もくじ
キービジュアル:水野香織さん主催「アーユルヴェーダお料理教室」にて
夏の滋養アーユルヴェーダランチ
アーユルヴェーダ式食事法 前半のおさらい
アーユルヴェーダ、その食事法で大切な1~4つのポイントについて、おさらいしましょう。
アーユルヴェーダとは:
古代インドで伝承されてきた、実経験に基づく東洋医学です。歴史ある予防医学・治療法・生活全般にわたる知恵であり、西洋医学が対処療法であるのに対し、アーユルヴェーダは病気を治療するというよりも、健康を維持する目的の予防医学です。
アーユルヴェーダの特徴は、私たちの身体の個性を大きく三つの体質(トリ・ドーシャ)─ヴァータ(風・運動エネルギー)、ピッタ(火・変換のエネルギー)、カパ(水・結合のエネルギー)─に分け、それぞれに合った選択ができるよう、示していることです。
アーユルヴェーダとドーシャのより詳細な説明は以下から
アーユルヴェーダの食事法におけるポイント①~④:
- 食べる時間を決める
- 腹7.5分目
- 作り立てのものを食べる
- よく噛んで食べる・だらだら食いはしない
アーユルヴェーダとドーシャのより詳細な説明は以下から
思い出していただけましたか?
それでは、残りの4つのポイントについて見ていきましょう。
ポイント⑤ 6つの味を取り入れる
1回の食事に、6つの味が入っていると、満足感を得られ、いずれかのドーシャの性質が過剰となることを阻止できます。
6つの味とは、甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味です。
炭水化物抜きダイエットをしている人が、ご飯を食べずお肉とサラダだけを食べて、結局他の時間に甘いお菓子を食べていることはないでしょうか。多くの炭水化物はよく噛むと甘味を感じられます。炭水化物を抜いても、結局はどこかで甘味を補填したいと思ってしまうのです。
それでは6つの味について、1つずつ見ていきましょう。
甘味
水と土の性質を持ちます。私たちの基盤となるものです。甘味は、多くの穀物、果実、さつまいもやかぼちゃなどのいも類にも含まれています。自然の甘さは適量を摂取すると、生命素(オージャス)をもたらし、多量に摂取すると毒となります。
酸味
食べると唾液が出て、熱を生み出すことから、水と火の要素を持ちます。キムチやヨーグルトなど、発酵食品には酸味をもつものが多くあります。発酵食品は体に良いイメージがありまると思いますが、過剰な摂取は体に熱をもたらし、乾燥肌や若いうちにハゲるなど、肌や髪に影響します。
塩味
塩は重い性質をもち、熱を生み出すため、水と火の要素を持ちます。過剰摂取は老化を早めます。海の塩より岩塩の方が余分な熱を生み出さないとされ、推奨されています。
辛味
乾燥させ、熱を生みます。ピッタだけでなくヴァータの人も注意が必要ですが、生の生姜は推奨できます。過度に摂ると生殖器官を弱めてしまいます。
苦味
風と空の要素を持ちます。苦味はほかの味を引き立ててくれます。ヨガやアーユルヴェーダをやっている人はコーヒーを飲まないようにしているかもしれませんが、甘いものと苦いコーヒーが合うのが分かりやすい例です。苦味は解毒・排出作用がありますが、過剰摂取は必要な栄養まで出そうとしてしまいますので注意が必要です。
渋味
最初は軽く感じますがだんだんと重くなるので、風と土の要素を持っています。渋味はバナナ、リンゴ、ひよこ豆、ザクロ、柿、生野菜などにも含まれています。摂りすぎは体の中にガスを貯めます。
6味とその特徴について、だいたいイメージできたでしょうか?
食材を選ぶ時、「どんな味を持っているか」、是非考えてみて下さい。
ポイント⑥ 体質・体調にあったものを食べる
ポイント⑤で、それぞれの味がもつ要素についても軽く触れていますが、味にも五大元素(パンチャ・マハブータ)があります。私たちのドーシャ(性質)すなわちヴァーダ、ピッタ、カパのいずれかが過剰であるときは、それと同じ質を持つ味は避けた方がよいです。
ドーシャ別に言うと、辛味、苦味、渋みがヴァータを、酸味、塩味、辛味がピッタを、甘味、酸味、塩味がカパを上げるので注意が必要です。
六味とドーシャの関係性について、以下の表で確認していきましょう。
味 | 五大元素 | V | P | K | 代表食材 | 心身への◎好影響/▲悪影響 |
甘 | 水・土 | ↓ | ↓ | ↑ | 砂糖、果物、穀物 |
◎満足感、癒し/▲体重が増える。倦怠感・依存性が生まれる。 |
酸 | 火・土 | ↓ | ↑ | ↑ | 発酵食品、酢 | ◎消化促進、知性/▲熱がこもることによる胸やけ、炎症。イライラ・競争心が生まれ、批判的になる。 |
塩 | 水・火 | ↓ | ↑ | ↑ | 塩 | ◎消化促進、プラス思考/▲皮膚炎、高血圧。老化を早める。 |
辛 | 火・風 | ↑ | ↑ | ↓ | 唐辛子、スパイス | ◎発汗作用、代謝UP/▲めまい、生殖器官への影響。イライラ感、短気。 |
苦 | 風・空 | ↑ | ↓ | ↓ | 山菜、野菜 | ◎冷却作用/▲皮膚の乾燥、体力低下。落ち着きがない、寂しい、うつっぽい症状。 |
渋 | 土・風 | ↑ | ↓ | ↓ | 葉野菜、豆類 | ◎冷却・浄化作用/便秘、ガスがたまる。恐怖心の芽生え。極端に心配性になる。 |
味とドーシャの関係は、卵と鶏の関係のようでもありますね。
ドーシャが乱れたから、その味がほしくなったのか、その味を摂りすぎたから、ドーシャが乱れたのか……
そして、みなさんの中には、自分の性質的に気をつけるべき味が、自分が普段よく食べている大好きな味である(例えばカパ体質で、甘いものが好き)、という方も多くいらっしゃると思います。
いったい、これから何を食べたらいいんだ……って思いますよね。
しかし、私たちはこれらの食べ物を絶対に食べてはいけないというわけではありません。そのような決めつけがストレスになると逆効果なので、自分の体調を見ながら普段少し気にかけてあげて、食べる時はおいしくいただきましょう。
ポイント⑦ 作るとき、食べるときのマインドの状態
食べ物は私たちの体に滋養を与えてくれます。食べる前には、席について、一度深呼吸をして落ち着いてから、その食べ物自体だけでなく、作った人、運んだ人、調理した人…その食べ物に関わる全ての人をイメージし、感謝しましょう。
食べ物をいつも、神聖なものととらえて、摂取するのです。
また、料理を作るときや食べるときのマインドの状態にも注意を向けてみましょう。何かすごく悲しいことや辛いことがあった時、また激しい怒りを抱いている時に料理をすると、それらの感情が料理の中にもこもってしまい、食べるとその感情が悪化します。人に食べさせたら、その人にもその感情がうつってしまいます。
なので、怒りながら、悲しい感情を抱きながら、料理したり、食べたりしないようにできるとベターです。愛情をもって、楽しみながら料理し、おいしくいただきましょう。
日々の生活でストレスを感じたり、不規則な生活が続いていると感じる人は、アグニ(消化の火)の力も弱まっているかもしれません。十分な栄養を取っていても、なんとなく体調が悪い、体が重いなと感じてしまうでしょう。
そういう時は、愛情を込めて誰かが作ってくれたものを、少し落ち着いてから食べてもいいですし、無理して食べずに、暖かい飲み物やスープなどを、少しずつ取るようにしましょう。
ポイント⑧ 旬のもの・土地柄にあったものを食べる
旬な食べ物はその時の私たちの体調に寄り添ってくれます。
季節ごとの例を以下の表で見ていきましょう。
季節 | ドーシャ | 食べ物 |
春 | カパ(水) | カパが優勢になる季節。カパを下げる苦味、渋味のもの、旬の山菜や、乾燥した軽い食事が向いています。 |
夏 | ヴァータ(風) | 暑く乾燥し(または湿度が高い)、消化力が下がり体力が消耗される時期なので、きゅうり、冬瓜など旬の夏野菜や果物を食べ、は体から熱を逃がしましょう。甘み、水分をたくさん含み消化の良いスイカ、マンゴーなどもオススメです。 |
雨期 | ヴァータ(風) | 夏のうちに体力が奪われ、消化力がさらに下がっています。消化によく油分を含んだものを取りましょう。 |
秋 | ピッタ(火) | 豆類やいも、蜂蜜など、甘味、苦味、渋味のものを取りましょう。 |
冬 | ピッタ(火)~カパ(水) | 消化力が上がり、体力がついてくる時期です。少し重くて甘味のある油性の食べ物をとってもよいでしょう。 |
そして、可能な時はいつでも、その土地で獲れたオーガニックな食材を買うようにしましょう。その土地で獲れたものの方が新鮮ですし、周りの農家さんを応援することにもつながります。
場所や地域によって、どの食材が旬で、よく獲れるか異なると思います。ある期間、自分の住み慣れた場所から遠く離れたところで生活することになったら、しかも、食生活がだいぶ異なる場合は、その中でもできるだけ自分の食べなれたものからよく食べるようにしましょう。そして慣れてきたら、その土地で獲れ、その土地のやり方で調理されたものを食べても問題ないでしょう。
まとめ
アーユルヴェーダ的食事法のポイント、後半の4項目は以下の通りです。
- 6つの味を取り入れる
- 体質・体調に合ったものを食べる
- 作るとき・食べるときのマインドの状態に気をつける(怒ったり、悲しんだりしながら料理しない・食べない)
- 旬のもの、土地にあったものを食べる
いかがでしたか?
前編・後編で取り上げたポイントの他にも、 アーユルヴェーダの食事法には、十分に油をとる、食べ合わせに気を付ける(特に牛乳に関するもの)などのポイントがあります。
が、一度にいろいろ試そうとすると大変に思えてしまいます。そんなに難しいこと、特別なことはありません。まずはご自身の現状の食事の仕方を振り返ってみてください。
そうして、何かを変える必要があると感じたら、前編・後編で取り上げた中から、印象深かったものだけを試してもよいかもしれませんね。