もくじ
スパイス(香辛料)とは
調味料の一種で、植物の種子、果実、花蕾、葉茎、根塊、樹皮などから作られます。
調理の際に少量用いることで、香りや辛味、色を出し、臭みを消します。食事をおいしくするだけでなく、食欲を増進させ、消化を助けてくれます。
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スパイスには、生、乾燥(パウダー)、シード(種子)の形状があり、形状によって性質が変化するものもあります。
基本的にシードタイプのスパイスは料理のはじめに油とともに炒めて香りを抽出する役割を、パウダータイプは炒め物や煮物などの調理の過程で加える傾向があります。
スパイスの歴史
インドでは紀元前3千年(つまり約5千年前。アーユルヴェーダも約5千年の歴史はあるといわれる)頃から多くのスパイスが使われており、イスラム圏やヨーロッパでも、古くからアジアの香辛料を献上品としてやり取りするなど、貴金属のように重宝がられていました。
肉食で航海をさかんに行ったヨーロッパの国々とは異なり、日本においては、主に菜食であったことと、発酵食品文化が根付いていたため、スパイスへの需要は低かったようです。
古くから日本でも使われているものには生姜や山椒があり、中世には「薬味」という概念が発達しました。そして江戸時代には薬味の使用が活発になり、七味唐辛子などの日本独自の調味料が生まれましたが、それでも風味付け程度の使用にとどまりました。
アーユルヴェーダ料理におけるスパイスの役割
ここで、アーユルヴェーダ食事法のポイントの中でも、重要なものを振り返ってみます。
- 消化のことを考えた食事
- 体質に合った食事
- 食べ合わせに気を付ける
- 季節・気候に合ったものである
- 一食の中に6味が入っている。
参考記事
>アーユルヴェーダ食事法基礎・ドーシャについて
>アーユルヴェーダ食事法におけるポイントについて
>前編
>後編
ポイントの最後「一食の中に6味が入っている」ことを可能にするために、スパイスが使われます。
ではどうして、6味を取ることが必要なのでしょうか?
6味を入れる理由
アーユルヴェーダでは全ての物事の質を捉えます。6味にも次のような質やドーシャへの作用、効能があります。
※図のV、P、Kはそれぞれ3つのドーシャ・ヴァータ、ピッタ、カパを指します。
味 | 五大元素 | 性質 | V | P | K | 効能 |
甘味 | 地と水 | 冷・重・油 | ↓ | ↓ | ↑ | 体を養い元気にし、すべての組織を増やす。 |
酸味 | 地と火 | 温・重・油 | ↓ | ↑ | ↑ | リフレッシュ・痙攣を和らげ、食欲・消化を促進 |
塩味 | 水と火 | 重・温・油 | ↓ | ↑ | ↑ | 消化力と食欲を増やし、組織を柔らかくする |
辛味 | 火と風 | 温・軽・乾 | ↑ | ↑ | ↓ | 分泌を促す、脂肪を減らす、食欲増進 |
苦味 | 風と空 | 冷・軽・乾 | ↑ | ↓ | ↓ | 体を浄化するし調整する・肌荒れ・熱を抑える |
渋味 | 風と地 | 冷・軽・乾 | ↑ | ↓ | ↓ | 体を浄化し、催淫作用を減らす |
スパイスをバランスよく取ることで、温・冷を中和したり、消化力を増進したり、ガスを除いてくれるという、嬉しい効果があります。
しかし、一つの味に固執し、使いすぎると、味ごとに次のような症状が現れます。
甘味 | 肥満・糖尿病・消化不良・嘔吐・無気力・カパ性の乱れ |
酸味 | ほてり・かゆみ・めまい・老化の促進・体組織をゆるめる |
塩味 | 炎症・肌の疾患・性的不能・しわができやすくなる・はげる |
辛味 | めまい・ぼんやりする・渇き・衰弱・熱・脱水症状 |
苦味 | ヴァータの疾患・やつれる・めまい・頭痛・肩こり・ふるえ |
渋味 | ヴァータの疾患・便秘・体の乾燥・ひきつけ・脱水状態 |
味が体にもたらす影響をお分かりいただけましたでしょうか?
スパイスは数多く、中には使い慣れないものもあるでしょう。
しかし、それがどのような味か感じられれば、どんな体質の人に合っているのか、使うとどんな効果があるのか、おのずとわかってくるはずです。
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写真:スパイスを使ったアーユルヴェーダ料理・スイーツ例
(横浜アーユルヴェーダ料理教室『森の時計』)
アーユルヴェーダ料理によく使うスパイス
ではどんなスパイスがあるのか、代表的なものを見ていきましょう。
身体を温めるサットヴァスパイス・生姜
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辛味・V↓K↓
古くから日本でも用いられている薬味です。料理に積極的に取り入れたり、ジンジャーティーを、一日を通してこまめに飲んだりすると消化を助けてくれます。生のものとパウダーのものがあり、パウダーは熱を生む傾向があるので、ピッタの人は摂りすぎないよう注意。チューブの生姜は使わずに、生の生姜を使う場合は毎回作る(おろしたり刻んだりする)ようにしましょう。
肝臓に効く・ターメリック
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辛味・苦味・P↓K↓
日本ではうこんと呼ばれます。料理を鮮やかな黄色に染め、かすかな苦味、土の香りがあります。適量はどのドーシャにもよく、天然の抗生物質で、腸内細菌を強化します。抗菌、血液浄化、強壮、抗アレルギー作用のほか、肝臓の働きを助けます。
脂肪燃焼・チリパウダー
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辛・P↑
唐辛子の粉末。適量は体を温めますが、多量に摂取は汗が出て体を冷やすので注意が必要です。コレステロール低下、関節痛の軽減、胃潰瘍の予防などの効果があります。
食欲増進!ピッタ体質におすすめ・コリアンダー
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渋・苦・P↓
生の状態はパクチー(香菜)。その種を乾燥させたものがシード、粉末にしたものがパウダー。柑橘系のさわやかな香りがします。排出作用、食欲増進、消化促進、発熱、吐き気を抑えるなどの効果があります。
香り付けと消化促進・クミン
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辛・V↓P↑K↓
シード、パウダーがあります。クミンシードは油に香りをつけるため、油で炒めるのが一般的です。スパイシーな香りで、カレー料理には欠かせません。消化不良改善、鎮痛作用、吐き気や下痢の改善、またガスを一掃してくれます(膨満感の改善)。
消化促進と口臭予防に・フェンネル
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辛・V↓K↓
和名はういきょう。甘くてさわやかな香り。口臭予防効果があるので、食後の口直し用にレジ周りに置いているインド料理屋さんも見かけます。食欲増進、母乳分泌の促進、利尿、吐き気、消化力向上などに効果があります。
強壮作用と独特の芳香をもたらす・フェヌグリーク
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苦・V↓K↓
甘くて苦い、独特の芳香があります。焦げやすいので注意が必要です。消化力増強、強壮作用、便秘改善、発熱や咳などを抑え、母乳の分泌促進にも効果があるとされています。
血行改善★カパにおすすめ・マスタードシード
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辛・V↓K↓
練りマスタードの素。ブラック、ブラウン、イエローの三種類がありますが、手に入るものを使えば大丈夫です。油で炒めるとはねて飛んでくるので、鍋のふたなどでガードしましょう。「熱」と「油」の性質をもち、消化促進、血行を良くする他、ガスや毒素を消散させてくれます。
ガスを取り除くスパイス・ヒング
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辛・P↓K↓
インド独特のスパイスで、なかなかのにおいがしますが、加熱すると玉ねぎのような風味になり、旨味が加わります。食物が腸内で発生させるガスを取り除く効果があるので、豆や芋類を調理するときに少量を用いることを習慣にしましょう。整腸作用、抗生作用があります。
身体を温める・黒胡椒
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辛・V↓P↑K↓
おなじみのスパイス。香りがよくピリリとした辛味があります。カパにオススメのスパイスの一つです。体を温め、消化を助ける働きがあります。
香りの女王・カルダモン
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辛・V↓K↓
写真はホール(鞘)とパウダーです。全てのドーシャのバランスをとるサットヴァ(純粋性の高い)なスパイスで、良質で香り高い、スパイスの女王です。牛乳の粘膜形成の性質を軽減し、乳製品の消化を助けるといわれています。カフェインの解毒を助け、チャイ、お茶、紅茶、お菓子にも使われます。食欲増進、消化不良改善などが身体的な効果のほか、ストレス緩和・リラックスなど精神的にも効果があります。
スイーツや甘い野菜と一緒に・シナモン
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辛・甘・苦・V↓P↑K↓
皆さんもよくご存知のはず。血行を良くし、利尿作用、消化促進、鎮静作用、強壮効果、食欲増進、殺菌、防虫効果、解熱など様々な効果があります。
甘い芳香をもたらす・クローブ
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苦・辛
強く甘い香り、やや刺激のある風味があり、少量をお菓子などにも使います。消化促進、鬱血の軽減、防臭、防虫の効果などがあります。
いかがでしたか?
そもそも「スパイスとは」から、スパイスを取り入れる意味、様々なスパイスの持つ質や料理への使われ方を簡単にご説明しました。
最初は慣れないと思いますが、1、2種類、好きなスパイスから料理に取り入れてみましょう。
ただし、効果効能があるからといって、摂りすぎはよくありません。最初は加減が分からなくても、信頼できるレシピを参考に作っているうちに、感覚がつかめてくると思います。「適量」を守って使うようにしましょう。
ヴァータ・ピッタ・カパのどれ?「アーユルヴェーダ・ドーシャ診断」はこちら