もくじ
食物繊維とは何か
まずそもそも食物繊維とはどのようなものなのでしょうか。
定義はまだ確定していない
実は、食物繊維の「定義」は、現在、医学界、食品学会などで統一した見解の、確定的なものはありません。「ヒトの消化酵素で分解できない植物細胞壁成分」という定義もありますが、同じ性質で違う物質もあり異論を唱える学者もいます。
(引用元:大塚製薬)
その最大公約数的な表現を挙げると以下のようになります。
植物由来の食品だけでなく、動物由来の食品も含めて、人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分全体
この定義に従えば、植物に含有される、セルロース、リグニン、ペクチンや、カニなどのエビなどの甲殻類に含有されるキチン、キトサン、あるいはデンプンの一部が非消化性になったレジスタントスターチなどが食物繊維として挙げられます。
食物繊維の種類とは
また食物繊維は2種類あるということもあまり知っている人は多くないでしょう。具体的には以下の通りです。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は熟した野菜などに多く含まる、糸状あるいは穴がたくさんあいている形状の食物繊維です。不溶性、ということなので、水に溶けない特徴があり、食感はボソボソしています。
不溶性食物繊維の主な働きは3つあります。
1つ目は便通を促進することです。不溶性食物繊維は口から入った後、胃や腸で水分を吸収して何倍にも膨らみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促すのです。
2つ目は繊維状であるため、咀嚼するのによく噛む必要があることです。それによって、満腹中枢を刺激し食べ過ぎを防ぎます。またあごの発達を促し、歯並びをよくします。
3つ目は腸内環境をよくすることです。不溶性食物繊維は大腸内で発酵しやすいため、ビフィズス菌などを増やし、腸内環境を整えます。ただしこの働きは次に解説する水溶性食物繊維の方がより強力です。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維はその名の通り、水に溶ける性質を持った食物繊維で、粘度が高いものと、低いものがあります。
水溶性食物繊維の主な働きは3つです。
1つは粘着性が高いため、胃腸内を低速度で移動することにより、腹持ちを良くし、食べ過ぎを防ぐことです。またそれは糖質の吸収も遅くするので、食べ物を摂取した後の血糖値の急激な上昇を抑え、糖質が脂肪になって体内に蓄積されることも防ぎます。
2つ目は胆汁酸やコレステロールを自分に吸着することです。これによって、コレステロールが血管内に付着することを防ぎ、動脈硬化を予防します。
3つ目は不溶性食物繊維と同様に腸内環境を改善することです。やはり不溶性食物繊維も大腸内で発酵するので、ビフィズス菌などを増殖させ、腸内環境を整え、便通を改善します。
食物繊維の必要摂取量に男女とも全く足りていない
この食物繊維が人間にとって大切だと主張されているのは、反面で見れば、食物繊維の摂取が足りていないからです。
日本人の食事摂取基準によれば、食物繊維摂取の目標量は、18~69歳で1日あたり男性20g以上、女性18g以上です。
しかし「平成27年 国民健康・栄養調査結果の概要」(※)によれば、実際の食物繊維の摂取量は以下の通りです。
- 20~29歳 男性13.1g 女性11.8g
- 30~39歳 男性13.3g 女性12.5g
- 40~49歳 男性13.9g 女性13.0g
- 50~59歳 男性14.8g 女性14.4g
- 60~39歳 男性16.8g 女性16.8g
このように特に10~40代の食物繊維の摂取量は非常に少なくなっています。1番摂取量が多い60代でも目標量には届きません。
ですから日本人全体の食物繊維の摂取量は全く足りていないと言えるのです。
※引用元:平成27年国民健康・栄養調査結果の概要
食物繊維を摂取することの効果・メリット
なぜ食物繊維が足りないことが問題なのかというと、食物繊維の摂取には多くのメリットがあり、そのメリットが食物繊維の不足によって得られないからです。そのメリットとは以下の通りです。
ダイエット
食物繊維のうち特に水溶性食物繊維は、体内で水と混ざって溶けます。溶けた食物繊維はゲル状になって膨らみます。それによって腹持ちがよくなり、長時間空腹を感じなくなるため、過食が防げます。そのためダイエット効果がもたらされるのです。
また上でも挙げたように食物繊維は脂肪が体内に蓄積されるのを防ぐ効果もあるので、それにもよってもダイエットを実現します。
便秘解消
不溶性食物繊維も水溶性食物繊維も、腸内環境を整えます。それによって胃腸の活動も正常化するため、便秘が解消されます。特に水溶性食物繊維は水に溶けて大きく膨らむことで、腸壁をゆるやかに刺激して排便を促してくれるので、その効果によっても便秘が改善します。
美肌
便秘は身体にさまざまな悪影響を及ぼしますが、それは肌においても同様です。
便秘が続くと、まず自律神経の働きが悪化し皮膚の血行が悪くなります。それは肌の栄養不足をもたらすため、正常な新陳代謝が行われず、肌荒れの原因になります。
また便秘によって腸内で腐敗した便は有害物質を発生します。有害物質は肌の炎症を引き起こしますので、この点でも便秘は肌荒れやニキビの原因になります。
しかし食物繊維はこの便秘を解消するため、肌荒れやニキビを防ぎ、美肌をもたらすのです。
どのように食物繊維を摂取すればよいのか
したがって食物繊維はあらゆる理由でしっかり摂った方がよい食品です。しかし、一概に食物繊維を摂った方がよいといってもその方法がよくわからないかもしれません。
その方法の1つは次に解説する、食物繊維を多く含む食品を積極的に食べることです。また、その食品に限らず、基本的に精製度の少ない穀類は食物繊維を豊富に含むので、お米ではなく玄米や胚芽米を食べる、パンは全粒粉のものにする、などを心がければよいでしょう。
あるいは、普段の食事にもう1品、野菜、きのこ、海藻などを加えることもグッドです。
食物繊維が多く含まれる食品ランキング
では食物繊維を豊富に含む食品を100gあたりの食物繊維の含有量でランキングしてみましょう。
野菜編
- グリーンピーズ 7.7g
- パセリ 6.8g
- モロヘイヤ 5.9g
- ごぼう 5.7g
- かぼちゃ 2.8g
フルーツ編
- アボカド 5.3g
- りんご 1.5g
- いちご 1.4g
- バナナ 1.1g
- なし 0.9g
穀物編
- オートミール 9.4g
- ライ麦パン 5.6g
- そば 3.7g
- ラーメン 2.9g
- パン 2.5g
- うどん 2.4g
コンビニで手軽に買える食物繊維が多く入った食品
また以上のような食品をわざわざ料理して食べる時間がない人は、コンビニで手軽に手に入る、食物繊維が多く含まれる食品を食べてもよいでしょう。それはたとえば以下のようなものです。
ひきわり納豆
納豆はもともと食物繊維が多い食品ですが、その中でも特にひきわり納豆は整腸作用が高いので、より食物繊維のメリットを得ることができます。
ひきわり納豆の1パックあたりの食物繊維の量は2.4gです。
ブルーベリー
抗酸化物質であるアントシアニンが豊富なブルーベリーは、食物繊維も豊富に含む食品です。そのブルーベリーが最近は冷凍商品化されてコンビニの棚に並んでいます。これをヨーグルトなどに入れて食べれば、発酵食品と相乗的に整腸効果を得られ、メリットが大きいでしょう。
生のブルーベリーの食物繊維の量は100gあたり3.3gです。
アーモンド
アーモンドのような木の実系の食品も食物繊維が豊富です。そのアーモンドも油で揚げたものはカロリーが高いためおすすめできませんが、最近は素焼きのアーモンドがおつまみコーナーに並んでいます。これであればヘルシーに食物繊維が摂れ、同時に抗酸化力の高いビタミンEも摂取できるのでおすすめです。
焼いた無塩アーモンドの食物繊維の量は100gあたり11.0gです。
食物繊維サプリも人気
また食品だけでは食物繊維が足りない人の場合は、さらに手軽にサプリで摂取してもよいでしょう。人気のサプリを3品ご紹介します。
ケール青汁+食物繊維/DHC
DHCの「ケール青汁+食物繊維」は、整腸効果が高く、パウダーを水で溶かして飲むだけの便利な食物繊維です。特定保健用食品の認可を受けているので効果もお墨付きです。食物繊維も、1日の目安量で6.9g摂取できます。これはセロリ7本分にあたります。
イージーファイバー/小林製薬
小林製薬の「イージーファイバー」は商品名の通り、簡単に食物繊維が摂取できる粉末タイプのサプリです。お茶にもジュースにも溶けやすいのが特徴です。ほとんど無味無臭ですから、ドリンクの味を変えません。1日の目安量で食物繊維が4.2g摂取できます。
全粒オオバコ殻/Now Foods(ニューフーズ)
海外のサプリでは、Now Foodsの「全粒オオバコ殻」が人気です。これはオオバコの種子殻粉を原料にしたダイエット食です。1日の目安量で、6~7gの食物繊維が摂取できます。
食物繊維の摂取上の注意点
このようにメリットづくめの食物繊維のようですが、しかし摂取しぎると弊害もあります。ですから摂取する時には以下の点に注意しましょう。
下痢になりやすくなる場合も
食物繊維は便通を良くし過ぎてしまうので、返って下痢を起こす可能性もあります。特にサプリで食物繊維を摂取する場合は、自然の食品に含有されている分子の大きな食物繊維よりも、分子がかなり小さな食物繊維を摂ることになります。そのために下痢を起こしやすいという特徴があるのです。
大腸がんを誘発?
京都府立医科大学の石川秀樹特任教授の研究によれば、サプリなど食物繊維を過剰に摂取した場合、大腸がんを誘発する危険性があるということです。
その研究とは、大腸がんなどの腫瘍を切除した患者を2グループに分け、一方に食物繊維の多い特殊なビスケットを食べさせたものです。その結果、4年後にはビスケットを食べたグループの患者の方が食べていないグループに対して、大腸がんの前段階である腺腫が1.3倍発症していました。(※)
したがって、食物繊維のサプリでの過剰摂取には危険を指摘する学者も多いのです。
※引用元:NIKKEI STYLE
まとめ
いかがですか。
食物繊維はそもそも日本人に足りていません。ですからできるだけしっかり摂取するようにしましょう。そうすればダイエットもでき、便秘も解消し、ツヤツヤの美肌を手に入れることができるはずです。
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