アーユルヴェーダとは
これからアーユルヴェーダの食事におけるポイントを紹介していきます。しかしその前に、アーユルヴェーダとは何か知っておきましょう。
アーユルヴェーダとは、古代インドから伝えられてきた実経験に基づく東洋医学です。西洋医学は対処療法であるのに対し、アーユルヴェーダは病気を治療するというよりも、健康を維持する目的の予防医学です。WHO(世界保健機関)では、予防医学として認定されています。
アーユルヴェーダの特徴は、私たちの身体の個性を大きく三つの体質(トリ・ドーシャ)に分け、それぞれに合った選択ができるよう、示していることです。
アーユルヴェーダとドーシャのより詳細な説明は以下から
現在、私たちのライフスタイルは多様化し、活動時間、食事、睡眠、余暇の過ごし方などにおいて、選択肢がぐっと広まっています。より個人に合った生活ができそうでありながら、かえって自分に合う選択がうまくできず、バランスを崩してしまっています。
幸福な人生を歩むための方法を説くアーユルヴェーダが最も大切にしている「食事」。ふだん、私たちが食事について考える時、「何を食べるか」を考えてしまいがちです。しかし、「どのように食べるか」も、とても大切なテーマです。
ここでは、筆者が選んだアーユルヴェーダの食事法で大切なポイント8項目のうち、4項目についてご紹介します。
このポイントを守ることで、食に関わる習慣がより健康的なものとなります。
ポイント① 食べる時間を決めよう!
アーユルヴェーダにおいて、私たちの体質を表す「ドーシャ」。
風のエネルギーをもつ「ヴァータ(V)」、火のエネルギーをもつ「ピッタ(P)」、水のエネルギーをもつ「カパ(K)」。
この3つのドーシャは、この宇宙の物質全てに関わっています。時間にもドーシャがあります。
各時間帯において支配的なドーシャと、その時間に行うと良いことを以下の表にまとめました。
時間 | ドーシャ | ドーシャの特徴 | 行うべきこと |
午前2~6時 | ヴァータ(V) | 運動、循環 | 起床、瞑想、太陽礼拝 |
午前6~10時 | カパ(K) | 安定、生長、結合 | 軽めの朝食、ヨガ、勉強 |
午前10~14時 | ピッタ(P) | 変換、消化、代謝 | 重めの昼食 |
午後14~18時 | ヴァータ(V) | 運動、循環 | 体力を使うこと、仕事 |
午後18~22時 | カパ(K) | 安定、生長、結合 | 入浴、ゆったり過ごす、夕食 |
午後22~2時 | ピッタ(P) | 変換、消化、代謝 | 十分な睡眠 |
アーユルヴェーダの理想的な1日の中では、Vの時間に起きます。Vは「動」のエネルギーなので、目覚めがすっきりしています。朝食の前に、瞑想や太陽礼拝などのヨガをするのが良いでしょう。
そしてKの時間帯、7時頃朝食を摂ります。1日の中で最も摂取量の多い昼食は、Pの時間帯に取り、消化してもらいましょう。
午後はVの時間帯なので、活動量を増やすのに適しています。そして22〜2時は良質な睡眠を取り、代謝をして細胞を作る時間帯です。この時Pのエネルギーを消化に使いたくありません。なので、夕食は夕方、少なくとも寝る3時間前までに澄ましておくことを推奨します。
ここまで読んで、「そうなんだけど(仕事や学校があるし)無理でしょ」と思った方。
時間にもドーシャがあることは分かったはずです。ドーシャの時間帯を意識するだけでも、だいぶ違います。
私の個人的な経験ですが……私は帰宅してから、家で特に何かするわけでもないのに夜12時くらいまで起きているのが常でしたが、少なくとも22時半までには寝て、朝5時代に起きるようにしました。
すると、朝、瞑想やヨガをしても、お弁当を作る時間があります。夕食は、なかなか寝る3時間前といかない時もありますが、「あと寝るだけ・・・」と思うと、量も軽くなり、何よりテレビを見ながらのダラダラ食いがなくなりました。
できることだけでいいです。まずは、経験してみてください。
ポイント② 腹7.5分目
天皇陛下が「腹8分目」という言葉を使ったことはよく知られています。日本人に昔から広く伝わっている言葉です。アーユルヴェーダでは、それよりやや少ないですね。
なぜ腹7.5分目にするのがよいのでしょうか?
それは一回の食事でたくさん食べすぎると、消化力(アグニ)が弱まってしまうからです。消化しきれなかった食べ物は、未消化物となります。アーユルヴェーダではこの未消化物を「アーマ」と呼び、このアーマが病気の素となると考えます。
アーマがあるときの特徴としては、舌苔がつき、便が黒く沈みます。尿、便、汗、口臭などのにおいが臭く、きつくなります。体も重くなり、疲れやすくなります。
腹7.5分目までで食事を抑えるコツは、食器です。左右の手のひらをお椀型にして合わせてみてください。個人差があるので、一概には言えませんが、その大きさと同じくらいの平皿か深皿に入る量が、適量といえます。
写真は、私のある日の夜ごはんです。バスマティライスとムング豆のダルは、どちらも消化に良く、食物繊維を含んでいます。
- バスマティライス
- 濃厚ダル
- にんじんのギー炒め
- ベビーリーフとコーンのサラダ
思ったより少ないかもしれませんね。季節や体質、運動量によっても異なりますが、次の食事までにお腹がすく量、ということは変わりがないので、意識してみてください。
ポイント③ 作り立てをいただきます
作り立ての、あたたかい食事をいただくようにしましょう。作り置きは、あまりしないようにします。
私たちの行動、意識などあらゆる現象・物質は3つの要素(トリ・グナ)で構成されています。すなわち、サットヴァ(純粋性)、ラジャス(激性)、タマス(惰性)です。
- ラジャス(激性)……興奮、過度な動き、過剰な競争力や攻撃性、感覚器官に影響されている状態
- タマス(惰性)……過去にこだわる、依存性が高まる、ずっと寝ていたいと思うなど怠惰になっている状態
- サットヴァ(純粋性)……激性と惰性が取り除かれた、安定した状態。正直で、愛情深く、良い選択をすることができます。
食べ物にも、トリ・グナがあり、余りもの、作ってから時間が経ちすぎているものは、タマスの要素があります。生命力が失われてしまっている状態です。
サットヴァな食べ物を取ることで、私たちのマインドもサットヴァに保つことができます。
ポイント④ よく噛んで食べる・だらだら食いはしない
誰でも一度は「よく噛んで食べなさい」と言われた経験があると思います。よく噛んで食べると、虫歯や歯周病の予防、病気の予防、ダイエットなどにつながると言われています。
アーユルヴェーダでは「アグニ(消化の火)」が重要ですので、胃腸への負担を軽くするという意味で、十分に租借することが大切です。
食べ物を消化・吸収するのは主に小腸です。小腸の内側の襞から生えている絨毛、その絨毛を覆うさらに細かい微絨毛から消化物を取り込むわけですが、その取り組み口は大変小さく、体長をスカイツリーほどに拡大したとしても、微絨毛の長さは1ミリにも届きません。
ですので、よく噛んで食べ、食べ物をより小さくすることが大切です。噛んでいる間に唾液に含まれるアミラーゼなどの酵素が消化を助けてくれますし、なるべく小さい方が、表面積が広くなり、消化酵素による分解が効率的に行われます。30回くらい噛めるといいでしょう。
食事にあまり時間をかけすぎるのもよくありません。20分くらいがちょうどよいと言われています。最初のほうに食べた食べ物の消化が始まっているのに、また次の食べ物が入ってくると、消化にばらつきが出てしまいます。そして、食べた後、少なくとも3分くらいは立たずにじっとしているようにしましょう。動き回ると、血液が全身に流れてしまい、胃に十分な血液が送り込まれず、消化不良の原因となってしまいます。食後すぐの入浴や運動も避けるようにしましょう。少しの時間、ゆっくり散歩することは推奨されています。
いかがでしたか?
当たり前のことばかりと思ったかもしれませんが、実際にはできていないことも多いと思います。できることを、少しでも増やすためには、どうすればよいのか?今何が制約を作っているのか考えてみて、そこを少し変えようと意識するだけで、がらりと習慣が変わるかもしれません。
さて、残りの4つのポイントは、後編で紹介していきます。こちらも是非ご確認ください。