タイの少年たちが洞窟の中で行っていたとされる「ヴィパッサナー瞑想」とは?

タイ北部の洞窟に閉じ込められていた少年と一人のコーチの計13人が全員救助されたニュースが世界中で話題になっています。彼らには低体温症などの症状が出ているものの、命に別状はないそうで安堵の声が広がっていますが、彼らは洞窟の中で「ヴィパッサナー瞑想」を行っていたそうなのです。 どんな瞑想なのか、そのやり方についてご紹介します。

少年たちのメンタルケアにコーチが瞑想を指導?

真っ暗な洞窟の中に何日間も閉じ込められていたら、極度のストレスやパニック状態を起こしてもおかしくないはずです。

今回のタイの少年たちが平静を保ち、最後まで体力を温存できた理由として、僧侶の経験があった同行のコーチが子供たちに瞑想を教えた、ということが話題になっています。
その時に、利用されたのが「ヴィパッサナー瞑想」という瞑想法と言われています。

ヴィパッサナー瞑想とは?内容や目的について

ヴィパッサナーには「ものごとをありのままに見る」という意味があり、インドの最も古い瞑想法のひとつです。

ヴィパッサナーでは、「今」というこの現在の瞬間を捉え続けることによって、あらゆる妄想を捨てていきます。つまり、「今ここにある、ありのままの自分」に気づくための瞑想です。この「気づき」が重要視されることから、ヴィパッサナー瞑想は「気づきの瞑想」とも呼ばれています。

人は過去や未来の妄想で頭をいっぱいにしながら生きています。
「ああだったな~こうだった~」という過去の後悔。「こんなことになったらどうしよう」「あんな風に思われたらどうしよう」といった未来への不安。

妄想とはレッテル貼りと思い込みの名人です。状況をありのまま見たり、感じることは出来ません。

時間という概念による様々な思考を止め、一瞬一瞬という「今」この現在の瞬間だけに意識を向けていきます。それが妄想を離れた状態であり、「苦(ドゥッカ)」が滅ぼされた状態なのです。

妄想を止めて「ありのままの自分」を見つめ、心を成長させていくことがヴィパッサナー瞑想の目的です。

タイの少年たちは「助けが来なかったらどうしよう」といった未来への不安感(妄想)をヴィパッサナー瞑想によって落ち着かせていたのかもしれません。

ヴィパッサナー瞑想は誰でも出来るの?

ヴィパッサナーは、「普遍的な治療法」と言われ宗教など関係なく誰でも取り組むことが出来ます。あらゆる病を解決するための普遍的な方法であり、病だけではなく今回のタイの少年たちのケースのように「人々の苦悩」を取り去ってくれると言われています。

ここでは、初心者でも簡単に取り組める「ヴィパッサナー瞑想」のやり方についてご紹介します。

ヴィパッサナー瞑想のやり方

ヴィパッサナー瞑想では、ある動作をする自分の心身を徹底的に観察するという方法を取ります。「歩く瞑想」「立つ瞑想」「座る瞑想」などと様々なヴィパッサナー瞑想の手段がありますが、ここでは「座る瞑想」についてご紹介します。

座る瞑想

  1. 静かな部屋を選んで目をつぶって座ります。座布団か椅子があると良いでしょう。
  2. 楽な形で座ります。あぐらをかいて座るのが辛ければ正座でもかまいません。
  3. 座ったら、背筋をゆっくり伸ばします。
  4. 背筋を伸ばして座ったら、目を閉じます。
  5. 腹式呼吸で深い呼吸を行います。吐くときはお腹をへこませ、しっかりと息を吐ききり、吸うときはお腹が大きく膨らむぐらいに吸います。そして、膨らんだり縮んだりするお腹を観察します。
  6. お腹の膨らみ、縮み、の繰り返しを観察することに集中し、他のことを考えないようにしましょう。
  7. 色々なことが頭の中に浮かんでくると思いますが、その頭の中で浮かんだことに気づいた時点で「こんなことについて考えていたな」と観察し、またお腹の膨らみ縮みの観察に戻ります。
  8. 慣れてくると、余計なことを考えている時間が減り、お腹の膨らみ、縮みを観察している時間が増えます。
  9. 気になる心の感覚「不安」「いらだち」「雑念」や、体の感覚「しびれ」「痛み」などが浮かぶたびに気づきを与え、また現在の自分に集中してください。

時間については最初は、5分程度から始め、慣れてきたら20分、30分と時間を伸ばしていってみてください。

注意点・気を付けたいこと

自分の状態に意識を向けて観察するだけで、その観察に主観を入れない、というのがポイントです。

「あっ、今頭の中でこの後の予定のことを考えているな」と思ったら、この頭の声に意識を向けるだけでOKです。「早くこの思考を消さなきゃ」と思って、評価や判断をしてしまうとひとつの思考からまるで連想ゲームのように妄想は続いてしまいます。

まとめ

いかがでしたか。最初の慣れないうちは「眠気」がやってくるかもしれませんが、それも一つの「気づき」としてまた、瞑想に戻るようにしてみてください。

自身の内なる真実を観察することによって、ものごとをあるがままに見ることが出来るようになります。

これは今回のような極限の状態でなくとも、普段の生活の中で感じる「ちょっとしたイライラ」「なんとなく感じる不安感」「言葉にできない虚無感」などからも解放されることができます。

皆さまもタイの少年たちに見習って、取り入れてみてはいかがでしょうか。改めて、少年とコーチ全員が無事に救出されたことを心より嬉しく思います。

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