もくじ
幼少期に読む絵本が学力の基盤を作る!
子どもの頃のお気に入りの絵本は何だったでしょうか。お気に入りの絵本にはどのような特徴があるでしょうか。それらの絵本を通してあなたはどういったメッセージを受け取っていましたか。幼少期に好きだった絵本を大人になってからも思い出すことがある人は少なくないのではないでしょうか。
たくさんの人に出会う楽しさを教えてくれる絵本、ありのままを受け入れる大切さを伝えてくれる絵本、人や動物に優しくしようと思える絵本など、多くのメッセージが込められた絵本があります。絵本が伝えるメッセージを受け取った子どもたちは、生活を通してこのメッセージを思い出し、いろいろ考えたり行動を起こしたりするものです。
絵本は私たちに大切なメッセージを伝えてくれるほか、読解力を高めたり言語能力も高めてくれます。絵本は親子のコミュニケーションを促進してくれることが知られており、親とコミュニケーションを多くとった子どもは言葉を覚えるスピードが速いことが、多くの研究では明らかになっています。実際に、18か月の間に多くのコミュニケーションを子どもととった家庭では、あまりコミュニケーションがなかった家庭よりも、2歳の時点でより多くの言葉を理解していることがわかっています。さらに、子どもたちは絵本を読むことで、普段親が使うことのない言葉も絵本から習得することができます。
このように、絵本は、親子でのコミュニケーションをより豊かにし、子どもが自力で新しい単語を習得するのをサポートしてあげる存在でもあり、ストーリーを通して人生のメッセージを伝えてくれるような、子どもの成長を促す教材でもあるのです。
今回は、オーストラリアで児童文学を学び、日本でも絵本の研究をする絵本好きな筆者がおすすめする9冊をご紹介します。より想像力が働くような学びがあって、大人も一緒に楽しめる内容の絵本をピックアップしたので、絵本時間に読むものとして参考にしてみてくださいね!
おすすめ絵本9冊!
1. おたんじょうびの2つのたまご
◯程度(小学校1・2年生)
https://www.jenniferkmann.com/
あらすじ
ジンジャーは自分の誕生日パーティーに、クラスの女の子を全員招待したいと思っていました。ただ、変わり者であるライラ・ブラウニングを除いて...。しかしジンジャーのママは、「クラス全員を呼ぶか、誰も呼ばないか、どっちかよ」と言います。それで、ジンジャーはクラスのみんなを呼ぶことにしました。
この絵本は、相手がどういう人なのかということは実際に関わってみないとわからないということを教えてくれます。大人と同様に子どもたちにも、幼稚園・保育園または学校などで深く関わったことがない相手に対して「あの子、周りと少し変わっている。近づかないようにしよう」と思うことがあるかもしれません。しかし、そういった相手が自分の心を理解してくれたり、自分と近い特徴や趣味を持っていたりすることもあるのです。
本当はいい人なのかもしれないのに、自分の持つ固定観念によって本来相手が持つ性格や特徴をしっかりと見ることをせずに、その人を避けてしまうというのは悲しいことです。この本は、可愛らしい絵と色使いに加え、相手を深く知ることの必要性を教えてくれる絵本でもあります。
2. ガラスのなかのくじら
◯程度(小学校1・2年生)
https://www.troyhowelletc.com/index.html
あらすじ
くじらのウェンズデーは、街の真ん中に置かれている水槽の中で暮らしています。いつもガラス越しに世界を眺めて暮らしているウェンズデー。何不自由なくのんびりと毎日を送っていたのですが、ある日遠くにある「ブルー」に心を惹かれます。そしてあの「ブルー」と同じ色の瞳を持つ女の子がやってきてこう言います。「あなたのほんとうのおうちはここじゃないわ」...。
生活をしていく中で消えていってしまう、心の奥底にある自分らしさを取り戻したいと思う全ての人に送る1冊です。
3.きょうがはじまる
◯程度(小学校1〜4年生)
起床してから「何を着ようかな」「どんな髪型にしようかな」と考えながら、たくさん並ぶアイテムの中から自由に選べる形式の絵本です。たくさんの選択肢があって、子どもたちも迷ってしまうほど!イラストが美しいのが魅力です。
この絵本の素晴らしいところは、様々な人種が描かれているところです。絵本の中にはたくさんの選択肢があるため、多くの可能性に溢れています。人種や性別に関わらず、子どもたちには自由に選択させてあげたいものです。
この絵本の素晴らしいもうひとつの点は、親子の会話を促進させてくれるところです。親子の会話は子どもの思考と興味・関心に大きな影響を与えます。何を選ぶ?といった問いかけに始まり、親子の自然な会話を楽しんでみてはいかがでしょうか。
4. くらやみのゾウ:ペルシャのふるい詩から
◯程度(小学校1・2年生)
あらすじ
大商人のアフマドがインドから連れてきた謎の生き物。村人たちはその正体を突き止めるために、暗闇の中で生き物に触っては「蛇のよう」「木の幹みたいだ」「扇のようだ」とそれぞれに大騒ぎをします。生き物の正体は何だったのでしょうか。
この絵本が伝えているのは、物事の側面だけを見て本質を知ることができないと真に大切なことを見失ってしまうことや、最悪の場合には勘違いが争いに繋がってしまうということだと思います。意見を決して曲げないということは自分の芯を強く持つという面では大切かもしれません。しかし、その意見は物事の側面だけではなく本質も見抜いたものでしょうか。かたくなに意見を曲げないのではなく、物事を深く広く捉える思考能力が大切であると教えてくれる作品です。大人も学べる深い1冊になっています。
5. しずかにあみものさせとくれー!
◯程度(3歳〜就学前、小学校1・2年生)
あらすじ
おばあさんは、編み物に集中をしたいのに毎回孫たちに邪魔をされてしまいます。怒ったおばあさんはとうとう家を出て、集中して編み物ができる場所を探し歩きます。しかしなかなか集中できる場所に落ち着けない...!ユーモアが子どもから大人まで、この物語に引き込みます。
この絵本が教えてくれるのは、家族の温かさに加え、いったん物事から離れることで、すでに持っていた幸せに気づくことができるという点。幸せは得るものじゃなくて、すでにあなたの中にあるものなのかもしれませんね。
6. 空の王さま
◯程度(小学校3・4年生)
https://www.nicola-davies.com/
あらすじ
故郷であるイタリア・ローマから越してきた少年がエバンズさんに出会い、一緒にハトレースを目指します。「僕はよそ者」と感じている孤独な少年が、ハトに夢を託す老人と出会って何かが変わり始めます。
さまざまな事情を抱えて、見知らぬ地で暮らさなければならない子どもたちはたくさんいるでしょう。新しい環境に飛び込んで不安を感じている子どもたちも世界中に多くいると思います。現実に向き合って頑張ろうとする成長物語であり最高のエールとなる1冊です。
7. フランクリンの空とぶ本やさん
◯程度(小学校1・2年生)
https://www.jen-campbell.co.uk/
あらすじ
ドラゴンのフランクリンは本が大好きです。自分の好きなものの魅力を多くの人と分かち合いたいと感じるフランクリン。ある日、街の人に本を読んであげたいフランクリンは、岩穴を出てお出かけします。ところが、街の人々はドラゴンであるフランクリンを怖がって彼に近づこうとしません。1人の女の子ルナと出会い、互いに本好きということですぐに仲良しに!そんな2人は、街の人が怖がらないようにある計画を思いつきます。
この絵本からは、自分の好きなもの、価値観、信念などを1人でも理解してくれる人がいる心強さを感じることができます。自分を理解してくれる人が1人だけでもいるときに持つ安心感と発揮されるパワーは偉大です。また、この絵本も先にご紹介した「おたんじょうびの2つのたまご」と同様に、相手を見た目や属する環境などで判断して、相手を深く知らないのにも関わらず避けてしまうことは大変もったいないことであるというのを教えてくれます。
8. わたしたちだけのときは
◯程度(小学校3・4年生)
あらすじ
おばあちゃんは子どもの頃に家族のもとを離れて、家から遠く離れた家に行くことになりました。そこではみんなが同じ制服を着せられて、髪を切られ、自分の言葉で話すことを禁じられました。「どうしてなの?おばあちゃん」と孫が祖母に問いかける形で進んでいく物語。カナダ先住民族への同化政策の歴史を描く、カナダ総督文学賞を受賞した絵本です。
もともと住んでいたネイティブを否定し、文化交流、言語、習慣までを力づくで変えさせていた歴史を絵本を通して知ることができます。しかし、この少数民族の浄化とも呼ばれる行為は、少なからず現代でも目にします。
例えば、筆者が生活していたオーストラリアの先住民は「コントロールファイヤー」と呼ばれる植物に火をつける伝統を持っているのですが、これが森林保護目的ということで政府によって禁止されているそうです。特に、2019年から2020年にかけて起こった大規模なブッシュファイヤーを知っている方の中には「植物に火をつける行為なんて禁止して当然!」と思う人も少なくはないと思うのですが、これも少数民族を軽んじる行為につながるのです。オーストラリア原種の植物は火で焼かないと発芽が促進されないものも多いそうです。自然と共存してきた智恵を森林保護という目的で禁止、しかし火災の原因でもある森林伐採は許される...。少しアンバランスを感じてしまいます。
現代の状況にも重ね合わせて考えることのできる1冊であり、大切なのはそれぞれの文化を重んじる心であると教えてくれる絵本です。
9. ぼく、おたまじゃくし?
◯程度(小学校1・2年生)
https://www.kosei-shuppan.co.jp/
あらすじ
兄弟たちはカエルになったのに、自分だけは手も足も生えてこないおたまじゃくし。でも、なぜかヒゲが伸びてきています。池に一緒に暮らす動物たちは、そんなおたまじゃくしに意地悪を言ってヒゲを引っ張ります。周りとの違いに悩みながら戦っていく自分探しの物語です。
集団にいると必ずある「共通理解」や「当たり前」。これらを手にすることができないと、いじめられてしまうのは私たちの世界でも同じです。それぞれに個性があって、一人一人が持っている個性を発揮することができると、それは強さになるということを教えてくれる作品です。本当の強さは自分の中にある!そして、自分らしくいることで自分が活躍できる場所は必ずある!と気づかせてくれる内容になっています。
絵本のある人生を!
いかがだったでしょうか。今回は、より想像力が働くような学びのある内容の絵本をお届けしました。
子どもたちの健やかな成長を支える絵本という存在。一冊一冊に込められたメッセージは、子どもたちが大きくなってもなお心に生き続けることでしょう。かけがえのない親子の思い出を作る、そして可能性を広げてくれる絵本にみなさんが出会えますように。