下の写真の赤丸部分に後頭部を当てていきます。
【うで】・・・ドルフィンプランクを思い出し、ひじは肩幅を保ちます。手首~ひじで強く床を押しましょう。
【肩】・・・ドルフィンプランクを思い出し、肩と耳を程よく離します。牛の顔のポーズを思い出し、二の腕を外に回して脇をしめましょう。
【頭頂】・・・頭のてっぺんを床に下ろします。おでこ寄り、後頭部寄りにならないように気を付けて。親指のつけ根のふくらんだ部分を後頭部に当てましょう(上の手の写真)。
2.足を浮かせる
① 吸いながら、腰を引き上げ、背すじを伸ばします。
② そけい部を引き込む意識を持ちながら足を前へ歩かせようとすると、自然と足が浮いてきます!
③ ひざを曲げ、太ももを床と平行に近づけていきます。脚の体重が上半身に乗り切ったのを感じましょう。
※ドルフィンプランクを思い出し、胴体の全面を力強く伸ばします。
※壁を使った練習を始めて間もない方は、まずはここまで練習すればOKです!
3.ひざを伸ばす
① バランスを取りながら、少しずつひざを伸ばし、足を天井方向へ。ゆったりした呼吸を続けましょう♪
※胴体とそけい部のコアの筋肉をバランスよく働かせ、ポーズを安定させます。
※仰向けの足上げのポーズを思い出してブレない脚を保ちましょう。② 脚が伸びたら、深い呼吸をしながらポーズを保ちます。はじめは数呼吸キープする程度にし、だんだんと時間を伸ばしていきましょう。
※ 壁を使う場合は、壁に脚をあずけてポーズを保っても構いません。
4.ポーズから抜ける
① コアを意識しながら、ゆっくりと両足を床に下ろしてポーズを終えます。
② 必ず、そのままチャイルドポーズになってお休みしましょう。
※突然上体を起こすと、血圧が急激に変化し危険です!
番外編:転倒に備えて・・・
壁から離れて練習するようになると、バランスを崩して倒れてしまうこともあると思います。後ろに倒れるのが怖いから、脚をバタバタさせて横に倒れてしまったり。そんな場合を想定して、私の経験からのアドバイスです。
- 手指をほぐしておきましょう!・・・指を組んで土台を作るので、どの方向に倒れたとしても指は組んだままになることが多いです。そのため、負荷がかかって指を痛める可能性もあります。あらかじめ手指をほぐしておくと安心です♪
- ブリッジの練習をしておきましょう!・・・ブリッジといっても、土台をヘッドスタンドと同じ状態にしたブリッジです。後ろに倒れた場合に近い身体の形を作ることで、『倒れたときってこんな感じか』とイメージができて安心できるはず。通常のブリッジから、ひじを曲げてヘッドスタンドの土台を作るようにして練習します。
上記2点を提案しましたが、まずは必ず壁の前で心ゆくまで練習をし、自分の身体と心について色々と気付きを得てください。その後でタイミングを見計らって壁から離れてみてくださいね。
まとめ
いかがでしたか?『ヘッドスタンドは基本的なポーズの積み重ね』という事を実感していただけたと思います。流派や先生によって、ポーズの入り方、抜け方、重要視するアライメント(ポーズの形=骨格の位置)等、細かい点は異なりますが、ここで書かせていただいたコツやポイントがあなたの練習に少しでも役立ちますように♪
はじめは怖くてドキドキ、興奮しがちなヘッドスタンド。自分の心身の状態を大事にしながら、穏やかな心で楽しく練習しましょう!