もくじ
ぎっくり腰予防にヨガがおすすめな理由
ぎっくり腰は俗称であり、正式には「急性腰痛」と言います。急激に発症した腰痛を指し、欧米では『突然の激しい痛みで動けなくなる』ことから、「魔女の一撃」とも呼ばれています。
ぎっくり腰になる原因は、主にこの2つだと考えられています。
- 腰の筋肉や関節に急激な動きをしたことで、急激な負荷が掛かる
- 持続的に筋肉に負担が掛かる
つまり、腰椎周囲の筋力が弱く、適切な姿勢が保持できなかったり、腰椎周囲の筋肉に過度の負担がかかったりすることが、あの「グキッ」を引き起こしてしまうのです。
そこでヨガを取り入れることによって、柔軟性を高めたり、緊張を取り除いたり、筋力を維持したり、ということで、ぎっくり腰予防につながります。私自身も、真夏に冷房の効きすぎた新幹線に数時間乗車し、その直後にぎっくり腰になった経験があります。冷えと長時間の同一姿勢が、腰の負担になったと思われるため、それ以来、新幹線移動の前後は、ヨガの時間を普段よりもたっぷりと取るように心掛けています。
1)柔軟性を高めるポーズ
大腿四頭筋(太もも前側の筋肉)、ハムストリングス(太もも後ろ側の筋肉)の柔軟性を高めることがよいとされています。具体的には、三日月のポーズ(アンジャネーヤアサナ)が効果的です。
三日月のポーズ
- 足の裏全体に体重をかけるようにして立ち、両手を腰に添えます。この時、背筋はまっすぐに伸ばし、左右の腰骨の高さが水平になるようにしましょう。
- 左足を大きく一歩後ろに引きます。左足の膝が、骨盤よりも後ろに位置するように、また、背筋が曲がらないように、気をつけます。
- 右膝を曲げて、右足を挟むようにして両手を床に置きます。手のひらがべったりつかなくても、指先だけで大丈夫です。右膝の下に、右のかかとがくるように足幅を調整します。息を吸いながら上体を起こし、両手は腰に添えて息を吐きます。肩と骨盤が床に対してまっすぐ水平になっているかチェックしましょう。
- 息を吸いながら、両手を天井へ伸ばします。反対側も同様に行います。
また前屈や長座前屈も、気軽にできるのでおすすめです。
2)緊張を取り除くポーズ
ガス抜きのポーズ
- 仰向けになり、手を体の横に置いて、両膝を立てます。
- 息を吸いながら膝を胸に近づけ、両手で抱えます。息を吐きながら、太ももをお腹に押し付けていきます。
- この姿勢のまま、5回呼吸を繰り返します。
- 息を吐きながら、手足を開放し、仰向けに戻ります。
- これを繰り返します。片足ずつ行っても効果はあります。
また、臀部をほぐす、こちらの画像のポーズも効果あります。
- 足首を片方の膝の上に乗せて、バランスを取ります。
- 上体を腕で支えながら、胸を前へと突き出して、折り曲げた足に近づけます。
- 反対も同様に行いましょう。
3)筋力をつけるポーズ
バッタのポーズ
- うつ伏せになり、両腕を体側に沿わせ、手のひらを上向きにします。お尻を引き締めて尾骨を恥骨のほうへ引き入れるようにしましょう。
- 息を吸いながら、頭、胸、両腕、両脚を床から離して持ち上げます。肋骨の下、腹、骨盤は床につけたままです。両腕は床と平行になるように、上に上げます。
- 前を見るかやや上向きにして、あごを突き出して首の後ろ側を痛めないように気をつけましょう。
- この姿勢のまま、30秒〜1分、ゆっくりと呼吸します。息を吐きながら、ゆっくりと元の姿勢に戻します。
- これを1~2回繰り返します。
ぎっくり腰予防におすすめのポーズ3選
以上のように、柔軟性を高めたり、緊張を取り除いたり、筋力を維持したり、というポーズを取り入れることによって、ぎっくり腰予防につながります。それ以外にも、おすすめのポーズが次の3つになります。その日の体調や時間に合わせて、無理のない範囲で、取り入れてみてはいかがでしょうか。
チャイルドポーズ
- 両手は肩幅、足は腰幅に開き、四つん這いになります。ゆっくりと息を吐きながら、お尻をかかとの上に乗せます。
- 息を吐きながら、上体をゆっくりと前に倒し、手のひらを床につけたまま、両手を前方に伸ばします。
- 胸は膝に、頭は床につけます。おでこを床につけるとしんどい場合は、ひじを曲げて手の甲におでこを乗せると楽になります。
- つま先を伸ばして足の甲を床につけて、1分くらいゆっくりと呼吸を続けます。
- 息を吸いながら、ゆっくりと上体を起こします。
ワニのポーズ
- 仰向けになり、手の甲を空に向けて、両腕を肩の高さで横に伸ばします。かかとを突き出します。
- 吐く息で右足をあげ、左の方へ倒します。無理に倒さずに、マットから肩が離れないようにしましょう。
- 視線を右に向け、この姿勢をキープして、ゆっくりと呼吸します。
- 呼吸を3~5回したら、仰向けに戻ります。
- 反対側も同様に行います。
猫のポーズ
- てのひらと膝を床に付け、四つん這いの状態になります。手のひらは肩の真下、両膝は腰の真下に来るように調整します。肩が床に対して直角になるようにします。
- 息を吐きながら目線はおへそを覗き込み、背中を丸めて天井に引き上げます。
- 息を吸いながら、四つん這いのポーズに戻り、今度はおしりを突き出して、肩と耳を離し、目線は天井に向けます。これを5回繰り返します。
それでもぎっくり腰になってしまったら
安静にする必要がある時期には、焦らずにしっかりと体を休めましょう。ヨガをすることで、なんとなく違和感を感じる時も同様です。ただ、“そうは言っても自分ではよく分からない”ということもあるので、整形外科で先生に相談することをお勧めします。私の場合は、いつも体のメンテナンスをお願いしている接骨院の先生に診てもらって、「まだちょっとヨガには早いな」とか、「そろそろ動かしていってもいいんじゃない?これ以上、安静にしていると、治るのに時間が掛かるよ。」といったアドバイスをいただくようにしています。
ぎっくり腰になってから初めて行うヨガは、「またあの苦しみが再発してしまったらどうしよう」「最後までレッスンについていけるかな」という不安が生じます。ヨガ教室でレッスンを受ける際には、レッスン前に、「ぎっくり腰になったので、○日ぶりのヨガです」「主治医からはOKは出ているのですが、なんとなくまだ不安があって…」と事前に状態を伝えるようにしています。そうすることによって、レッスン中に先生から、「腰に不安のある方は、このポーズはお休みしていただいて大丈夫ですよ」というひとことを付け加えていただけたりします。またヨガをしている最中に、ほんの少しでも腰に違和感や痛みを感じた際に、ヨガマットの上でお休みしていても、先生には事前にお伝えしているので、目立ってしまったり、レッスンの流れが中断されてしまったり、という心配が軽減できます。体の声をしっかりと受け止めて、無理をせずに、とにかく堂々とお休みしましょう。せっかくのヨガタイムなので、リラックスして、ヨガを味わえる時間にしたいですよね。
最後に
ヨガをすれば、必ず腰痛やぎっくり腰とサヨナラできるというものでは決してありません。「ヨガを始めてから、腰痛になりました」という方のお話も、時々お聞きします。
個人差はありますが、最初の1週間くらいは、日常生活を送るのがつらいという方が大半で、たいていの方は2週間程度で自然に回復していきます。ただし、時間経過によって改善が見られない、または下半身に痛みやしびれ等の症状が出てきた、という場合には、椎間板ヘルニアなどの別の病気が隠れていることがありますので要注意です。内臓疾患や圧迫骨折などによる痛みをただのぎっくり腰だと思って放置したり、マッサージを受けて悪化してしまったり、ということもありますので、腰痛がずっと治まらないということであれば、自己判断せずに医師に診てもらうことをお勧めします。
今回、ご紹介したポーズの中には、わざわざ行かなくても、自宅で行えるポーズも含まれています。メイクして、電車に乗ってヨガ教室に行って、ウェアに着替えて…となると、「忙しくて、そんな時間は取れない」という方もいらっしゃるかと思いますが、自宅で取り組めるポーズだと、気軽に取り入れやすいですよね。少しずつ、生活の中に取り入れてみてもいいかもしれません。もちろん、ヨガ教室に行って、ぎっくり腰だけにフォーカスせずに、いろいろなポーズに取り組むということも、有効だといえます。自分に合ったヨガの取り入れ方を探していきましょう。それでも、どんなに予防したとしても、ぎっくり腰になる時はなります。もしなってしまっても、慌てずに、無理せずに、体の発する声に丁寧に耳を傾けながら、ヨガやぎっくり腰と上手にお付き合いしていけたら、とても素敵な関係なのではないでしょうか。