もくじ
ヨガと瞑想について
ヨガをする人の目的はさまざまありますが、アーサナのレッスンを繰り返し続けていくと、ふとしたときに何も考えが浮かばない「無」の状態になるときがありませんか?それは、バランスのポーズを取っているときや、クラスの終わりに行なうシャバアーサナ(屍のポーズ)のときなどにも起こることがあります。その状態はとても心地よく、どんなものにもとらわれない本当の自分と向き合える貴重な時間です。その時を感じたいからヨガをする、という人もいるでしょう。
昨今、ストレスフルな毎日から解放されたい、仕事に集中したいということでマインドフルネスや瞑想が注目されていますが、ヨガと瞑想は切っても切り離せないもの。ヨガのゴールは常に瞑想状態をキープすること、ともいわれています。
ヨガとは心の動きを止めること
ヨガ哲学の教典『ヨーガ・スートラ』1章のはじめに、ヨガの目的が書かれています。
【1-2】
Yogas citta vrtti nirodhah.
心の作用を止滅することが、ヨーガである。
日々の中で考えることや思い浮かぶこと、喜怒哀楽の感情、その全ての総称がcitta(チッタ)です。心に浮かんでくることやそこから引き起こされる感情などの心の動きを止めることがヨーガである、と『ヨーガ・スートラ』をまとめたパタンジャリは伝えています。
「心の作用を止滅する」といっても心を停止するのではなく、心の動きを沈める、制御する方法を身に付けること。そうすることで、さまざまな苦悩に縛られることなく、穏やかな日々を過ごすことができるのです。
ヨガのゴールは、瞑想状態を保つこと
心が苦悩や感情に振り回されることなく、穏やかな状態をキープすること。ヨガをしているときだけ、瞑想をしているときだけでなく、日々の生活の中でその状態を保つようになることがヨガのゴールです。最初のうちは、アーサナに集中しているときや瞑想をしているときだけ、頭を空っぽにして何も思い浮かばない状態かもしれません。徐々にその瞑想状態が長く続いたり、キープできるようになったりするためには、繰り返し練習することが大切です。
瞑想の方法をおさらいしよう
瞑想をしたことがある人もない人も、方法をおさらいしてみましょう。初めのうちは他の人がいない、静かな場所で行ないましょう。時間帯は朝起きてすぐか、寝る前がおすすめです。基本はあぐらで座りますが、体の状態はさまざまなので体調に合わせて正座や椅子に座っても構いません。床に座る場合は、ヨガマットやラグなどを敷き、クッションやヨガブロックをお尻の下に置くと、坐骨が安定して長い時間でも座りやすくなるのでおすすめです。また、体を締め付ける服装は避けるなど、なるべくリラックスできる状態をつくります。気分が落ち着くようであれば、アロマやお香など香りを利用するのも効果的です。香りが強すぎてしまうと、集中できなくなってしまうので、アロマディフューザーを使ったり、設置する場所を離したりするなど、調整してください。
瞑想の方法
- 安楽座(スカーサナ)で座る
- 両手は膝の上、手のひらを上に向ける、またはチン・ムドラーの形で置く
- 背筋を伸ばして、肩と首の力を抜く
- そっと目を閉じる
- 考えが浮かんできたら、執着せずに手放す
※チン・ムドラー
両手でそれぞれ、親指と人差し指で輪をつくり、他の3本の指は軽く伸ばして手のひらを上に向けて膝の上に置きます。
瞑想時間はどのくらいがベスト?
1回で何時間も瞑想をすることよりも、少ない時間でも毎日続けることが大切です。最初は1分からのスタートでも、瞑想をするための場所づくりや準備をするだけでもOKです。だんだん慣れてきたら時間を伸ばしていきましょう。目安は10〜15分がベスト。一旦休憩を入れて、細切れに行なうのもおすすめです。
足が痺れてきてしまう、腰や背中が痛い、といったことが起きてくるかもしれませんが、繰り返し行なうことで慣れてきますし、体に起きている現象も執着せずに手放していくことも瞑想の練習です。ヨガのアーサナは、瞑想の姿勢を長く保つための訓練でもあります。アーサナを繰り返したあとに、瞑想の時間を取ることもよいでしょう。体のバランスや体幹が整ってくると、瞑想中の体の痛みを感じにくくなります。
考えが浮かんで集中できないときは?
瞑想が長く続けられない悩みの一つとして挙げられるのが、雑念やいろいろな考えが浮かんでしまって集中できないということ。考えてはいけない、ということにとらわれてしまって、考えのループにはまってしまうのはよくあることです。浮かんだ考えにとらわれて執着せずに、その考えを手放してしまうことが大切です。「こんなことを考えているんだな」と第三者的な目線で考えを見つめたら、パッと手放す。考えが浮かんだら、一旦見つめて、パッと手放す、これを繰り返していきます。
呼吸に意識を向ける、というのも瞑想状態を保つポイントです。鼻呼吸で、吸う息は冷たく、吐く息は温かく、鼻と口の間の空間に当たる息の様子を観察します。
考えを遮断する、ジャパ瞑想のすすめ
いろいろ試してみたけれど、考えが浮かんでしまって瞑想に集中できないという人におすすめなのが「ジャパ瞑想」です。ヨガの教典『ヨーガ・スートラ』にもジャパ瞑想に関する一節があります。
ジャパ瞑想とは
【1-28】
Tajjapas tadartha bhavanam.
意味を熟慮しつつ、それ(オーム)を反復誦唱するのがよい。
「ジャパ」とは、繰り返すという意味のサンスクリット語です。「ジャ」は打ち勝つ、「パ」は過去の不徳、という意味を持ちます。「オーム」などマントラの音の意味を考えながら、その音を繰り返し唱え、瞑想の対象にすることをジャパ瞑想といいます。
「マントラ」とは、自分の考えをつなぎとめるための道具、という意味。ジャパ瞑想は、マントラ瞑想とも呼ばれ、マントラの言葉を繰り返し唱えることで、自分の考えを扱い、心を収めることができるようになります。マントラを繰り返し唱えることはもちろん、その言葉の意味を理解することも大事なポイントです。
まずは「オーム」から始めてみよう
ヨガクラスの始まりや終わりに耳にする「オーム」という言葉。サンスクリット語でA(ア)・U(ウ)・M(ン)の3つの音からできています。この3つの音は、私たちが体験している3つの時間、生まれてから生を終えるまでの人生を表しているといわれており、自然の摂理を指す呼び名が「オーム」という言葉で表現されています。
「オーム」の唱え方のポイントは、「ア」の音を出しながら徐々に口を閉じていくこと。言葉で「オーム」と唱えなくても、自然に音を発することができます。最初は自分の耳に聞き取ることができるくらいの音量で唱えて、少しずつ慣れてきたら音を発することなく、心の中で唱えていきましょう。
ジャパ・マーラーを使ってみよう
ジャパ瞑想を始めるにあたって、どのくらいマントラを繰り返せばよいのかわからないという人もいるはず。そんなときに持っているとよいのが「ジャパ・マーラー」です。マーラーとは数珠という意味で、菩提樹の実や水晶などを108個つなげたもの。ヨギやヨガティーチャーが首から下げていたり、手首に巻いていたりしているのを見たことがあるかもしれません。アクセサリーとして身に付けることもありますが、用途としてはジャパ瞑想の時にマントラを数えるために使います。
マーラーは、右手の中指だけを使うのがルール。人差し指は使わずに、親指を支点にして、珠を中指で一つずつ送っていきます。108個の珠の次にあるのはメールと呼ばれる大きめの珠が付いており、これがマントラを108回唱えた目安になります。メールまでたどり着いて、更にマントラを唱える場合は、メールを乗り越えずにマーラーを持ち替えて逆に戻して数えます。慣れてきたら目を閉じて、ジャパ瞑想に集中しましょう。
重量:140g
珠の数:108個
珠の直径:14mm
価格:1,980円(税込)
一つのことに集中できる「ジャパ瞑想」で心をすっきりさせよう
今回は瞑想の方法の一つ「ジャパ瞑想」をご紹介しました。瞑想は継続して行なうことで、集中力が高まり、気持ちを穏やかに安定する効果があります。日々の仕事や家事を効率的に行なうことができるようになったり、人間関係や悩み事も少し離れた位置から物事を見つめられるようになったり、徐々にその効果を実感することでしょう。「ジャパ瞑想」を生活に取り入れて、すっきりと充実した毎日を送ってみてくださいね。