もくじ
ギーってなに?
ギーとは、バター(本来は動物性のミルク)からタンパク質と水分をぬいた精製オイルのことです。アーユルヴェーダでは『最も優れた油』として古くから利用されています。
アーユルヴェーダの三大古典書のひとつに『チャラカ・サンヒター』があります。主に内
科の知識について書かれているこの本に、ギーに関する記述があります。
「記憶力、知性、消化力、精力、オージャス(生命素)、カパ、脂肪を増大させ、ヴァータ、ピッタ、毒素、錯乱、疲労、不幸、発熱を除去して、全ての油脂類の中で最も優れたものである。ギーの味は甘味、薬力は冷性、消化後の味は無数である。ギーは無数の使い道があり、無数の効果をあげることができる」
(チャラカ・サンヒター第1巻第27章)
「無数の効果をあげることができる」……とりあえず、良さげな油ということみたいですね。では、どのように使うのか、どんな料理に使うか、ギーの効能などを見ていきましょう !
ギーはどのように使うの?
ギーを使ったことがない方は、どのように使ったらいいのか疑問ですよね。
ギーは以下のようなことに使えます。
- 料理
- オイルマッサージ
- 不調のある部分に塗る、飲む
体に塗るのはちょっと…という方でも、お料理には使ってみようかしら。と思う方はいらっしゃるでしょう。ギーは以下のように様々な料理に使えます。
どのような料理に使える?
- パンに塗る(バターやマーガリン代わり)
- 炒め物
- 煮物
- カレー
- あらゆるアーユルヴェーダ料理
揚げ物や天ぷらなど、油を大量に使う料理にはさすがに向いていないと思いますが……
私はよく野菜の副食としてにんじんの炒め物を作りますが、ギーを使うとにんじんグラッセのようになって甘味が増し、おいしいです。作り方は簡単です。にんじんを好きな形に切って(薄い方が火が通りやすい)、フライパンにギーを適量たらして温め、にんじんを炒め、塩をひとつまみ入れるだけです。5分でできます。
こちらの写真は私が作ったアーユルヴェーダランチです。
- バスマティライス
- ダールカレー
- オクラのテンペラード
- かぼちゃのグリル
ライス以外には、すべてギー(画像の右上の瓶に入っているオイル)を使っています。
もともとがバターなので、それに似た風味や香りがあります。ギーを使った方がいいのか、他の油の方がいいのかは、一度ギーで料理をしてしまえば、自然に選べるようになります。
ギーの効能
ギーにはたくさんの効能があります。すでに不調をきたしている場合はそれをやわらげ、病気を未然に防いだり、健康を増進したりしてくれます。
ギーの効果を列挙すると以下のようになります。
- 身体の灼熱感を取る
- 炎症を抑える
- アレルギー疾患を抑える
- うつ・認知症防止
- がんなど生活習慣病の予防
- 心臓病や動脈硬化などの心血管疾患の予防
- 腸内環境を整える
- 体脂肪を蓄積させないため肥満を防ぐ
たくさんありますね!うれしい油です。
ただし、どんな食材でもそうですが、過剰摂取は禁物です。「適量」を取りましょう。
では栄養学的な視点から、ギーのことをもう少し解説していきましょう。
みなさんは油(脂質)の重要性をご存知でしょうか。「油は太る」というイメージから、ダイエッターの中で油を避けようという方は多いかもしれません。しかし、良質な脂質を十分に摂ることは、発育を促し、体の機能を維持するために必要です。
脂肪には大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つがあります。不飽和脂肪酸は化学構造の違いから、「ω(オメガ)3」「ω6」「ω9」とさらに細かく分類されます。必須脂肪酸であるω3とω6は、体内で合成できないため、食事から補わなければならない油です。
ω3とω6
私たちの台所によくある油、そしてギーは以下のような分類になります。
- ω3…アマニ油、しそ油、青背の魚の油
- ω6…サラダ油、ごま油、コーン油、マヨネーズ
- ω9…キャノーラ油、オリーブオイル、
このうち体内で合成することのできないω3とω6の一日の摂取比率は、1:4だと言われています。
長所 | 短所 | |
ω3 |
・炎症を抑え血栓ができるのを防ぐ。 ・うつや認知症防止、がん予防、心臓病や動脈硬化などの心血管疾患の予防 |
過剰摂取は血糖値への影響、血圧低下などの原因となる可能性がある。 |
ω6 | コレステロール値を下げるヘルシーな油。 | 過剰摂取は体内の炎症を悪化させ、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患の原因となる可能性がある。 |
つまり、ω6は、ω6とは逆の作用があります。
そしてギーには、このω3とω6が、バランスよく含まれています。
短鎖脂肪酸
ギーには短鎖脂肪酸も含まれています。脂肪酸は、炭素が鎖のように連なった構造をしているのですが、短鎖脂肪酸はその名の通り、その炭素数が中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸と比べて少なく(つまり短く)、炭素の数が6個以下です。
短鎖脂肪酸はエネルギー源としてすぐ使われ、体脂肪として蓄積されにくいため、肥満を防ぐ効果があります。また、腸内細胞の悪玉菌の増殖を抑えたり、腸の炎症を抑えたりする作用もあり、腸内環境を整える助けになります。
ビタミン
ギーには抗酸化作用のあるビタミンA、Eが含まれています。
ビタミンAは発育の促進、肌の健康を維持する働き、暗いところでも目が慣れて見えるようになる機能に関わっています。
ビタミンEは、体内の細胞膜の酸化による老化や、LDLコレステロールの酸化による動脈硬化など、生活習慣病に関わる疾患を予防してくれます。
ギーを作ってみよう!
では、ようやくギーの作り方を紹介します。
ギーは冨沢商店やネットでも市販のものを購入可能ですが、作り方はそんなに難しくありませんし、手間でもないです。遠くに足を運んだり宅配が届くのを待つより、自分で作ってみませんか?
材料
- 無塩バター
ギーの材料は「無塩バター」のみですが、食材以外では以下のものが必要です。
- 鍋(ステンレスかホーローの鍋を推奨します)
- 清潔な瓶
- 「リードの」クッキングペーパー
さらに補足すると、鍋はギーの色が分かるよう、底が黒くないものが良いでしょう。クッキングペーパーは不織布である「リード」のものがいいです。他のものだとうまく油をろ過できません。私は一回リード以外のものを使って、大量のギーを無駄にしました。
作り方
所要時間は約20分です。
1.無塩バターを鍋に入れて、中火で溶かします。焦がさないように注意してください。
3.白い泡がおさまると、パチパチという音がしてきます。少しずつ透明な大きい泡が出てきたら弱火にします。弱火にしても強いと思ったら、持ち上げてみたり、ゆすったりして下さい。
4.透明な泡がだんだん大きな泡になります。
5.弱火で熱し続けます。そのうち再び細かい泡が出てきて、音もなくなってきます。泡を寄せてみると透き通った金色をしています。あまり熱しすぎると焦げて茶色くなるので注意します。
6.保存用の瓶にクッキングペーパーをのせ、濾して完成です。
ギーの保存方法
瓶に入れ、冷暗所で常温保管しましょう。ギーは22度くらいで液体になるため、夏場は凝固しませんが、冬になると固まります。濡れたスプーンを入れたり、食べ物が入ったりしないように気を付けましょう。品質が悪くなるため、二度づけも禁止です。
みなさんのギー料理
最後に、インスタグラムでみなさんが、どんなギー料理を作っているのか見てみましょう。
パンケーキに塗って
パンに塗って
お肉を焼くのに
野菜のソテーに
バター焼きに
いかがでしたか?
身体にたくさんのメリットがあるギー。お料理をおいしくしてくれるギー。
是非、ご自宅で使ってみて下さい♪