もくじ
アーユルヴェーダ的な食事法
アーユルヴェーダ(Ayurveda)はサンスクリット語で、「生命の科学」という意味です。5千年もの歴史のあるインドの伝統医学・予防医学です。
生活様式全般にわたる理論・知識を伝えるアーユルヴェーダの中でも、食事は特に重要です。「医食同源」です。
アーユルヴェーダ食事法のポイントを以下2つに絞ります。
- 消化力(アグニ)を強く保つこと
- 自分の体質に合った食事をすること
2つ目のポイントの「自分の体質」とは、本来生まれ持っている性質(プラクリティ)とは限りません。今この瞬間、乱れている性質(ドーシャ)のことでもあります。
アーユルヴェーダの食事法の基礎と、食事法における8つのポイントは、別の記事で紹介しておりますので、そちらをご覧ください。
アーユルヴェーダって何?ドーシャ診断とは?基礎知識編
話題のアーユルヴェーダ式食事法って!?押さえるべき8つのポイント【前編】
話題のアーユルヴェーダ式食事法って!?押さえるべき8つのポイント【後編】
体質に合った食事を摂る
体質のことを、アーユルヴェーダでは「ドーシャ」といいます。宇宙にあるすべての物質は以下、3つの質(トリ・ドーシャ)の影響を受けています。
ヴァータ | 空、風の元素をもつ | 運動のエネルギー |
ピッタ | 火、水の元素をもつ | 変換のエネルギー |
カパ | 水、土の元素をもつ | 結合のエネルギー |
私たちの体質にもドーシャがあり、その割合は受精の瞬間に決まるとされ、一生変わることのない本質(プラクリティ)です。ドーシャの割合や、その時乱れているドーシャは一人ひとり異なります。アーユルヴェーダでは、ドーシャのバランスを乱さない食事を摂ることを推奨しています。
風に象徴されるドーシャ「ヴァータ」
ヴァータの特徴について、簡単におさらいしましょう。
身体的な特徴
華奢、極端に背が高いか低い、肌や髪が乾燥しやすい、細い目・ドライアイ、胸が薄い、関節がポキポキ鳴る、唇が乾燥しやすい、浅黒い肌、舌は細長く震えている
心理的な特徴
好奇心旺盛、活動的で芸術に興味が高く創造的、おしゃべり、飽きっぽく一つのことを継続できない、動作が軽快で素早い、疲れやすい、早口、常に何かを考えていて落ち着かない
ヴァータが乱れている時の特徴
不安になる、消化不良、食欲がなくなる、便秘になる、生活が不規則になる、冷え性、腰痛、神経痛、しびれ、落ち着きがない、思考がまとまらない、不眠
ヴァータを増やさないために気をつけること
ヴァータ体質の人、ヴァータ体質でなくてもヴァータが乱れている時の特徴に自覚がある人は、ヴァータを増やす原因を取り除く必要があります。たとえば次のようなことを心がけましょう。
- 移動を減らす/乗り物に乗りすぎない
- 規則正しい生活をする
- 夜更かししない
- 動きすぎない
- 軽いもの、乾燥したもの、冷たいものを食べない
- 食事を抜かない。決まった時間に食事をする。
- 風に当たりすぎない
- 身体を冷やさない
ヴァータのための食事法
「似たものが似たものを引き寄せ、反対の性質がバランスを取る」
この考え方を覚えていますか?
前述のヴァータの特徴─すなわち「軽」「冷」「乾」「動」─を踏まえると、どんな食材を使うにしろ、ヴァータを乱さないためには次のような点に気をつけると良いでしょう。
- どの料理にもオイルを使う
⇒内側から乾燥を防ぐため。
オイルの潤滑性により排泄を助けてもらいましょう。オイルはギーがおすすめですが、ごま油も向いています。ココナッツオイルは「冷」の性質のため、特に冬の時期、ヴァータの人は避けた方が良いでしょう。 - グラウンディングさせてくれるものを摂る
⇒心と身体をしっかりと落ち着かせるために、私たちに栄養を与えてくれるオーグメンティングの食べ物を食べましょう。
【オーグメンティングの食べ物】
栄養を与える、増大させる食べ物のことです。主に甘味を持ち、ほとんどの穀物、甘味のある野菜が当てはまります。 - 軽くてふわふわしていて、冷たいものは避ける。
⇒これらのものはヴァータと似た性質のため、避けるべきです。 - 消化に良いものを食べる
⇒ヴァータは、ピッタやカパに比べて消化力が弱いため、できるだけ紹介に良いものを食べる必要があります。生姜を適量使うのがおすすめです。
不規則な生活をしていてもヴァータが上がるので、きちんと決まった時間にその時の消化力に合ったものを食べましょう。
ヴァータに合う/合わない食材
食材を選ぶ上でのポイントを以下表にまとめました。
ヴァータを鎮静する | ヴァータを乱す | |
味 | 甘味・酸味・塩味 |
辛味・苦味・渋味 |
食材 | ・身体を温めるもの (スープ、ホットドリンク、生姜) ・グラウンディングさせるもの (穀物、甘味を含む野菜:さつまいも・にんじん・かぼちゃ・ビーツ・アボカド・甘いカブ・大根、牛乳) ・オイル・油分を含むもの (ギー、ごま油、ごま、マスタードシード、ナッツ:消化に重いので少量) |
・乾燥していて軽いもの (サラダやスナック菓子類はNG。葉野菜、山菜、ゴーヤ、生のざくろ・りんご・ブロッコリー) ・ガスを発生させるもの (豆類はガスを発生させるので、少量のヒングを使うこと。ひきわりのムング豆、小豆が適しています) |
レシピ
運動・変動の要素を持つヴァータは、常に揺れ動いているので、心が不安定になりやすく、生活は不規則になりがちです。乾燥体質で、体が冷えやすく消化力も弱いです。
そんなヴァータの方を取り入れていただきたいお料理のレシピを3つ、ご紹介します。
食欲と消化を改善する「クミンライス」
所要時間:約30分
炊いたご飯に具材を入れて混ぜる「混ぜご飯」。クミンのいい香りが、香り高いバスマティと相まって、一気に上級者感を味わえる一品にしてくれます。ただし、これだけでは一食にならないと思いますので(チャーハン的な位置づけにはなりません)、カレーやスープ、炒め物など付け合わせを用意しましょう。玉ねぎとニンニクは、可能であれば材料から省きましょう。
特筆すべき食材とその効能
★クミンシード (V↓↓P↑K↓)
クミンはメディアにも取り上げられ注目されていますが、たくさんの効能があります。
冷ます性質があり、食欲と消化を改善し食べ物の味を良くします。駆風作用があり、胃と腎臓(腎臓の機能については後述)を守るとされます。
また、体内にある過剰な糖がタンパク質と結びついて起こる老化のメカニズム「糖化」を抑える力があります。糖化が進むと、肌の老化をはじめ、認知症や骨粗しょう症、動脈硬化などの症状をすすめます。クミンは、余分な糖の吸収を抑えることや、糖とたんぱく質が結合するのを阻害することが実証されてきています。
(注)ただし、「適量」を摂りましょう。
前述の「腎臓」の働きは以下の通りです。
- 老廃物を体から追い出す
- 血圧を調整する
- 血液を作る司令塔
- 体液量、イオンバランスを調整
- 強い骨を作る(活性型ビタミンDをつくる)
材料(1人分)
- バスマティライス……おわん一杯
- クミンシード……小1/2
- ギー……小1
- にんにく(みじん)……1片
- 玉ねぎ……少し
- カレーリーフ……2,3枚
- 岩塩……少々
レシピ
- ごはんを炊く(水の量は普通に日本米を炊くときと同じ感覚で良いです)
- 小さな鍋かフライパンにギーを温め、クミンシードを炒める。
- 香りが立ってきたら、にんにく、玉ねぎ、カレーリーフを加え、軽く炒める。
- 3.を炊いたごはんに加えてざっくりと混ぜ合わせる。
ドーシャ別のポイント
ヴァータ | みじん切りか、すりおろした生姜もクミンシードと一緒に炒めるとなお消化が助けられます。ギーの量を増やしても良いです。 |
ピッタ | ラジャス(激性)のあるにんにくと玉ねぎは除いてもいいです。 |
カパ | ヴァータと同じく生姜を入れても良いです。 |
ほっと落ち着く甘さ「ビーツのスープ」
所要時間:約50分
ポタージュ的なスープです。見た目の華やかさとは裏腹に味は素朴です。とろみは水の量を変えることで調整できます。女性に良い成分を多く含む、おすすめのスープです。玉ねぎはラジャス性、タマス性(それぞれ激性と鈍性)があるので、可能であれば除きましょう。
特筆すべき食材とその効能
ビーツ(V=P=K=)
ビーツは甘く、冷たい性質をもち、血液の質を高めます。消化が良く子供や貧血、生理不順の女性にもおすすめ。糖尿病、肝臓が弱い人は控えます。
材料(2人分)
- ビーツ……小1(150g)
- 玉ねぎ……少し(小1/4くらい)
- ギー……小1
- 全粒粉……5g
- 水……300cc+65cc(ミキサーについたペーストをお湯で流し入れるので、最初は少なめでOK)
- 塩……少々
- プレーンヨーグルト……適量
レシピ
- ビーツは皮をむいて1~2cm角・薄切りにする。
- 鍋にギーを入れ、玉ねぎを加え透明になるまで炒める。
- 2.に全粒粉を加えよく炒めたらビーツを加え軽く混ぜる。
- 水300㏄(に満たない量)を加えて蓋をしビーツが柔らかくなるまで煮る。
- 水65ccを入れ、煮立ってきたら火を止める。粗熱がとれたらミキサーにかける。
- 食べる前に温めなおし、塩で味を調える。器によそったら、なめらかにしたプレーンヨーグルトを流す。
ヴァータにおすすめのドリンク「ハニージンジャー」
ジャンジャーティーはヴァータ体質の人にオススメです。市販のハーブティーでもよいですが、おうちでも簡単にできるレシピはいかがでしょうか。はちみつを入れて、ほっとした甘さに仕上がります。
材料(2人分)
- 生姜……薄切り(10g)
- はちみつ……大2
レシピ
- 生姜を薄切りにする。
- 鍋に水2.5カップを沸かし、生姜を入れる。弱火で10分ほど煮出す。
- 器に入れて、温度が40度(人肌くらい)になるのを待ってから蜂蜜を入れる。
いかがでしたでしょうか?
極端なヴァータの乱れがみられる人は、調理した食事にオイルをかけながら食べても良いくらいです。
また、食事以外にも、オイルマッサージが有効です。オイルマッサージしてからお風呂に入り、内側から潤してあげましょう。
特に冬は、ヴァータの季節で、気候的にも乾燥して冷えますので、ヴァータが高まりやすいです。家で温かいジンジャーティーを飲みながら、ゆっくり休んでくださいね。
イラスト・写真:aki